Astral Rebirth:The Axis Of The Utter Black Ocean


メキシコ産アンビエントブラックメタル、2011年デモ。5曲35分。
Maltkrossよりテープが150本、同じく150本テープがSingularity Publishingよりボーナストラックを一曲(#5[V - Untitled (Emanation of Silver Threads)])追加してリリースされた(両方足して150本でなく足して300本?)。
自分はSx Pxより入手した。


DarkspaceWolves in the Throne Room)×Xasthurな、コズミックスケールの神秘的轟音アトモスフェリック・ブラックメタル!】
タイトなドラムが緩急をつけながらスコスコドコドコと無機質な高速2ビートで淡々と疾走し、暗黒空間でうねるような圧迫感のあるゴォゴォ轟音ギターが、深遠かつ神秘的で差し迫るような不穏な響きを持った暗黒トレモロ、ほんのりとシューゲイザー・ブラック的儚さを滲ませた叙情的トレモロブラックメタル然りとした攻撃的なリフ等を掻き鳴らし、空間を埋め尽くすギターによる重苦しい轟音を包み込むように浮遊するキーボードがスペーシーかつミステリアスなアンビエンスを演出し、それら重厚な音塊に埋もれながらもくぐもった絶叫ヴォーカルがグオオオオギエエエエと凄惨にのたうちまわる。


終始轟音が空間を埋め尽くし、時にアンビエントパートなども挿入する雰囲気重視のアトモスフェリック・ブラックでありながら、意外とハッキリしたメロディ・リフ構成や起伏のある楽曲展開、轟音に埋もれることなくしっかりリズムを刻むドラム等のおかげでかなり聴きやすく、ある意味キャッチーですらある。
圧殺的な轟音ギターとスペーシーに響きわたるキーボードによる底知れぬ暗黒空間の形成はDarkspaceを彷彿とさせるが、触れがたき厳粛さや厳かな神秘を纏った心に突き刺さるメロウさなどはWolves in the Throne Roomにも通じている。
またアルバム全編通して何かに追い詰められるような切迫感や精神が不安で押し潰されるような不穏さに満ちており、この辺りの感覚はXasthurを筆頭とした陰鬱ディプレ勢的であるとも言えるだろう(特にキーボードの雰囲気が近い)。
人間味の感じられない、まるで人智を超越した高次元存在が時空の狭間で咆哮しているような絶叫ヴォーカルも、人間の根源に訴えかけるような恐ろしさがあってこの作風にはすこぶるマッチしている。


というわけで、非常に濃密な荘厳さと超越的神秘性、そしてそれらを覆い尽くす名伏しがたき不穏さが大変に素晴らしい良作。
最近は特にアトモスフェリック系にハマっていることもあり、ガッツリハートをつかまれてしまった次第。
この、胸が苦しくなるようなお先真っ暗の閉塞感に不安いっぱいで溺れつつ、不意に切り込んでくるメロウなフレーズでぐわーーーーっと解放されるような感覚がたまらんのよ!(#3[Astral Rebirth]とかね)
#1[Black Visual Void]#4[Seabreath]、追加曲の#5アンビエントなインスト(#5はデス囁き入り)でブラックメタル曲は実質#2[Distortion Mental Process]#3の二曲と言うことでとなっており、もう少しブラックメタル曲が聴きたかったかな。
とはいえ、前述したようにDarkspaceWITTR等のバンドが好みであれば楽しめるだろう。
#3は、自然的雰囲気やポストロック/シューゲイザー的要素はないものの、最近のカスカディアン・ブラックメタルが好きな人にもウケるのではないだろうか。
少数アナログ音源と言うことで手を出しづらいかと思うが、BandcampでフリーDLできるので興味をもたれた方は是非聴いてみていただきたい。


【お気に入り】
#3[Astral Rebirth]:これは名曲!バンド名を冠しているだけある!
【オフィシャルサイト】
http://www.astralrebirth.com/
MySpace
http://www.myspace.com/astralrebirth
【Bandcamp】
http://astralrebirth.bandcamp.com/:フリーダウンロード可。