Kólga:Demo


アメリカはケンタッキー州産、カスカディアン・ブラックメタル、2012年デモCD-R。3曲30分弱。
個人的に今現在最も熱いバンドPanopticonA. Lunn (aka Austin Lunn)大将と、彼が参加しているカスカディアン・ドゥームSeidrのヴォーカルJ. Hannert氏によるバンド。
Austin大将の自主レーベルLundr Recordsより50枚限定でリリースされた。
近々Flenser Recordsからもリリースされるようだ。


【さすがAustin大将Panopticonの美しく幻想的なフィーリングを研ぎ澄まし強化精錬したポストロック/シューゲイザー路線のカスカディアン・ブラックメタル!】


Austin大将独特のバタバタドコドコ手数足数の多い躍動感溢れるドラムが崩落タムロール等のオカズも交えつつダイナミックに展開し、ザラザラした質感の歪ギター/粒の大きな粒子がガス状に拡散するような空間的ギター/幻想的雰囲気を纏いながら柔らかに浮遊するシンセサイザーっぽいギターが、美しく儚げ・切なげな心臓破りのトレモロ、ポストロック/シューゲイザートレモロ、カスカディア系の神秘的・幻想的・自然的リフ/トレモロ等を2〜3本で絡み合いながら掻き鳴らし、ギャァギャアとひっくり返った高音交じりの赤子の泣き声系ヴォーカルが悲愴感を撒き散らしながらヒステリックにガナる。
儚げに歌い上げるノーマルヴォーカルや、川の水音、鳥の鳴き声など自然的SEも随所で挿入される。


PanopticonAustin大将が主催しているということで、Panopticonを大々的に踏襲したサウンド
Panopticonのフルレンス作と比べるとポストロック/シューゲイザー的側面にかなりフォーカスしており、Panopticonの作品の中ではSkagosWheels Within WheelsWhen Bitter Spring Sleepsらとのスプリット作、あるいはそれらをまとめたコンピレーションアルバム[...On The Subject Of Mortality]に近い作風となっている。
Panopticonではブラックメタル染みた攻撃的リフやハードコアっぽいリフ等が聴かれたが、このKolgaは全編ポストロック/シューゲイザー的ギターに包み込まれており、とにもかくにも美しく幻想的。
Austin大将のセンス・個性がハッキリと感じ取れるメロディが冴えに冴えており、どうしようもないほどメランコリックで琴線が刺激されまくることこの上ない。
またAustin大将ならではのクセのあるドラミングも、荒々しく躍動感があって熱くなれる。


というわけで、群雄割拠のカスカディア一派の中でも独特の地位を築き上げているAustin大将、さすがと言う他ない。
単純なブラックメタラーとは一線を画すのだろうバックグラウンドや作曲センスがいかんなく発揮されており実に素晴らしい。
前述のようにPanopticonをさらにポストロック/シューゲイザー路線へと絞り込んだ作風であるため、Panopticonの様なゴチャ混ぜ感は無いものの、Panopticonが好みであればきっと気に入るであろう。
またシューゲイザー・ブラックとして聴いても高レベルに位置していることは間違いなく、画一的になりがちなシューゲ・ブラックとは一味も二味も三味も異なる独特路線はその筋のファンにもかなり刺激に富んだ作品と受け取られるのではないだろうか。
なんせ自分はPanopticon大好きなので贔屓目に見てしまっている面は大いにあるかと思うが、それにしてもこの作品クオリティや個性は割目に値することは間違いない。
50枚限定と数は少ないがBandcampから音源をフリーでダウンロードできるので、カスカディアン・ブラック好きなら問答無用、そうでなくとも新世代系が好きであれば是非是非聴いてみていただきたい第一級オススメの一枚。


【お気に入り】
#3[Sky Wheel]
【Bandcamp】
http://www.theflenser.bandcamp.com/album/demo