Nehëmah:[Light of a Dead Star]


フランス産、UGカルトプリミティブブラックメタル、2002年1st。8曲54分強。
この1stフルのリリースこそ2002年だが、結成は1992年と、ブラックメタル第一世代と呼ぶべき古参バンド。
かつては彼の黒金属中毒にも紹介され、日本国内外を問わず高い評価を受けているマニアックな(マニア的には常識レベルの)バンドだが、主要なリリース作品である1st〜3rdはどれも僕のような後追いのファンにはなかなか巡り会えない貴重盤でもありました。
そんな折、2009年Adipocere Recordsが3作まとめて再発してくれたので、待ってましたとまとめてゲットした次第。数年越しに探し続けてようやく入手できたので、うれしさもひとしおです。
さて、フレンチプリミティブというとMutiilationVlad TepesのようなLLNか、CelestiaMortiferaのようなお耽美系を想像してしまうが、このバンドは名盤3部作の頃のDarkthroneの哲学を色濃く受け継いだ90年代初頭系ノルウェイジャンプリミティブとなっている。


タツタ裏打ち2ビート疾走絡めながらドカドカと暴力的なブラストで突進するファストパート/ズルリズルリとのたうち引き摺るようなミドル〜スローパートを巧みに使い分ける無慈悲な剛腕ドラム、および不穏なラインをなぞりながら時折フレンチブラックらしく耳を惹くメロディを奏でるベースが、ヘヴィでドス黒いリズムを作り出し、ジリジリシャーシャーと歪んだプリミティブなギターが、暗黒スラッシーなオールドスクールリフ、寒々しく荒涼とした、それでいて適度にメロウでカルトな邪悪性に満ち満ちたトレモロを掻き鳴らし、その上でNocturno Cultの高音成分をカットしてさらにガラガラにしたような邪悪極悪極まりないガナリ声が怨念込めまくりで呪詛を紡ぐ。さらに時折、初期Emperorを思わせる凍てついた神秘的アトモスフェリックKeyがうっすら被さる。
絶妙に緩急を対比させた楽曲展開、破壊的なブルータリティ、オールドスクールな殺伐感とおどろおどろしく薄気味悪いオカルティズム・フランスらしい陰鬱な叙情性などを兼ね備えたやり過ぎない程度にメロディアスなリフセンス、リフレインを多用したストイックなリフ捌き、全てを呪い殺さんばかりに悪意満々の強烈なガナリヴォーカル、そして最初期ノルウェー勢特有のカルトな瘴気を見事に再現した厭世的な空気感など、まさに原初ブラックメタルの完成型とも言うべき最高にクールなブラックメタルがプレイされている
そしてなんといってもこのヤサグレまくったワレワレ濁声ガナリヴォーカル魔王Mehyna'ch閣下にも通ずる陰湿なネチっこさも感じられて、これがもう最高に邪悪でむちゃんこかっこいいのだ!!#6では3rd〜4thあたりの魔王Mehyna'ch閣下のようなねじくれた呻き声やIhsahnを思わせる高音喚き、朗々としたノーマルヴォイスなども駆使しており、あまりにも素晴らしいパフォーマスに魅了される。
神経を逆撫でるようにノイジーでありながら、重低音の利いたヘヴィな、まるで黒魔術の儀式を行う地下室で録音されたかの如き閉塞感を覚える音質も素晴らしい。
荒々しく手数足数の多いドラムはMayhem1stHellhammer師匠をモロ彷彿とさせる(おどろおどろしいタムロールなど特に)。


というわけで、名盤との評判も至極まっとうな、素晴らし過ぎる一枚
前述の通りブラックメタル創世記の音の再現度がかなり高く、言うなればDarkthroneMayhemBuruzum達の原典を良く分析し、各々からブラックメタルとしての極意を吸い上げ一本にまとめたような、原始的でありながらも洗練された音像ブラックメタル以上でも以下でもない、ブラックメタルの真理が詰まった、これぞブラックメタルと言うべき音楽性
突進力のあるファストパートもさることながら、ミドル〜スローパートにも説得力があるあたり、さすがベテランらしい格の高さというか、貫録がうかがえる。
お気に入りは爆走曲#6[I Will Sleep With The Dragon]。この曲はズバ抜けてリフがカッコイイ。前述したようにヴォーカルワークもピカイチ。これは名曲だ。ノルウェイジャンらしいトラディショナルなメランコリーに濡れたリフが延々リフレインされるミッドテンポの#5[Nehëmah In Vulva Infernum]もいいですね。
とっくに入手している人にとっては何を今さらでしょうが、これはブラックメタラーなら押さえておくべき作品だと思います。
僕のような後追いだったりで未聴の方は、再発直後の今が狙い目なので、また市場から姿を消してしまう前にとっとと入手してしまうことを強くオススメします。
Great!!


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