Lantlôs：[.neon]

「ドイツのNeige」ことHerbst氏による、ポストディプレッシブ／シューゲイザー・ブラックメタル、2010年2nd。6曲40分弱。
最近イケイケのProphecy Productionsのサブレーベル、Lupus Loungeよりリリース。

【キャッチコピー】
都会の孤独感、憂鬱感、倦怠感に湿った曇天を、抑えきれない激情と胸に突き刺さる儚くも切ないノスタルジーで突き破り、泣き晴らしながら眩しい光溢れる雲上へと舞いあがる、新世代オシャレブラックメタルの会心作。
【一言】
ゆったりした大人びたスローテンポから感情を爆発させてアグレッシブに叩きつけるブラストまでダイナミックなドラマの骨格をなすドラムの上で、儚く切ない、涙腺決壊ボタンを連打し胸を掻き毟るノスタルジック極まりない感傷的トレモロ、温かく爽やかで癒しと歓喜に満ちたトレモロ、クリーントーン／アコギのアルペジオによる清浄感のある美しい旋律、幻想的に残響を響かせるポストロック的クリーントーン、憂鬱な湿り気をふんだんに含んだガス状ギターの淡く儚いリフ、マイルドな耳障りかつ質量感のあるモダンでおしゃれなベースなどが、メランコリックな楽曲を紡ぎ、トンビの首を締め上げてその嘴で黒板を引っ搔いているような、声帯の軋んだ刺すように痛烈な悲痛極まりない絶叫が心に響く。
【二言】
前作よりも更にポストロック／シューゲイザー化が進行。加えて、都会の高級ホテルの最上階バーラウンジでワイン片手に夜も眠らぬネオン街を憂い気に見下ろすような、ジャジーでムーディなパートを大胆にフィーチャーしたりなど、独自の方法論に従い叙情的でメランコリック、センチメンタルな世界観を見事に描ききっている。
【三言】
空間を目一杯に使った奥行きのあるサウンドスケープ、多種多様な音のレイヤを幾重にも重ね合わせる音の配置、ポストロックに通ずる繊細な音使い、静と動のダイナミズムを巧みに用いたドラマティックな曲展開など、楽曲センスの高さはNeigeに匹敵するセンスの高さと知性を感じさせる。
【蛇足】
｢絶対こいつNeige大好きだろ」とみんな思ってたら、当のNeige御大がVoとして参加するという、まるでモノマネ王座決定戦の本人登場みたいな芸当をやってのけて人々を驚かせた2nd。
確か1stが出た頃に、2ndの曲も既に作曲済みとアナウンスされていたように記憶しているから、Neige御大はあくまでヴォーカルのみの参加だろう（アレンジ等細かな面でのサポートはあるかもしれないが）。
前作1stはシューゲ系の切なさ儚さを強く感じさせつつ、ブラックメタル的アグレッションや陰鬱さの強い新世代鬱系の傑作であり、今作はその順当な進化系と言ってよい音楽性だが、ハッキリ言ってその完成度は桁違い。
端的に言ってしまえば、前作をAmesoeurs化させてThraenenkindのシューゲ感を盛り込み、ジャズバンドをゲストに呼んだといった感じだろうか。
Amesoeurs：1stの都会的な憂鬱感、倦怠感、Alcest：2ndのようなしっとりと湿ったメランコリーも感じさせながら、独特のアダルティでオシャレなムードや、ブラックメタルとしては卓越した繊細かつ空間的なポストロック系の音使いなど、充実したインスピレーションによって唯一無二の世界観が構築されている。
#2[These Nights Were Ours]イントロのアルペジオはAdorableなんかを彷彿とさせ、#6[Neon]では轟音ノイズギターなど、シューゲイザーブラックメタルの範疇にとどまらず本格シューゲイザーへの接近を見せる。
この雰囲気は世を席巻する数多のシューゲブラックの中でも唯一無二であり、Neige御大の盟友と呼ぶにふさわしい圧倒的なオリジナリティと抜群の煽情力。
ブラックメタル界隈随一の痛々しさ凄惨さを誇る、生々しい感情を剥き出しにしたNeige御大の悲痛極まる苦しげな絶叫もノスタルジーの洪水のような楽曲を見事に盛り上げる。
各楽曲の中での山谷の配置も見事なら、曲運びも素晴らしい。
陰陽明暗様々な感情の起伏の末に#5[Coma]で迎える歓喜に満ち溢れて飛翔するクライマックスにはむせび泣くこと必至。
前作も素晴らしかったもののいまだNeigeフォロワーの一端に過ぎなかったが、今作でポスト／シューゲ系のトップランカーの地位を揺るぎないものにしたような印象だ。
Alcest、Amsoeurs、Thraenenkind、Heretoire、Fen、Liam、およびPest Productions系列あたりが好きなポスト／シューゲ好きは避けては通れない大名盤と言って言い過ぎることはないだろう。
必聴必涙悶絶失禁の一枚！
【お気に入り】
#5[Coma]：曇天を突き破り心が解き放たれるように歓喜の産声を上げて飛翔するトレモロに胸がいっぱいになる。ここまでの切ないドラマが昇華される本作のクライマックス。
【オフィシャルサイト】
http://www.lantlos.com/
【MySpace】
http://www.myspace.com/lantlos