Je：[Un Royaume de Nuit]

https://www.youtube.com/watch?v=96xXwKt_1VY
フランス産、激情ポストロック／ブラックメタル、2011年EP。
Arx Productionsより500枚限定リリース。5曲28分弱。

【キャッチコピー】
明るく爽やかでありながら、胸が苦しくなるような郷愁の念を目一杯に含んだ切なすぎる激情エモエモメロディが炸裂する、鬼エモーショナル・激ノスタルジックなシューゲイザー系ポストブラックメタル！
【スタイル】
カンカンと硬く抜けの良いスネアが心地よいドラムが時折ブラストも交えながらロックらしいダイナミズムを備えた軽快なミドルテンポ〜アップテンポで跳ねまくり、ぬくもりを感じさせるベースがメロウなラインを紡ぎ、ギャリギャリザラザラと粒の粗いディストーションで耳を劈くエッジーかつマッシブな轟音ノイズギターが、郷愁キレキレのザクザクリフ、琴線刺激の激情エモーショナルリフ、フランス産ブラックらしいメランコリックさを撒き散らすメロウなトレモロ等を感情色豊かに掻き鳴らしまくる中、Alcestフォロワーらしい繊細かつ美しいポストロックの薫り漂う瑞々しく柔らかなアコギのアルペジオ、Transylvaniaを彷彿とさせる、目に涙を一杯に溜めてオーロラを見上げるようなロマンティックさ溢れるクリーントーンのソロなどが絡む。
ヴォーカルは情けない泣きの色も滲む高音交じりのガナリ絶叫。あまりブラックメタルらしいガナリ声ではなく、パンクのシャウトの延長上に勘定できるだろう人間臭さ溢れる絶叫。正直ブラックメタルとしては弱めだけど、エモい音楽性にはマッチしている。
【ポイント】
Alcest、Amesoeurs的な儚く切ないノスタルジーとは温度の異なる、もっともっと迸る感情の熱を帯びたエモーショナル極まりないメロディはまさに激情ポストロック。めっぽうたまらんのよ！
【蛇足】
こりゃまたまたとんでもねぇ新人バンドの登場だ！
いわゆるポストNeige世代のシューゲイザーブラック一派であることはおそらく間違いないが、かと言って、今や巷に溢れる、鬱ブラックのネガティブさを強調するための表現手法として、先人の見応見真似でシューゲイザー的儚さを取り入れてるレベルのバンド群とはその存在感が全く異なる。
シューゲイザーブラックらしい“耳障り”は保ちながらも、描き出す情景は激情ポストロックのそれ。
とにかく涙腺決壊系メロディの良さがハンパではなく、電車の中だろうがなんだろうが目を閉じて「う〜ん」とか唸りながら左右に首をふりふり降ってしまうほどに恍惚としてしまう。
ただただエモーショナルに徹しており、いっそ爽やかとすら感じられるほどのスッキリとした喉越しは、ブラックメタルらしい鬱々とした陰湿さとは対極に位置すると言っていいほど。
とは言いながらも、じゃぁブラックメタル関係ないじゃんかと言うとそうでもなく、それこそAorlhacなどに典型的に見られる、フレンチブラックらしいクサみを伴ったトレモロをブラストに載せて疾駆したり、メタリックな刻みを多用したりと、ブラックメタルの影響もしっかりと血肉としているあたりが凄い。
というか、ポストロック、シューゲイザー、ブラックメタルをここまで違和感なく、全く境界線の引けないレベルで混ぜ込んで、「Je」でしかあり得ないという説得力のある音像を作り上げているのは驚嘆に値する。
それこそ良質シューゲブラックを多数抱えるPest Productionsも含めて、いわゆる「Alcest、Amesoeursフォロワー」は個性の欠如した似たり寄ったりのバンドが多いと思われつつある昨今において、ここまでアイデンテティを確立したバンドは、それこそ両手で数えられるレベルだろう。
「シューゲブラック」という体裁にこだわっていないからこそ、シューゲブラックらしい感情の揺さぶり、切なさを介して感情を開放するカタルシスを体験できる、そんな一枚。
2011年屈指レベルでオススメ！
【お気に入り】
#2[Les Mensonges de l'Aube]：じぇえええええええええええええ！！！！！！
【MySpace】
http://www.myspace.com/jemusical