Amesoeurs:[Amesoeurs]


AlcestMortiferaPeste NoireCelestiaなど関わるバンドはどれも超一級にして唯一無二、ここ日本でも絶大な指示を受けているNeige御大率いるおフランス産ポストブラックメタル
名作EP[Ruines Humaines]に続く待望の2009年1st
"A kaleidoscopic soundtrack for the modern era"と銘打たれているとおり、現代社会に生きる人間の孤独感や寂寥感などを強く喚起させる、極めて叙情性と癒し効果の強いノスタルジーに満ちた作品


気だるい憂鬱感を滲ませながら、しかし泣きはらした後のような爽やかさと温かみの感じられるニヒルでモダンなロック的リフ心を掻き毟り胸が張り裂けるほど切ないノイジー・ヒステリックな高音トレモロ繊細で美しく温かな哀愁と哀しみに満ちた透明感のあるクリーンギター/アルペジオギター並みにメロディを紡ぎ楽曲をより叙情的に、感情豊かにしている温かくメロウなベースAlcestを思わせる美しくかつ儚くも優しげな陽光あふれるアコギなどが絶え間なく涙腺を刺激しまくり、その上でAudrey Sylvain女史溜め息交じりに物憂げな感情を歌い上げるといった、適度に爽やかで明るく、しかしどうしようもないほどの切ないノスタルジーが鋭く胸に沁み入る感傷的な癒し系ポストロック/シューゲイザーストパンク/ニューウェーブブラックメタル
ドカドカとブラストビートなども交えつつ、基本は軽快なポストロック的ミドルテンポ〜疾走がメイン。


前EPに比べよりブラック離れが進行し、さらにポストロック方向に進んだ作風#7[Trouble (Éveils Infâmes)]ではPeste Noireのようなブラックメタル曲(これがまたかっこいい)であるが)
心にザリザリとヤスリをかけられているようなファズたっぷりギターのノイジーさや、まるでガラスを引っ掻いているかのようなヒステリックな高音トレモロの鋭さがいくらか緩和されており、荒いギターの音の粒子がガス状に拡散しているような感覚。さらに低音が厚みを増しており、ドラムの音もタイトにかつパワフルになっているため、全体的にマイルドな丸みと奥行きが感じられるダイナミックなポストロック的音質になった分離・バランスともに完璧な、各楽器の音色が十二分に生かされている非常に綺麗な音質


また、ヴォーカルはほとんどの曲でAudreyタンが担当しており、Neige御大が凄絶かつ悲痛な絶叫を張り上げているのはわずか3曲(#4[Recueillement]#7#11[Au Crépuscule de Nos Rêves])となっている。
Audreyタンの透き通った可憐な美声は、その若々しさとは相反するようにアンニュイな雰囲気に満ちており、まるで和服美女の襟から覗くうなじの遅れ毛から漂うような疲れの滲んだ艶っぽい色気が感じられ、楽曲の持つ気だるい雰囲気に見事にハマっている。スピーカー越しに聴いているようなエフェクトがかけられており、インダストリアルな耳当たり。さらに#3[Heurt]#9[La Reine Trayeuse]では声帯を軋ませたブラック絶叫(Neige御大の声の出し方に似ている)や絹を引き裂くような悲鳴も披露しており、センチメンタリズムに満ちた素晴らしいヴォーカルワークを披露している


というわけで、期待を裏切らない涙腺決壊・心臓破り系ポストブラックメタルの超神盤
メランコリックかつエモーショナルかつロマンチックかつエレガントな、ハートブレーキン発癒し行き超特急。
前述したような変化が顕著なため、もはやブラックメタルのニュアンスを取り入れたポストロックといった音像。胸に突き刺さり心を荒削りするような鋭利さや寒々しさといった印象は多少減退したが、とはいえそこは天下のNeige御大バランスのとり方が気だるい憂鬱感や虚脱感寄りになったというだけであって、作曲・メロディセンスは全く衰えていることはなく、聴いた瞬間一発で「Neigeだ!!」とわかる涙腺刺激しまくりのノスタルジックメロはさすがと言うしかない。この人の才能はちょっとシャレんなってない。
全11曲すべて甲乙つけ難いほどに素晴らしく、特に#2[Les Ruches Malades]〜#5[Faux Semblants]あたりの流れはもうホントに非の打ちどころがない儚くも美しく切ない旋律の数々には何度聞いても心がキリキリと締め付けられ感極まってしまうくらいツボ直撃。ハッキリ言ってベストチューンとか決めようがない。
また#9のみAudreyタン作曲となっており、こちらも心を打つ湿った郷愁に満ちていて泣ける。
バンド名が冠された#10[Amesoeurs]グルーヴィなビートとオシャレなメロディがサイケデリックな昂揚感を生み出す、全くブラック要素のない名曲
#11センチメンタルトレモロNeige金切り絶叫+ブラスト爆走は反則級の殺傷力。
欲を言えば、このエモーショナルな響きのギターも楽曲の気だるげな雰囲気に合ってはいるが、ギターがもっとザラザラと粗くハーシュ・ノイジーだったら自分好みだったかな。そしてやっぱりNeige御大ブラックメタル界随一の強烈な痛々しさを訴えかけてくる超絶絶叫ももっと聞きたかった。
この2点のみがちょっと残念ではあるが、しかしそこを差し引いても他に比肩するものが思い当たらないほどに素晴らしい作品であり、Neige大好きな自分としては今まで生きててよかったと思えるくらいの大満足。この世に産んでくれてありがとうお母さん。
前EPが好きな人はまぁ言われるまでもなく買ってるんだろうけど、最近の新世代系シューゲイザーブラック勢が好きなら当然必聴必携必涙の一枚であり、そうでない人も含め多くの人にこの感動を味わい噛みしめてもらいたい。


・オフィシャルサイト
・Myspace
このアルバムを最後にバンドは解散となるようであるが、頼むからもっと頑張ってほしい。心から。お願い神様。