Lonesummer:There Are Few Tomorrows for Feeding Our Worries


アメリカ産、ハーシュノイズ/ポストロック/シューゲイザーブラックメタル、2011年1st。13曲35分。
Music Ruins Livesより手書きナンバリング入り65枚限定でリリース。


【耳を劈き脳髄を切り刻むハーシュ極まりないノイズ音質で奏でられるは、淡く切なく甘酸っぱい涙腺撃破の悶絶ノスタルジー!耳をふさぎたくなるノイズと心をとらえて離さない癒しに満ちた轟音ノスタルジーここにありと高らかに絶叫する、ノイズ上等シューゲイザーブラックメタル!】


ガビガビとノイズまみれ、かつデストラクティブな金物が喧しいドラム/タイトで抜けの良い引き締まったドラムが、時折疾走/ブラストを絡めながらもミドル〜アップテンポ中心に軽妙なノリでロックナリズムを叩き、ジャリジャリギャリギャリと歪みガビガビゴギャゴギャとヒビ割れた耳が痛くなるほど強烈なハーシュ極まりないノイズギターが、明るく爽やかで甘酸っぱくも儚く切ないシューゲ・ブラック的ノスタルジーに満ちた琴線破壊・涙腺刺激の青春ジャンジャカリフ/トレモロ、そこにブラックメタル的陰鬱さを滲ませたリフ、ポストパンク的根暗ながらも切なさを孕んだリフ等を掻き鳴らし、夢見るように残響を棚引かせる甘く繊細なクリーントーン/轟音サイケギターが美しく幻想的なポストロック的アルペジオ/リフ、虚無感漂うサイケなメロディをフワフワユラユラと浮遊しながら柔らかく奏でる。
ヴォーカルの出番は少なくインストゥルメンタル色が強いが、いざヴォーカルパートでは頼りなさげにボソボソとつぶやくようなウィスパー、ナヨナヨしたシューゲイザー系の淡いヴォーカル、キョエエエエギエエエエと白目ひん剥きのた打ちまわりながら断末魔の金切り声を絞り出すような強烈なキチガイ絶叫などを使い分けて感傷的な世界観を盛り上げている。


Alcestに始まりAirsAvesへと続く脱ブラックメタル路線のディプレ発シューゲイザーブラックメタルと同系統に括れるであろう甘酸っぱさと儚くも切ない癒し、淡い幻想感に満ちたサウンド
彼ら同様、ひたすら爽やかで甘酸っぱく儚く切ない、胸が詰まって苦しくなるほどのノスタルジーを撒き散らしまくっている。
しかし彼らよりはブラックメタルの生々しい攻撃性や陰鬱さを色濃く残しており、ガツガツとしたブラストやMutiilation2ndを思わせる気が触れたような凄まじい金切り絶叫も用いられている。
そしてそれらの儚げメロディを奏でるのは、まさに耳を劈くといった形容がしっくりくる破壊的なノイズ音塊と化しハーシュの極みにあるようなロウファイ・ギターであり、これはもはやシューゲイザーブラックメタルを越えてノイズの域に達している。
この、端的に言って「うるさく喧しいギターが儚く切ないドリーミーなメロディを掻き鳴らす」感覚はまさにシューゲイザーブラックメタルの醍醐味であり、その意味においてこのLonesummerはまさに理想をこじらせたシューゲ・ブラックとも言うべき類稀なサウンドを実現しているように感じられる。
粒の粗いハーシュな歪みをハッキリクッキリと鮮明に描き出して攻撃的なノイズ空間を構築しつつ、#1[I Hope You Miss Me Now, Because I Want You to Know How Much that Hurts]#3[Tobacco, Gin and Bile]#10[Dream Me Free]などで顕著なように、随所でそれこそSigur Rosを思わせる優しく可憐で繊細な音使いを存分に駆使する細やかなアレンジセンス、音造りの巧みさには舌を巻くばかりだ。
そして脱ブラックメタル路線と言いながらも、#4[Ghost Stories]#6[The Sweetest of the Sweet Dream]#11[Clouded Eyes and Candlelights]などのトレモロにはポストパンク/シューゲイザー的感性と共に、ブラックメタル的陰鬱かつ寒々しくメロウなエッセンスが感じられ、やはり単なるシューゲイザーとカテゴライズするわけにはいかない、まごうことなき「シューゲ・ブラック」としてのアイデンティティが咲き誇っている。


というわけで、シューゲイザー・ブラックの真髄を体現しつつある名作。
別に某レコード店を揶揄しているわけではないが、Alcestに通ずる」「儚く切ない」「シューゲイザーブラックメタルという謳い文句が飛び交ってはいるものの、昨今本当に面白いバンドはごく限られたものであることは、悲しいかな周知の事実であり疑いようもないであろう。
その点このLonesummerは、それこそAlcestから受け継がれるシューゲ・ブラックの真髄を踏襲しつつ、儚さ切なさとともに沈み込むような陰鬱さも滲ませて、その独自解釈を提示してくれており、実に刺激的な印象を与えてくれる。
どうでも良いが、ある程度うるさかったり劣悪だったりする音質には慣れっこだと自負している自分にとって、イヤホンで聴いているうちにどんどん再生ボリュームを下げたくなる音源は心底久しぶりだった(笑)
比較対象は多くのシューゲブラック勢の中でもよりブラック離れしたAirsAvesあたりであろうか。
それこそMy Bloody ValentineRidePale SaintsChapterhouseといった、心地よい轟音ノイズというものをより強烈に体感するにはうってつけの一枚。
65枚限定と数はすこぶるシビアな条件ながら、レーベルにはラストストックがまだ残っているし、Bandcampでデジタルアルバムを無料ダウンロードすることもできるので、興味をもたれた方は是非突撃されたし。


【お気に入り】
#11[Clouded Eyes and Candlelights]:アルバム中でブラックメタル度高めな楽曲。まさに涙腺刺激。
【レーベルサイト】
http://musicruinslives.org/
MySpace
http://www.myspace.com/lonesummer
【Bandcamp】
http://lonesummer.bandcamp.com/album/there-are-few-tomorrows-for-feeding-our-worries:デジタルアルバムが無料DL可。


以下も素晴らしいので是非。
#2[Worries and Weariness]

#6[The Sweetest of the Sweet Dreams]

#4[Ghost Stories]