Heretoir:[.Existenz.]


ドイツ産、ディプレッシブ/シューゲイザーブラックメタル、2009年5曲入りEP。500リミテッド。
最近中国で頑張っている鬱系レーベルPest Productionsよりリリース。
めんどくさがりな自分を個人輸入に踏み切らせるに至った一枚。
おそらく日本に限らず、Alcestの登場以降、ブラックメタルシーンではポストロック/シューゲイザーとの歩み寄りを見せる新世代バンドが注目を浴び始めており、かく言う自分もその流れにバッチリハマりまくっていることはここを見ている人には周知の事実でしょうが、そんな僕がMyspaceで聴いて衝撃を受けたのがこのバンド
AlcestAmesoeursからの影響を公言しているとおり、Neige御大に通ずるセンチメンタリズム溢れるメロディ切なくも癒されます


ジュワジュワジャリジャリと心地よく歪められたプリミティブなギターが奏でる、ジメっとした陰鬱感とシューゲ的な情緒感が融和した淡く儚く切ないトレモロ、および甘く残響を響かせながら幻想的に浮遊するクリーントーンの美しいきめ細やかなトレモロアルペジオおよび音響系を思わせる空間的なシンセ涙に湿り悲しみに暮れるように爪弾かれるアコギ(インストのみ)、厚いベースなどが紡ぎだすモノクロのノスタルジーが強く心に沁み入り、その上で邪悪極まりないガナリNeige御大を彷彿とさせる凄絶な金切りヴォーカルが哀切なる感情を切々と訴えかけてくるシューゲイザーブラックメタル
ツーバスをドコドコ言わせながらのミドルテンポに、乾いたドラムがドタバタ走る忙しない疾走〜爆走を絡める。
昨今のポストブラック勢の中でもディプレ度が高い方で、聴いていて胸が締め付けられる。
とくにシューゲパートでは、温かみを感じさせるようなギターの音色・メロディなのに、まるでひんやりとしたナイフが心に突きたてられ抉られているような粗く冷たい鋭利さが感じられ、狂おしいほどの哀愁とノスタルジーに胸が一杯になってしまう


またヴォーカルは前述したとおり、Brocken Moonが醜くねじくれたような邪悪なガナリと、金属と金属が軋みながら擦り合わされているような凄まじい金切り絶叫の二軸。これがまた感情を揺さぶる実に素晴らしい悲痛さを滲ませており、楽曲の煽情力を何倍にも増している。


というわけで、儚いシューゲイザーと絶望ブラックが見事に融合された素晴らしい一枚
温かな癒しと根暗な陰鬱感が肉薄した、心を荒削りされるような切ないメロディがとにかく秀逸。
粒の粗いディストーションと滑らかな煌めきを持ったクリーントーンが対比されたエモーショナルな音質も完璧。
しかしながら、5曲中3曲がインスト(#1#3#5#3#5はアコギ+ヴォーカル)であり、どうしても物足りなさを感じてしまうあたりがマイナスか。(インストも良質ではあるが)
とはいえ#1#2#4AmesoeursLantlosあたりが好きな人はがっつりツボにハマるんではなかろうか。
そうしたシューゲイザーの要素を持った感傷的なブラックメタルを好んで聴かれる方には絶対聴いていただきたい必聴必涙の一枚。
アルバムの制作も決定しているようで、ぜひとも頑張ってほしい。
激烈オススメ!!


・Myspace:ちなみに、ラスト#5には7:30あたりからピアノによる隠しトラックが収録されている。
ちなみにちなみに、このHeretoirをはじめ6つの素晴らしすぎるシューゲイザー/ポストブラックメタルバンドが参加している鬼オムニバス[The World comes to an end in the end of a journey]は諸事情あってリリースが遅れているとのこと。ポシャらないことを祈るばかりだ。