Lush:[Split]


UK産、オリジナルシューゲイザー、1994年名盤2nd。12曲52分強。
名家4ADからのリリース。


【キャッチコピー】
うつむき加減に夢見る少女の内向的叙情を時に儚く時に激しく、そして徹底して耽美に綴った美しすぎるシューゲイザー
【一言】
軽やかに跳ねるドラムとグルーヴィなベースによるビートの上で、幻想的に残響を響かせる甘美かつゴッテリしたギターによる重厚な音の壁が耽美で麻薬的な恍惚感を醸し出し、そこを突き破り耳を劈くようにギャリギャリ激しく掻き鳴らされる轟音ギターが圧倒的なカタルシスをもたらす中、その上を美しく上品に絡み合いながら天にも昇るように飛翔する女性二人のファルセットがシルクを折り重ねたような天界のハーモニーを歌い上げる。
【二言】
まず耳を惹くのが夢見るメロディの残響に満ちた空間の中をキラキラと舞う美しすぎるツインヴォーカル。繊細に透き通った声音で歌いあげられる柔らかな光に包まれた極上ハーモニーはしかし、少し舵を切ると途端に酷く儚げで憂いと切なさを孕んだやるせない情感にシフトする。
【三言】
そうしたヴォーカルワークにも如実に表れているように、叙情的で女性的繊細さに満ちた楽曲群は一貫してヒンヤリと冷たい質感で、地に足のつかないふわふわと波打つ幻想的メロディが何となくそら寒々しく感じられるような場面もある。いわゆる懐メロ的ノスタルジー・センチメンタリズムをもった耽美なメロディはどこか心にポッカリ穴が開いたように寂しげで、いかにも90年代シューゲイザーらしい閉塞感・虚無感が滲んでいる。
【蛇足】
My Bloody ValentineSlowdiveRideChapterhouseらと並んで90年代シューゲイザーを代表するバンド。
日本人とハンガリー人のハーフであるMiki BerenyiEmma Andersonというツイン女性ギターヴォーカルを擁する4人組。
ベーシストとドラマーが冴えない兄ちゃんなのが、華やかな二人の美女と対称的でいい感じ。
さておき、#1[Light from a Dead Star]という「え?Nehemah?」と一瞬目を疑う曲で幕を開ける本作。
とにかくギターの鳴りを大事に響かせる美しすぎる(3度目)サウンドは全編にわたって耽美で繊細な叙情に満ちているが、Slowdiveのように毒々しいほど甘過ぎるメロディにゆらゆらと耽溺するような雰囲気ではなく、ロックのもつ衝動的なエネルギーが感じられる。
#3[Blackout]#4[Hypocrite]を筆頭に噴出するギターノイズと可憐なヴォーカルを伴ってアップテンポで軽快に疾駆するシーンはとてつもない昂揚感で、めちゃくちゃ痛烈に胸がかき乱され興奮せずにはいられない。
特筆すべきは前述したヴォーカルワーク。
このバンドはCocteau Twinsフォロワーとして語られることが多いようだが、それはこのヴォーカルスタイルによるところも大きいだろう。
#6[Desire Lines]などではCurveToniのような妖艶ヴォイスも用いており、一本調子ではなく豊かな表現力で楽曲に彩りを添えている。
そしてやはりシューゲイザーの例に漏れず、ギターの生命力を活かした完璧なサウンドメイクが素晴らしく、音の波に心地よく浸ることができる。
シューゲイザーらしい半面割とロックな骨格を持っているので、ディプレ→シューゲみたいなアトモスフィアを好むよりはメタラー気質の人間にとって入門向きの一枚なんじゃないかな。
未聴の方で本格シューゲイザーに興味のある方はぜひ聞いてみていただきたい。
なお、このアルバムの2年後にリリースされた3rdアルバムはもっとシンプルでストレートなギターポップへと変貌している(それはそれで素敵なのだが)ので、本格シューゲを聴きたいならこの2nd1st(未聴)を入手すべき。
【お気に入り】
#2[Kiss Chase]:胸キュン。
#4[Hypocrite]:こういうロックなシューゲイザー大好き。3rd寄りの曲。
【傾向と対策】
SlowdiveCocteau TwinsPale Saintsなど
【オフィシャルサイト】
http://lightfromadeadstar.org/index.htm
MySpace
http://www.myspace.com/lush4ad

ライブ。ギター姉ちゃん。かっこいい。