Isvind:[Dark Waters Stir]


1992年結成、Tsjuderのメンバーらによる、ノルウェープリミティブ/トゥルーブラックメタル、1996年1st
当時1000枚限定デジパックでリリースされた、日本ではわりとコアな指示を受けていた隠れた名盤的一枚ですが、なんでもアルバムリリース前に500枚製作されたプロモーション用CDがレーベルの倉庫から発掘されたということで、最近また出回っている様子。
僕のような後追いにとってはなかなか見つからない貴重盤の一つだったんで、これはありがたいですね。
その「Ice Wind」というバンド名が示す通り、荘厳な雰囲気をまとい氷点下の冷気を放つノーザーンコールドな素晴らしいノルウェイジャンブラックメタルとなっている


巧みにミドルテンポ〜ツタツタ疾走を絡めながら畳み掛けるようにブラストで突進するファストなドラムに乗せて、ジリジリと歪められたプリミティブなギターによる凍てついたブリザードトレモロ邪悪かつ攻撃的なオールドスクールリフが猛吹雪が如く吹き荒れ、ヴァイキングっぽい勇壮リフメロウさ極まる哀愁トレモロしっとりアコギなどが悲壮なる叙情を紡ぎ出し、その上でまるで吹雪の中リッチーが闇黒魔術の儀式をしているような邪悪なデスヴォイスが世界を呪う呪詛を吐き出す。味付け程度にEmperorっぽい神秘性を帯びたアトモスフェリックなKeyがうっすら導入されたりもする。
ノルウェーの美学に徹した、メロディアスかつブルータルな、まさに王道ノルウェイジャンブラックメタルGorgorothImmortalなどと並列されるであろうスタイル。
とにかく、暗黒感を孕みながら美しさも感じさせる、鋭利冷徹かつ荒涼としたメロディがまっこと素晴らしく、終始「これぞブラックメタル!」と言ってしまいたいメロディが掻き鳴らされている。時折ヴァイキングめいたメロディが顔を出すのも実にノルウェーらしいと言える。またUlver3rd#6を彷彿とさせる、フレンチプリミティブに通ずるような儚いメランコリーを感じさせるメロディも時折見られ、叙情味に満ちた楽曲が展開されており非常にツボ
さらに、緩急を絶妙につけメリハリに富んだ楽曲構成も素晴らしく、畳み掛けるような疾走爆走感が爽快。
ヴォーカルはNocturno CultDim(Tuman(Tymah))あたりに似た、イーヴィルなハスキー系濁声ガナリ。ギエエエエと悪魔じみた素敵ヴォイスが堪能できる。
音質は、分離・バランスともに良好だが、適度に籠り気味で粗さ汚さの残ったプリミティブ然りとしたもの。ブラックメタルとして理想的な部類。エコーするドラムがいかにもUGでいい感じ。


というわけで、旧き良きノルウェーブラックの魅力に溢れたまごうことなき名盤
オーソドックスではあるが、ブラックメタルの醍醐味を感じさせる極めて質の高い内容であり、ブラックメタラーであれば問答無用に反応せずにはいられないはず。
全く非の打ちどころがない素晴らしい出来栄え。
TaakeUrgehalTsjuderといった、現代のTrue Norwegian Black Metal勢に通ずる雛型と言えるだろう。
前述したようバンドたちが好きな人にはもちろんオススメだし、そうでなくともブラックメタラーを自負するなら是非とも聴いていただきたい必聴の一枚。
Great!!


・MySpace Fanpage:なお、ラスト#8は数分間の無音部ののち、NSっぽい隠しトラックが収録されている。