SILENCER「Death - Pierce Me」


SORTSIND と並んでイカレブラックの代名詞となっている、スウェーデンの【リアル鬱病ブラックメタル SILENCER 。スイサイダル・ブラックメタル SHINING のギタリストによるバンドです。
この音源も SORTSIND 同様日本のUG市場ではかなりの高値で取引されており、今ではレア音源の一つ。運よく定価で入手することが出来てよかった。


さてその音の方だが、ハッキリ言ってこれがブラックメタル最北端。滲み出る悲痛さがハンパない。凄惨極まりないその音像に戦慄すら覚える。


その最たる原因がこのボーカル。・・・ひどい。系統としては BURZUM 系絶叫なんだけど、正直ここまで悲痛なボーカルは他に無いだろう。凄まじい金切り声で、もはやデス声ですらない。なりふりかまわず泣き叫ぶ様はどんなに狂ったブラックを聞いてきた人間ですらも「これは無い」と素で引いてしまうほどに強烈。悲鳴を上げたり、泣いたり、むせて咳き込んだり。ぶっちゃけ精神異常者が病室で泣き叫んでんのを録音したんじゃねーかっつーくらいのイカレっぷり。
どんな声か判りやすくゆーと、エンタの神様に出てる狂咲き小梅太夫の「チックショーーー!!!」の声で終始泣き叫んでる感じ。いやほんとそのまんまなんだってwwただ、そんなウケ狙いみたいなボーカルなんだけど、あまりにも真に迫り過ぎてて笑えないし、怖い。
そしてこのボーカル、ブックレットやCD下の写真が正視に耐えないほど悲惨。顔と手には包帯グルグル、身体中生傷だらけの血だらけでベッドに横たわっている。痛々しいことこの上ない。またサンクス欄には病院の名前があり、ネットで調べたところこのバンドが活動を停止した理由はボーカルが病院に収容されたためらしい。つまり、マジモンの精神病患者。思わず納得w


そんな狂ったボーカルが乗る一方で、曲自体はかなり聴きやすい部類に入ると思う。やはりギターが SHINING に似ており、鬱々とした真っ黒メロディが思う存分堪能出来る。スウェディッシュらしく常にドカドカ爆走しているファストでメロデイックなスタイル。音質も分厚く良好でまさにスウェディッシュ然りとした出来。
アコギやピアノ、 XASTHUR みたいなアンビエントKeyなども交え叙情味たっぷりに創り上げられる壊れた世界観はノルウェー勢に全く引けを取らないメランコリック具合。
吹雪のような音の塊が怒涛のように押し寄せるこのへんの感覚は、俺がブラックにハマるきっかけとなった同郷の DARK FUNERAL をもフラッシュバックさせ、非常に好み。


アルバムは「Part.KILL:①②③」「Part.YOURSELF:④⑤⑥」の二部構成となっており、曲は5分〜11分と比較的長め。
SHINING ぽいアコギでしっとりスタートしたあと、非常に心臓に悪いタイミングで悲鳴ボーカルイン。何回聞いても慣れないわこれwwこの時点で脱落者続出の悪寒www
一曲通してすんばらしいブリザードリフの嵐。
途中暗いピアノが入ったあとの絶叫とか、終盤の沈み込む展開と泣きじゃくるボーカルとか、背筋が凍る。
②出だしのなんとも言えない哀愁メロディに悶絶。ギタメロ泣かすわぁ〜。胸が締め付けられるようだ。
このボーカル、ガナリ声は SIGH の川島さんみたいだ。そう思うと絶叫も含めて声質似てるかも。何気にギターも SIGH に似てるなぁ。
2′30″過ぎの泣きながらのセリフは、ちょっと失笑もんだなww
それにしてもこのボーカルは凄まじいの一言。普段なに考えて生きてたらこんな声出せるんだろww
4′20″からの展開も SIGH にありそうだ。うわ、絶叫ヤバスww何気に「うっ」とか掛け声がかっこいい。
この曲はいいぞ!!
③しょっぱなはなんかまともにメタルな感じ。始まってみればドカドカ暴走病みブラック。
裏でリフレインされまくりな不穏なギターが絶妙。
そして噂のむせるボーカル。幾重にも重ねられた悲鳴と溜め息まじりの情けないうめき声には絶句。
XASTHUR ぽい妖しいキーボードから始まり、押し寄せるようにメタルパートへ。
不安感を煽るような不穏な空気感は XASTHUR に通じるものがあるね。
6分あたりからは個人的にツボ。
終わりも出だしのキーボードで消え入るように締め。
⑤これから爆発しそうな盛り上がりを見せ一気に爆走!!これはブラックメタラーなら反応せずにはおれまい!!
中盤のメランコリックパートの絶望っぷりは筆舌に尽し難く、精神的にダメージ大。そっから唐突に走り出す様は鳥肌もん。
⑥ピアノによる頽廃的なあうとろ。


憂鬱感と悲哀に満ちた自殺系ブラックメタル
良くも悪くもボーカルのインパクトが絶大なために、ボーカルばっか言及されがちなバンドだけど、曲は曲でかなり(゜∀゜)イイ!!おそらくボーカルが違ったとしてもまた別の形で評価されてたであろうバンド。UG臭プンプンの世界観を維持しつつ何気にキャッチーで取っ付き安い楽曲群は目を見張る程にハイクオリティ。
そんな曲にひたすら絶望的で隠惨極まりない悲痛な叫びが乗っかり、とてつもない暗黒世界が組み上がっている。内に潜む混沌とした闇を自虐的な形で表出させたといった印象で、神秘的というよりは生身の人間らしさを感じさせる作風。残酷なまでに自虐的。数あるブラックメタルの中で「痛み」に抜きん出た傑作。
ボーカルを受け入れられるかどーかで、傑作と感じるか、はたまた、とんでもない駄作と感じるかが分かれるだろうが、俺個人としては相当楽しめたしばっちりハマってしまった次第。 SORTSIND ほど疲れないから何度も聴けるしね。
病み系ファンは必聴の一枚。しかし部屋で聴いてるのを他人に絶対見付かりたくない一枚でもあるなw