Adorn:[Grace]


少し前からtwitterで話題騒然となっている、自らを1491年結成Romantic Music for Dreamersと称する、UK産クラシカル・ブラックゲイズ
2012〜2013年に収録されたデモ音源をまとめた2013年EP。4曲24分強。
Sleeping PeoniesPetrychorClouds Collide等の良質シューゲイザー/ポスト・ブラックを抱えるKhrystsanthoneyからリリース。
される予定だったが、不幸にもそのKxが潰れてしまった(詳細は最後)ために先日bandcampに無料公開された。


これぞAlcestが拓いたシューゲイザーブラックメタルの究極形!!
中世的ロマンを感じさせる美麗絵画ジャケが示す通りの、幻想的かつひたすら甘美で耽美でドリーミーなシューゲイザー/ポスト・ブラックメタル
エレクトロ・シューゲ的轟音シンセサイザーによる癒しと多幸感に満ちた残響が空間一杯に広がる中、琴線刺激涙腺崩壊のノイジートレモロや温かく柔らかなベースに加えて、ヴァイオリンやピアノによる、まるで聴いていると成仏してしまいそうなほどに美しく癒しと慈愛に満ちた天上のメロディが歓喜とともに飛翔する。
いや〜、これはヤヴァイ!
上品、ドリーミー、ロマンティック。
光彩溢れる浮世離れした夢幻世界に目も眩まんばかりだ。
上述のSxPxを髣髴とさせる、轟音シンセによるシューゲイザーをこじらせたような空間演出はまさにKxらしい音像と言えるが、いやはやしかしこの光の粒子が幾重にも折り重なりながら虹のベールとなって降り注ぐかの如き空気感には思わず溜息が漏れてしまう。
そしてなによりギター、ベース、ヴァイオリン、ピアノの紡ぐノスタルジックなメロディの殺傷力たるや非人道的殺傷兵器クラスであり、ガリガリと胸が掻き毟られ息も苦しくなってしまう。
ここまで読むと「全然ブラックメタルじゃないじゃないか!」と思ってしまいそうだが、どっこい、ゆったり長閑に紡がれるメロディとは裏腹にドラムパートがドカドカバコバコとブラックメタル然りとしたブルータリティを発揮しているのだから堪らない!!
そう、この感覚はまさにAlcest伝説的EPLe Secretとおんなじだ!
そして何を隠そうこのAdorn、ヴォーカルレスのインストバンドなのだが、各楽器のメロディがあまりにも雄弁すぎて全然ヴォーカルの不在を感じさせないのだ。
上述したドラムといい、トレモロに滲む胸を刺す切れ味といい、ポスト・ブラックに対してよく言われる「ヴォーカル以外全然ブラックメタルじゃないじゃん!」といった指摘を一切受け付けない、ポストロックでもシューゲイザーでもないポスト・ブラックメタルとしての音を確立していることは白眉だ
無名新人のデビューEPにしてこれほどの完成度・構築美を誇っているのは、感嘆を通り越えて驚愕に値すると言って過言ではないだろう。


というわけで、これはおそらく多くのポスト・ブラックバンドが「ヤラレタ!」と頭を抱え、下手したら始祖Neige御大すら嫉妬を覚えかねないほどの一大事件ですよ!
特に#2[Weightless]は虚飾なくシューゲ・ブラック始まって以来の神曲だと思います。
にもかかわらず、あろうことかbandcampではName Your PriceですらないFree Download!!
これ本当に無料で聴けていいのか?
むしろサポートしたいから金払わせてくれよ!と叫びたくもなろうというものだ。
頼む!どこかフィジカル・リリースしてくれ!
これだけ素晴らしいバンドがレーベル倒産によって野に放たれたのだから、もしかしたら今は水面下で血みどろの争奪戦が繰り広げられているのかもなぁ、と思ったり。
(2014.05.22追記)現在はBandcampに公開されているのみでDLは不可となっている。
どこかレーベルと契約したのかな?
今作はEPということでメタル曲は実質3曲だが、このクオリティでフルアルバム作っちゃったらいよいよAlcest1stショック再び!って感じになりそうだと個人的に期待している。
シューゲイザー/ポスト・ブラックメタル系好きな人でこれを聴かないのはあまりにも損ですよ!
2014年のマスターピース、是非ご賞味あれ!


【お気に入り】
#2[Weightless]:4分過ぎから歓喜が噴出するようなとんでもない盛り上がりを見せて小生涙が止まらんでござるよ!
Facebook
https://www.facebook.com/adornmusic?fref=nf
【Bandcamp】
http://adornmusic.bandcamp.com/


余談。
Khrystsanthoneyのフューチャーリリースは楽しみな作品ばかりだった。
Sleeping PeoniesClouds Collideのスプリット。
Nameless Coyote
Onryo
Petrychorのリリースも決まっていたらしい。
彼らの作品がまた違った形で日の目を見ることを切に願っていやまない。やまない!
ともかく、Khrystsantohoneyさん、今まで素晴らしい作品をありがとうございました。


(2014.05.20追記)
先日KhrystsanthoneyのオーナーWilhelm奥方様からfacebookへの書き込みがあり、なんとKx閉店の理由はWilhelmが亡くなったためであるとのこと。
なんてこった。。。
個性的で質の高いバンドを発掘・リリースしていたレーベルであるだけに、非常に残念です。
ご冥福をお祈りいたします。