Peste Noire:[Ballade cuntre lo Anemi Francor]


鬼才La Sale Famine de Valfunde率いるおフランス産、珍妙奇天烈・センチメンタル鬱ブラックメタル、2009年待望の3rd!!デジパックでのリリース。
ドラマーはDarvuliaCelestiaNuit Noireなど一流おフランスブラックやなんと日本のBarbatosにもライヴセッションとして参加していた経歴を持つA. Julia。FemaleヴォーカルにはAmesoeursでおなじみのSainte Audreyタンが参加しており、楽曲中に挿入されるハーモニカやオルガンも彼女が担当している。
誠に残念ながら今作では天才Neigeがバンドから離れてしまっているが、そんな影響は微塵も感じさせないどころか、さらにパワーアップしていると断言してしまっていい素晴らしい内容。


古ぼけたレコードから流れているようなレトロ臭漂う、チリチリジリジリと粗く生々しいノイジー音質で奏でられる、美しく優雅・ロマンティックであるがひどく病的・退廃的でアンニュイなヨレヨレのメランコリック・リフ/トレモロ/ソロジャカジャカと掻き鳴らされるストレートなロック臭いリフAmesoeursを思わせる儚く切なげなポストロック/シューゲイズ系の感傷的フレーズAlcestを彷彿とさせる柔らかみや温かみすら感じさせる癒しのアルペジオ/アコギなどが、凄まじいまでのメランコリーとノスタルジーを切々と感じさせながら、それらをすら凌駕するほどの混沌とした狂気と得体の知れないカルトな不気味さ・おどろおどろしさに包まれた変態儚げアヴァンギャルドブラックメタル
前作までの疾走爆走展開が廃されており、終始ドッタンドッタンとしたスロー〜軽快なミドルテンポ。
地下室臭の漂うRawなドラムがカルトな雰囲気で実にいい感じ。
またあまり歪んでいないベースも印象的にメロディを紡ぐあたりもフレンチブラックらしい。


とにかくメロディの叙情性・煽情力が半端ではなく、過去最高の殺傷力盟友Neigeにも通ずるセンスの儚さや切なさ満載の、どこか懐かしさを感じさせるようなノスタルジック&センチメンタルメロディが琴線に触れまくることこの上なく、聴いていてどうしようもなく胸が切なくなること請け合い。ぶっ壊れた狂気と癒し的ですらある爽やか・儚げメロディとのバランスや入れ替わり、重ね合わせが非常に巧妙かつ絶妙で、一度聞いただけで強烈に印象に残るフレーズの血涙大サービス


Valfundeの、狂気の発露した不快極まりないささくれ立ったしわがれガナリ絶叫も大フィーバー。徹頭徹尾ハイテンションでヤケクソ気味に発狂しており、実にイカれていて気持ち悪カッコイイ。
特筆すべき点として、今作ではヴォーカル・コーラスワークが非常に多彩かつユニークになっており、酔っ払いが風呂に入っているような気の抜ける鼻歌軍歌調合唱色っぽいFemaleヴォーカルディズニー映画で聞かれそうな歌劇っぽい斉唱怪しげ/気だるげなクリーンヴォイスなどを時にSEとして、時にコーラスとして用いている。これらがかなり突拍子もなくかつ目まぐるしく挿入されており、またValfundeの聴いていると体がムズムズしてくるようなガナリ声がそれらとハモったりと相当のカオスっぷりアルバム中に漂う得体の知れない邪悪さや気味の悪さはこれらの「人間の声」の使い方によるところも大きい#2[La Mesniee Mordrissoire]首を締めあげられた軍国主義者みたいな「ら〜ら〜ら〜ら〜」という歌声なんかまさに狂気の沙汰。


加えて物寂しげなオルガン、ハーモニカ(泣ける!!)、ピアノ、悲鳴、鳥やカエルの鳴き声など雑多なフックも健在。調和なんていう言葉とは無縁の猥雑な胡散臭さがこれまたカルト感を増幅させている。


というわけで、毒々しく禍々しい瘴気と儚い叙情渦巻く唯一無二のアヴァンギャルドブラックメタル魔性の傑作
フランス産らしく耽美と憂鬱と満ちているが、どこまでも怪しくカルトで不気味であり、そして何より胸に突き刺さり心を抉る儚く切ないメロディによるレトロでセンチメンタルな叙情感がズバ抜けている
荒く汚い音質も感傷的で大変素晴らしい。
どこをどう聴いてもPeste Noire以外の何物でもない音像でありながら、AlcestAmesoeursを巧みに吸収しさらなる高みへと至ったかのような印象。
今までの作品もかなりツボだったが、今作はそれらをしのぐほどの個人的大ヒット。
前作までが好きな人は勿論、AlcestAmesoeursが好きな人にも是非オススメしたい一枚。
Excellent!!


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