Chapterhouse:[Whirlpool]


UK産シューゲイザー、1991年1st
My Bloody Valentine[Loveless]Ride[Nowhere]と並んでシューゲイザームーヴメントの黎明期にして最盛期の傑作と名高い屈指の名盤。
[Free Fall]EPから3曲、[Sunburst]EPから2曲、[Pearl]EPから3曲と入手困難だった音源からの曲をボーナストラックとして追加して16曲72分の大ボリュームとなった2006年再発盤。帯と解説の付いた国内仕様。
20年近く前に出された作品であるが全く古臭さなどは感じさせず、シューゲイザーという音楽が一体何をしようとして、何を表現しようとしているのかといった部分が凝縮されているといっても過言ではない、シューゲイザーとしてスタンダードでありながらその魅力の多くを内包している、密度と質の高い素晴らしい内容


白昼夢的昂揚感と浮遊感を漂わせる甘美な音響系/サイケギター脳みそにガリガリとヤスリをかけられているようなファズオーバードーズドな轟音ギター&ノイズシャワーアコギやクリーンギターによる美しく優しげな旋律キラキラと音の粒子が煌めく清澄感あふれるエレクトロサウンド幾重にも重ねられた淡く繊細なヴォーカルなどが奥行きを感じさせるように折り重なり合い産み出される、幻想と狂気と安らぎ渦巻く無上のサイケデリアが聴く者を甘く心地よい陶酔へと導くポストロック/シューゲイザー
My Bloody Valentine空間を埋め尽くし聴く者を圧倒する轟音と心地よい残響音に身を委ねる陶酔的な快楽Ride蒼い衝動に突き動かされた開放的爽快感Slowdiveトロットロに蕩けた耽美な恍惚感Pale Saints心にぽっかり穴があいたような虚無感といった、名だたるシューゲイザーバンドのいいとこどりをしたようなこの上なく素晴らしいサウンド。そういったシューゲイザーとして求められる数々の素養を高い次元で実現することに成功している。
特徴的なのはクラブ/ハウスミュージックなどで使用されるようなダンスビートを導入している点。基本のロック/オルタナ的ダイナミズムのあるリズムに加え、テクノ的な昂揚感が得られる。


どの曲も個性があって実に素晴らしく、一切捨て曲がないのもこのアルバムが名盤と称される所以。
#1[Breather]は冒頭から容赦なく爽快な疾走感と印象的な歌メロ、自由を謳歌するようにそのエネルギー爆発させるギター、デイドリーミーなフレーズでガツンとかましてくれる名曲。
#2[Pearl]My Bloody Valentineの名曲[Soon]と並んでシューゲイザーを代表する名曲として名高い一曲。前述したようにダンスビートが用いられており、繊細かつノスタルジックなギターと淡いヴォーカルと躍動感のあるリズムが徹底的に聞く者をChapterhouseの音空間へと引きずり込む。またヴォーカルにはゲストでSlowdiveRachel Goswellが参加しており、透き通るような美声が堪能できる。
#3[Autosleeper]アンビエントなKeyも交え虚無感を漂わせたゆったりパートと濁流の如き爆音で暴れ倒すパートとの、静と動の対比が見事。
#4[Treasure]ではSlowdiveMy Bloody Valentineが一遍にやってきたような、いかにもシューゲイザーらしい轟音と幻想に浸れる。
#5[Falling Down]はどこかノスタルジックなメロディと包み込むように優しく淡いヴォーカルがダンスビートにのっかる非常に爽快なダンスナンバー。
#6[April]は不安感と焦燥感を煽るパートから一転して突入する、春の訪れを感じさせるような温かく陽光眩しい、それこそAlcestのような癒し溢れるサビがたまらない。
#7[Guilt]は得体の知れない虚無感と脅迫観念から必死に逃げまどうかのようなスリリングな疾走ナンバー。少しばかり陰鬱であるがどこか背徳的で切ない昂揚感が感じられる。
#8[If You Want Me]The Beatlesのような古き良きロック的なわかりやすい曲。なによりそこに被さるフィードバックノイズのシャワーが気持ちいいことこの上ない。
#9[Something More]は夢の中を彷徨っているかのような不思議な虚無感の漂う、エレクトロニカをふんだんに用いた幻想的な曲。
続くボーナストラックも本編に負けず劣らず良曲揃い。


というわけで、素晴らしい完成度を誇るシューゲイザーの代名詞的名盤
背骨を痺れさせる最高にカッコ気持ちいい轟音と感情豊かなメロディの応酬にもうメロメロにされてしまった次第。周りへの迷惑にならないようヘッドホンにてライヴ行った時のような耳鳴りが残るほどの爆音で聴いては、頭の中いっぱいに響き渡る甘美なサウンドに酔いしれている。
とても聴きやすく、ある意味My Bloody Valentine[Loveless]以上にシューゲイザー入門に最適(あの作品はシューゲイザーであると同時にMVB以外の何物でもないという圧倒的な存在感が強すぎる)。
Alcestの影響や、昨今のネオ・シューゲイザーブームでシューゲイザーに興味がわいた人には超絶おススメ、マストバイと言うべき一枚。
Great!!!


・Myspace