Ulver:[Bergtatt - Et Eeventyr i 5 Capitler]


ノルウェー産、フォーク/アトモスフェリックブラックメタル、1995年1st
ブラックメタル史に燦然と輝く、押しも押されもせぬ歴史的大傑作。
ずっと探していたんですが、ようやっと入手することができました(喜)
今となっては伝説的・神話的に語られるMayhemBurzumEmperorDarkthroneといったブラックメタルそのものと言っても過言ではない初期ノルウェーの偉大なバンドたち。
そんな彼らと並んで名作と称される作品なだけあり、ブラックメタルの一つの完成形を見ることができる最高傑作的作品となっている


ゆったりダイナミックなスロー〜ミドルテンポからバコバコと荒々しく猛るブラストまでドラスティックに展開するドラムの上で、ヒーゼンな憂いと湿り気に満ち満ちたフォレストフルなギタメロ悲壮的だが勇ましいヴァイキング系悶絶ギタメロ、初期ノルウェーらしい寒々しい荒涼感と攻撃衝動を撒き散らすメロウ極まりないブリザードトレモロ心が洗われるような儚くも切ないトレモロなどが悲哀全開でメランコリックに吹き荒び、ベースが物悲しげに低音を響かせ、しっとり哀感に濡れそぼったアコギ、悲しい音色のフルート、淋しく響くピアノなどによる寂寥感たっぷりの美しいフォークパートが涙を誘い、そこにGarmの強烈な絶叫、および心が凍てついたしまったかのようなゾッとするほど美しいクリーンヴォーカルによる多重クワイがのっかる。味付け程度にアトモスフェリックなKeyや女性ヴォーカルも用いられたりする。
楽曲は基本的にファストでメロディアスなブラックメタルの体裁をとっているが、頻繁にアコースティックパートが挟み込まれ、またそれらがブラックメタルパートにも被さってくる。静と動の対比がドラマチックになされており、その辺のある種めまぐるしく展開していく感覚はプログレッシブとも言える。
なにより津波のごとく押し寄せるテンションの高いメロディの奔流がインパクト絶大であり、大自然への畏敬を感じさせる時にミステリアスなフォレストフル・メロディから胸を掻き毟る切なく狂おしい哀愁ダダ漏れトレモロまで、琴線と涙腺を容赦なく刺激して止まない
さらにそこにフォーキーな叙情を足すアコギや男性コーラスが被さることで作り上げられる美哀愁メロディの多層構造が、荘厳で神秘的な雰囲気を徹底的に演出している。
またヴォーカルワークも大変素晴らしく、ブラックメタル界随一のヴォーカリストであるGarm鬼気迫るヒステリックなガナリ絶叫が悲愴感いっぱいに狂気を絞り出している様は猛烈にかっこいい。そしてこの迫力のあるデスヴォイスも良いのだが、やはり彼の最大の持ち味はその美声にあるだろう。前述したように、冷たく透き通るような声音なのだが、聴いているこっちが泣きたくなってしまうような、今にも泣き出しそうな物憂げな感情に満ちたすばらしいハーモニーがこれでもかと堪能できる
音質も、ブラックメタルらしい若干籠り気味のプリミティブ感を持ちながらアコースティックな繊細さも持ち合わせた申し分ないもの。


というわけで、歴史的名盤の誉れを得るにふさわしい感動的な一枚
とにかく深く美しいメロディの圧倒的な叙情性の高さ、そして緩急を巧みかつ絶妙に織り交ぜた作曲センスの高さにただただ感服。5曲35分弱、全く息つく暇がない。
この作風は当時のシーンとしてはかなり異色だったんではないでしょうか。AsmeginのようなフォークブラックやAgallochFenOctober FallsKlabautamannといったフォーク要素のあるプログレッシブブラックメタルの原点と位置づけられると思いますが、そうしたバンドのファンでなくともなにかしら心動かされるものがあるだろう。
この作品がいまだに絶大な支持を受けているのも至極納得というものだ。
というか、最近やっとこ聴けた自分が言うべきことでもないのは明白ですが、それでも一度これを聞いてしまうと、ブラックメタラーなら必聴、と言わざるを得ない。それほどまでに素晴らしい。
僕のようにいまだ未聴の方はぜひ最優先でゲットしていただきたい作品です。


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