Mare Cognitum:[An Extraconscious Lucidity]


USカリフォルニア産、ポスト・メロディック/アトモスフェリック・ブラックメタル、2012年2nd。6曲49分半。
中の人Jacob Buczarskiが立ち上げた自主レーベルLunar Meadow Recordsより150枚限定でリリースされた。
手書きナンバリング入り。
Bandcampでも無料公開されている。


美しく繊細なポストロック的音使いや緩急静轟織り交ぜたダイナミズムを方法論として咀嚼しつつ、北欧ブラックメタルのルーツにしっかりと軸足を置いた新世代系コズミック・ブラックメタル
悪魔崇拝アンチクライストに取り憑かれたブラックメタル像から脱却しながらも、その悲壮感を伴う叙情性や深淵なる神秘性を美しき情景描写へと昇華させるそのスタイルは、先日紹介した前作1stよりもさらに進化。
前作に比べあからさまにポストロックなサウンドは鳴りを潜めたが、同時にこの手のバンドとしては印象的だったベッタベタなブラックメタル曲も無くなった。
前作である程度切り分けられていたそれら新旧の両極端な要素が今作では見事に融和・融合を果たしており、シューゲイズ風味のトレモロを伴ったアトモスフェリックなスタイルをベースに旧き良きブラックメタルなリフ捌きやアグレッションが随所でフックとして効いている。
このことが楽曲にメリハリを与えており、決して風変りでなく気を衒ってはいないが個性的という理想的なオリジナリティを実現するに至っている。
またスペーシーなアンビエント風のアプローチが前作以上に導入されていることで宇宙感も増した。
宇宙をコンセプトに据えたアトモスフェリック・ブラックメタルというとDarkspaceが真っ先に思いつくが、あちらが冷たく無慈悲な暗黒空間の中でブラックホールに擂り潰されるような圧殺的音像に徹しているのに対し、こちらはそういったある種無機質な要素をブラックメタルの辛口な部分としてスパイス程度に備えながら、星々が瞬き煌めく銀河の壮大な美しさや言葉では言い表せない畏怖の念をメランコリックにエモーショナルに描出している点が、まさに新世代な感じで実に素晴らしい。
特にスピード感あふれる切れ味鋭い叙情メロと目まぐるしい展開が炸裂する#2[Pyre of Ascendance]や、ポストロックの芳香を漂わせつつ神秘的なアンビエンスと号泣エモ・メロがメロメロにメロメロするメロメロ・アグレッシブ・ブラックメトゥな#6[Pulses in Extraconscious Lucidity]などは素晴らしいにも程がある!


というわけで前作に引き続き、いやそれ以上に素晴らしき現代ブラックメタルの傑作!
これだけ素晴らしいのにリリース後2年でようやくその存在を知ったという自分の体たらくを呪わずにはいられない。
前作もオーセンティックかつ新世代的という二律背反を成し遂げた素晴らしい作品だったが、今作にてこのMare CognitumMare Cognitumたる所以、すなわち新旧入り混じる温故知新サウンドは完成されたように思う。
癒しだったり柔らかさだったり、一発アイデアの如くただ新しいサウンドを取り入れただけのなんちゃってポスト・ブラックメタルとは一線を画するブラックメタルとしての確かな感触」がそこにはある。
激情系というわけではないが、ブラックメタルの軸を崩すことなく新世代系の手法を取り込んでいるというこの感覚はWoeWildernesskingWinterusなんか好きな層にもウケそうな気がする。
誰もがブラックメタルと認めるポスト・ブラックとしての完成度は随一なように感じるので、昨今世を賑わす通称ポスト・ブラックの甘っちょろさに我慢ならないブラックメタラーさんにこそ楽しんでいただきたい一枚。
Great! Too great!


【お気に入り】
#6[Pulses in Extraconscious Lucidity]ブラックメタル・メロディ学派が悶死全滅するレベル!
Facebook
https://www.facebook.com/MareCognitumMusic
【Bandcamp】
http://marecognitum.bandcamp.com/


ちなみにこの記事を書いている時点でCDはbandcampで残り19枚!
売り切れる前にゲットだ!