Altar of Plagues:[White Tomb]


アイルランド共和国産、アトモスフェリック/ポストブラックメタル、2009年1st
Wolves in the Throne Roomシューゲイザー寄りにして自殺系的ディプレ感をまぶしたような、神秘的かつ美しい情景を描き出すブラックメタルがプレイされている。


スロー〜ミッドテンポを交え緩急をつけつつも衝動を叩きつけるかのごとく猛り狂う怒涛のブラストビート、その上でブラックメタル感を残しつつもシューゲイザー的儚さ・神秘性を強く帯びた轟音ギター・叙情トレモロ、かすかにKralliceを思わせるようなエクスペリメンタルなトレモロ、およびズーーーンと沈みこんだドゥーミーなネガティブメロが掻き鳴らされ、奥行きを感じさせるアンビエントKeyが荘厳に響き渡り、悲哀に濡れたしっとりクリーンギター/アコギがもの寂しげだが温かみのある旋律を優しく紡ぐといった、感傷的かつディプレ気味なアトモスフェリックブラックメタル
Wolves in the Throne RoomFenブラックメタルパートを彷彿とさせる自然崇拝アトモスフィアスタイルだが、ギターリフや楽曲の端々(とくにゆらゆら揺れている幽鬼のようなスロー・ミッドパート)からはリストカット系染みたジクジクとした陰鬱感が感じられ、そうした意味ではLantlosにも似ている。
激しいテンションでもって繰り出される胸を掻き毟るような切ないトレモロ・メロディの奔流が極上のメランコリーを創出しており、涙と悲嘆に暮れながらも仄かな温かみや神々しさが感じられ実に癒される


楽曲はブラックメタル的にノイジー・アグレッシブでありながらポストロック的ダイナミズムも持ち合わせており、また音質は丁寧に練り込まれた緻密かつ繊細、クリアかつ迫力があり素晴らしい
バキバキジュワジュワとソリッドかつエモーショナルに歪められたディストーションギターの響きが非常に心地よく、シューゲ的な轟音歪音の悦楽に浸りながらメロディを味わうことができる


ヴォーカルは獣じみた吐き捨てデスヴォイス。獰猛なデスヴォイスで鬱屈とした激情を発露させており、心に響くかっこ良い声。また、聴いていて背筋がムズ痒くなるような、悪魔の赤子が如き不快な喚き系ブラッキーヴォイスが時折用いられている。これがまた実にイーヴィルでかっこ良く、良いアクセントとなっている。


というわけで、うまい具合にシューゲイザーとディプレを取り入れたハイクオリティな雰囲気ブラックといった一枚。
二部構成の4曲入り50分と大作路線であるが、極端なミニマルさはなくドラマチックに展開していくため、ダレることなく聴き通せる。ヴォーカルが少なめであるためその辺で好き嫌いは分かれるかもしれないが。
シューゲイズ要素があるといってもAmesoeursのように脱ブラックを図っているわけではなくあくまでブラックメタルの範疇に収まった音楽性であるため、前述したようにWolves in the Throne RoomLantlosが気に入った人なら十分楽しめるはず。少なくとも僕は大いに楽しめた次第。
そういった次世代ブラックが好きな諸兄は是非お試しあれ。


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