Alcest / Les Discrets:[Split]


今を時めく稀代の天才Neige御大による元祖シューゲイザーブラックメタルAlcestと、そのNeige御大率いるAmesoeursのメンバーであるFursy TeyssierによるシューゲイザーブラックメタルLes Discrets、強力フレンチタッグによる2009年スプリット
5曲27分強。デジパックの2枚組CDは1000セット限定、LPは500枚限定。なぜに2枚組。
両バンドともドラムはAmesoeursPeste Noireなどでお馴染みWinterhalter
Neige御大絡みのプロジェクトはヴィジュアル面にも拘りを感じますが、この作品も非常にオシャレで幻想的なアートワークが印象的。
ボリュームこそ少ないが、それを補って有り余るほど内容が充実しており、シューゲブラック特有の儚くも切ない癒し、ディプレッシブの向こうにあるノスタルジーにどっぷりと浸ることができる感極まる一枚

Les Discrets

3曲17分半。
儚く憂鬱なメロディを奏でるザラザラ空間的に歪んだギター温かな厚みを持ったベースAmesoeurs的グルーブ感を持ってゆったり進行する上で、クリーンギターが甘い浮遊感漂うシューゲイザーらしいリフ・トレモロを儚くも幻想的に奏で物悲しく美しいアコースティックギターと儚く切なげなヴォーカル・コーラスワークが心に突き刺さる、悲哀感たっぷりのシューゲブラック。といってもブラックメタルな要素は極めて薄く、激しい感情の奔流というよりは社会の不条理に疲弊しきって泣き言を漏らしているかのような内向的な音楽性
3曲ともひどく物悲しげで心を打つが、特筆すべきは淡く儚いヴォーカルワーク。まるで何もかもに裏切られてうなだれているかのような倦怠感と諦念がヒシヒシと滲み出る淡い歌声は、聴いているこっちがいたたまれなくなるような、静かだが痛烈な哀感に満ちており、涙腺琴線ともに刺激されまくる
また、涙が乾いた頬をそのままに淡々と、時に力強く紡がれている感情的なアコギの出番も多く、#2[Après l'Ombre]ではほぼアコギとヴォーカル・コーラス(男女)のみとなっている。

Alcest

2曲9分半。
Alcestらしい儚くも切ないノスタルジー極まる極上の癒しと、Amesoeurs現代的憂鬱感とが融合されたような、Neige御大渾身の涙腺刺激シューゲイザーニューウェーブブラックメタル
奇跡の名盤1stのような、瑞々しい生命力と歓喜に満ちた温かくも柔らかな雰囲気は影を潜め、かわりにAmesoeursを思わせるアダルティな翳りと気だるげな雰囲気が大幅に増している
ヴォーカルも1stの淡いウィスパーではなく(途中途中でそのような男女コーラスは入るが)、MortiferaAlcestデモで聴けたような、黒板をノコギリでひっかいているかのような悲痛凄惨極まるワレまくり金切り絶叫がメインとなっている。この声ホントに心に響くなぁ。めっちゃ好きだ。
とは言えシャリシャリとノイジーなギターが奏でる琴線撃破のトレモロと、慈愛と温もりに満ちたクリーンギター/アコギのアルペジオは健在であり、描き出される世界観は紛れもなくAmesoeursではなくAlcestそのもの
というのが#4[Percées de Lumière]。4分過ぎからの展開に涙涙涙。#5[Circe Poisoning The Sea]は柔らかに、しかし鬱々と紡がれる消え入りそうな抒情アコギにウィスパーがのっかるインスト。短いが煽情力抜群。


というわけで、両バンドとも非常に素晴らしく、感涙にむせび泣くことができる
昨今吹き荒れるシューゲブラックブームの原点にして爆心地であるNeige御大とその側近様による作品なだけあり、先日紹介したPest Productionsのコンピ盤をはじめとしたフォロワー勢(彼らは彼らでNeige御大を起点に素晴らしい作品を作っているが)には真似できない、型にとらわれない確固としたオリジナリティを誇っている。
シューゲイザー要素のあるブラックメタルが好きなら悶絶必至。もちろん言うまでもなくNeige御大ファンなら押さえておくべき作品。
AlcestLes Discretsも来年初頭にフルレンスが発売される予定だが、この作品を聴くとますます期待が膨らみますね。
激オススメ!!!なんですが、1000リミテッドと数に限りがありますので、ほしい方はお早めに。


・Les Discrets Myspace
・Alcest Myspace
・Alcest Official Site