Janvs:[Vega]


イタリアの芸術的ディプレッシブ/ポストブラックメタル、2008年3rd
ジャケからして通常のブラックとは一線を画したものを感じさせるが、実際KralliceLantlos同様、ブラックメタルの方法論とポストロック的なキレイ系メロを用いて叙情味あふれる情景を描き出す新世代系のバンド。
いや、これは素晴らしいデス!!


Kralliceを彷彿とさせるエクスペリメンタルな趣のある叙情トレモロTransylvania的儚く美しいトレモロアルペジオ、温かみの感じられるアコギで彩られたメランコリック極まりない鬱系ポストブラック。
例えるならKralliceTransylvaniaのようなロマンティックなフレーズを足したような感じ。曲によってはフォーク要素のないAgallochみたいにも聞こえる。
ディプレッシブといっても葬式ドゥームタイプのような絶望に塗り固められたネガティブさではなく、悲しみと涙にくれ、決して手が届かないと分かっていながらも星の瞬く夜空に手を伸ばしてしまうかのような、光や救い、希望が垣間見えるからこその悲劇的な美しさに満ちた音像
ブラストを交えKralliceのようにスピーディかつスリリングに攻めるパートあり、Agallochのようにロック的なダイナミズムでムーディに攻めるミッドテンポのパートあり、ドラマ性の高い楽曲が続く。
しかしどの曲にも共通しているのは神々しいほど美しく、かつ胸を掻き毟るほどに切ないそのメロディ。とにかく凄まじい哀愁を放っている叙情フレーズの数々がメランコリックなことこの上なく、激しく琴線に触れる。しかしAgallochAlcestを彷彿とさせるしっとり濡れたアコギやTransylvaniaのようなロック的臭&爽やかメロなども駆使していることもあり、そうしたメロディにはどこか温かみが感じられ、癒し的でもある
また、アルバム全編に配されているどこか宇宙的な神秘性を思わせるアンビエントKeyがミステリアスな雰囲気を演出している。#3では原始的なドラミングとミステリアスなメロディを用いて儀式的なイメージの充満した曲がプレイされている。


ヴォーカルは鬱系らしい鬱積した感情を吐き出すようなガナリ咆哮。これが実にいい塩梅で楽曲に漂う悲壮感を増しており、煽情力に拍車をかけている。Lifeloverのように感情を爆発させる情けない系絶叫や韓流ドラマのBGMを彷彿とさせるクリーンヴォイスなども用いられており、ヴォーカルワークもドラマチックと言える。


というわけで、極めて素晴らしい内容の涙腺決壊系ポストブラックメタル
ブラックメタルの枠にとらわれない、希望と悲壮感とが肉薄したアーティスティックな内容。その独創性と質の高さは衝撃的ですらある。
昨今の、ブラックメタルとして新しいサウンドスケープを提示してくれるバンドたちの中でも頭一つ飛び抜けてキレイなメロディが個人的ツボど真ん中であり、その洗練された内容に終始感動しきりだった。
とくにKrallice系の曲であるテンションの高い#1#5、そして叙情性と攻撃性を兼ね備えた#7には心底打ちのめされた。
このアルバムを聴いたのは今年に入ってからだが、去年聴いていたら間違いなくKralliceと並んで2008年のべストに入っていたであろう。
KralliceTransylvaniaLantlosAmesoeurusといった、オシャレ度の高い新世代ブラックが好きな人には是非とも聴いていただきたい、当ブログでも最上級にオススメの一枚。
ああ、もうたまらない。


・オフィシャルサイト
・Myspace#7[Vesper II]#5[Mediterraneo]、および#6[Vega]のサンプルが聴ける