Alcest:[Écailles de lune]


天才Neige御大による、フランス産、シューゲイザー/ポストブラックメタル、2010年2nd
DIGIブックCD、ポスターフラッグ、ポストカード付き1000枚限定ボックスセット。
6曲42分弱。


【キャッチコピー】
翳った幻想と感傷的な郷愁の波間に儚い希望の月光がちらりと射し込む、深遠なる蒼き憂鬱の結晶化したアーティスティック・ポストブラックメタル
【一言】
緩やかにたゆたうロック調ミドル〜スロウテンポの上で、切なくも温かみのあるソリッドなノイズギター/チラチラと光の粒子を舞わせながら幻想的に残響を響かせるクリーントーン/寂寥感を募らせるアコギなどによる儚く切ないトレモロアルペジオ、メロウでムーディなベースなどが、美しく澄んだ透明感あふれる音のレイヤーを繊細に重ね合わせる。そこに被さる淡く透き通ったみずみずしいハーモニーはまるで子守唄のようであり、夢見るような恍惚感に包み込まれうっとりしてしまう。
【二言】
生命の歓喜と柔らかな光彩溢れる多幸感に満ちた前作とは打って変わって、さざ波に切り取られた月明かりが静かに射し込む闇夜の深海の薄暗くも凛とした蒼さを写し取ってきたかのような夢幻的音楽性。「おとぎの国のAlcestの世界観を神秘と夢想として受け継ぎつつ、都会に生きる孤独をパーソナルに描いたAmesoeursの濃密に湿った憂鬱感・倦怠感が融合されたことで、よりロマンティック・メランコリックさに磨きがかかっている。
【三言】
前作と最も異なる点としてあげられるのが、Amesoeursで聴かれたようなブラックメタル的アグレッションを持ったパートが絶妙に切り込んでくる点。静と動の対比がより強烈になったことで、ドラマ性が圧倒的に増した。ギャリギャリと鋭利に胸を掻き毟るハーシュギターによる、爽やかさすら感じさせるセンチメンタル涙腺決壊トレモロと、声帯が引き千切れんばかりにギリギリと絶叫を張り上げる凄絶なガナリ声を伴って激情を爆発させるブラスト疾走パートの殺傷力は絶大であり、凄まじい昂揚感。
【蛇足】
新世代ブラックメタルの始祖にして真髄による2作目。
前作1st、そしてNeige御大の別働隊であるAmesoeursが世界に与えた衝撃はいまだ衰えることなく、数々のフォロワーを生み続けており、いわゆる「シューゲイザーブラックメタルのクロスオーバー」というここ数年の熱狂は彼、Neige一人に端を発すると言って異論を挟む余地はないだろう。
そんな、全世界が注目する中リリースされた今作は、自らが築いたその高すぎる期待をすら軽く凌駕し、もはや芸術の域に達していると言っても過言ではない、Neige御大の感性総決算とでも言うべき素晴らしい作品となっている。
やはり、いまや神盤として早くも伝説視されている前作の革新性・インパクトには劣るものの、徹底した世界観の完成度としてはこちらに軍配が上がるのではないだろうか。
AlcestAmesoeursの一本化と言える作風だけに、純粋に前作路線を期待するとイメージが異なると思うが、かといってこれを聴いてガッカリという人はそういないだろう。
長尺の曲が並ぶが、まったくそんなの気にならない充実した内容。
アルバム一枚で一曲と言ってもいいくらい無駄が無く、完璧に練り上げられている。
有象無象のフォロワー勢が軒並みAlcestAmesoeursの背中を必死に追いかけつつもまだその域に達していないという現状の中、さらにその先を行く独創性を見せつけて他を圧倒し突き放す結果となった。
作品をリリースする毎に新たな情景を鮮烈に描出し、ブラックメタルの可能性を切り開いていくその孤高のカリスマ性はさすがと言うか、その才能の底知れなさは空恐ろしいほど。
これほど天才という言葉がしっくりくるアーティストもそういないだろう。
これから各所で話題になるであろう年間ベスト談義でも大いにその威光を発揮することは疑うべくもない。
いまさらドヤ顔で紹介するのも恥ずかしいくらい、時代の当たり前となってい必携の一枚。
Greatest!!
【お気に入り】
#1[Écailles de Lune (Part I)]:天才。
【傾向と対策】
AmesoeursMortiferaLes DiscretsLantlosFen、その他シューゲイザー/ポストロック系ブラックメタル
【オフィシャルサイト】
http://www.alcest-music.com/
MySpace
http://www.myspace.com/alcestmusic