Fen:[The Malediction Fields]


UK産、アトモスフェリック・エクスペリメンタルブラックメタル/ポストロック、2009年1st。先日Amesoeursがフルアルバムを出したイタリアのCODE 666からデジパックでのリリース。
2007年EPもなかなか味のある内容だったが、そのスタイルを踏襲しつつさらにポストロック的な方向に大きく進んだ今作は、叙情性、涙腺刺激という点において飛躍的な進化を遂げた、ブラックメタル的な方法論を用いてポストロック・エクスペリメンタルを表現したような素晴らしい内容


ジャージャーと耳当たり良く歪んだギターによるAgalloch風木目調リフ/アコギおよびブリザードリフAlcestを彷彿とさせる激しく琴線に触れる儚く繊細なトレモロおよび物憂げな/陽光の差すような温かみのあるアコギ/アルペジオロック臭いTransylvania的ロマンチックソロエクスペリメンタルな響きのクリーンギターなどなど、およそ類型的なブラックとはかけ離れたメロディを駆使して自然的な情緒感とモダンな悲壮感を聴く者に強く訴えかけてくる、圧倒的なまでにメランコリックなポストブラックメタル
基本ポストロックを思わせる躍動感のあるドラムによるゆったりとしたミドルテンポ主体だが、頻繁にブラストなどを交えたブラックメタル的な疾走・爆走も垣間見え、ダイナミックに展開していく。
終始冷たくも美しいアンビエントKeyが荘厳に響き渡っており、神秘的・幻想的な雰囲気に満ち満ちている
また温かく、しかし物憂げなベースラインがギターやKeyに埋もれることなくよく動いてメロディを紡いでいる点も、この手のブラックとしてはお約束とはいえ、好感触。


ヴォーカルはAgallochのようなリバーブのかかった吐き捨て系ハスキーガナリ。Agallochよりことさら強く感情を吐露しており非常にブラックメタル的で邪悪。まるで絶望に打ちひしがれ慟哭しているかのような悲壮感が漂っており、非常に胸にくるデスヴォイスをしている
またAlcestでのNeigeを思わせる霞のように淡いシューゲイザー系クリーンヴォイスや、Agalloch的哀愁の滲んだ美声、うっすらコーラスなどヴォーカルワークが非常に多様かつ表現力豊かになっている点が楽曲の煽情力を何倍にもしている


前EPに比べメロディの破壊力が爆発的にパワーアップしており、楽曲はよりドラマチックになり、ヴォーカルワークは多彩になり、神秘的アンビエントKeyが雰囲気を盛り上げ、音質が音響系のように深みを増し、となんだかとんでもないことになっている
ギタメロのバラエティの向上が目につくが、とくにシューゲイザー・ポストロック的なフレーズが大幅増量しており、ヴォーカルワークもあいまってAmesoeursに通ずる淡い儚さ、切なさと現代都市的なロマンティックなペシミズムが感じられる点が前EPと大きく異なる点だろう。
もう泣けて泣けてどうしようもない胸を掻き毟るほどに物悲しく、しかしどこまでも神聖で美しい悲哀メロが激しく胸を打つ。またそれらのメロディには時折、まるで天界に導いていくかのように厳かかつ優しく包み込むような温かみが感じられ、そうした救済の光に満ちたメロディに荘厳なアトモスフェリックKeyが重なることで得も言われぬ恍惚感が得られる
そのような最上級に泣けるメロディを伴って厚みのある音質で畳みかけるように疾走するシーンなどは凄みすら感じさせるほどに強力。


というわけで、胸に沁み入る涙腺崩壊エクスペリメンタル・ポストブラックメタルの名盤
前EPも良かったけど、ハッキリ言ってここまで素晴らしい作品を仕上げてくるとはさすがに予想していなかった。見違えるようだ。
前EPに比べ爆走パートが増えブラック的アグレッションが増しているが、この音像はむしろブラックメタル的な要素をもったエクスペリメンタル・ポストロック/シューゲイザーといった雰囲気。例えるなら、Agalloch系ヒーゼンブラックAmesoeursJanvs系ポストブラックといったところか。ゆったりしたパートではJesuすら彷彿とされる。
AlcestAmesoeursJanvsLantlosなどポストロック・シューゲイザー的エッセンスを吸収した新世代系やAgallochのような森林系ブラックが好きな人はもんどりうって悶絶してしまうであろう儚くも美しいメロディの極み
このブログを頻繁に見てる人なら察しが付くとおり、僕はもう完全にヤられました。完敗です。
前EPを気に入った人はもちろん、前EPがイマイチつまらなかった人も騙されたと思って是非聴いてみてほしい、スーパーウルトラアトランティックオススメの一枚
わんだほ−!!


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