Peste Noire:「Folkfuck Folie」


ブラックメタル新時代の幕開けを告げる鬨の声Neige参加の、独自の陰鬱ワールドを提示する【黒死病ブラックメタル。フランス、2007年2nd。
妖気すら放っているオカルティックなジャケ・ブックレットはさらに意味深かつ意味不明になり、「本当は怖いグリム童話」みたいな雰囲気。まさに”Folkfuck"。


前作では、憂鬱で自堕落なフレンチ・プリミティブに自殺系的エッセンスとポストロック/パンク的ノリが加わった上、そこに被さるNeigeの究極メランコリズムを体現するメロディが冴えわたるNo.1かつOnly1な傑作を仕上げたPeste Noireですが、独特でありながら不思議としっくりくるレトロな感性は今作でも健在。アルバム全編儚く切ない嘆きのメロディに満ちている。


パッと聴き以前より若干パンクロック色が強くなったような印象。オールドスクールなアプローチも見受けられ、#6など初期Carpathian Forestみたいなフレーズも聴ける。
また、Amesoeursでも叩いているWinterhalter氏ツボを心得た巧みなドラミングによる心地よい疾走感・炸裂感Indria適度に自己主張するメロディアスなベースライン等は今作でもその威力をいかんなく発揮している。
自殺系っぽさが多少影を潜めたような気もするが、暗がりの中のピエロや壊れたおもちゃのような不気味さも感じられ怪し気なオーラはむしろパワーアップしてるともいえる#5とかたまらんよね。


ブックレットでパンク一直線なナリをしているFamine激しく耳障りな狂乱発狂ボイスは、悲鳴っぽさがいくぶん希薄になりささくれ立った喚き/ガナリ声になっている。実に汚らしい声で聴いていてむずがゆくなる。ナイス。


長めの呪文系SEを挟んで#7以降は前作のスタイルにより近く、押し寄せるメランコリズムの波にAlcestよろしく癒し系っぽいメロも加わり、これぞPeste Noireの真骨頂といえる曲が続く。
儀式を行う精神病患者みたいなSE微妙に音が外れて調子っ外れなギターフクロウの物まね・カエルの鳴き声など、ハイセンスなアヴァンギャルド感もさらに強化されており、キワモノっぽさに磨きがかかっている。まさにオリジナリティの塊。
とくに、Peste Noireの魅力がこれでもかと盛り込まれた#11#12なんかはもうかっこよすぎ。


どこか壊れたような狂気を孕んだレトロなトレモロリフと、Alcestにも通ずる切ないメロディを伴ってパンキッシュに疾走〜爆走する天下無敵の一枚。前作が気に入れば間違いなく今作もツボにハマるだろう。
方法論として類型化しがちな一方、常に前衛的なバンドが出てくるところもブラックメタルの面白いとこの一つ。とはいえ、すでに様々なスタイルのバンドが渾沌と蠢くるつぼのようなブラックメタルシーンにおいても、ここまで飛び抜けて斬新で洗練されたバンドは類を見ない。
好き嫌いは抜きにしてとりあえず聞いてみてほしい、激しくオヌヌヌなバンド。もはやNeigeに首ったけ。


※彼らはネット上での音楽ファイルのやり取りにたまらなく腹が立つようなので、マイスペは張らないでおこう。