Satans Sign of War:「Satans Sign of War」


ドイツ産ウルトラカルト・おんぼろブラックメタル、2005年1stにして唯一のフルレンス。666枚限定、手書きナンバリング入り。1998〜2000年の音源を収録している模様。クレジットは10曲になっているが収録されているのは6曲という適当さがブラックメタル
地味にWerewolf Recordsからリリース。

"This CD is dedicated to S.W. and Finland who fight against the Bolchewists(Kommunists) and destroyed the whole Russian armee in Finland..."

ということらしい。


ドッテンバッタン不安定にリズムを刻むチープ丸出しのドラムに、身勝手にリフらしきものを奏でるチリチリジリジリ低音ゼロギター、遠くの方で適当にギャーギャー喚いてるキチガイ染みた金切りヴォーカルが乗っかるポンコツ・プリミティブブラック。全編ミドルテンポ、ときどき思いついたかのようにヘロヘロ走り出す。ちょとばかし不気味なKeyが絡む。ジャケから想像できる通り安心の低クオリティーだ(笑)
うっすらとメランコリックだが色彩のない灰色リフや発狂ヴォーカルなど、たぶん根本にBurzumがいるんじゃないかと感じる。とくにリフは初期Burzumをそっけなくした(味気なくした)感じとでも言えばいいか。乾いた狂気と絶望渦巻くつかみどころのない楽曲はミサンスロピックさに溢れ、#6に漂う不穏な浮遊感はお化け屋敷ブラックたるStriborgにも通ずる雰囲気。


密度の薄い薄っぺらな音質からラフな演奏までとにかくチープ感にあふれ、ポンコツ好きにはたまらない作風だ。めたくそなドラムはテンポアップするとかなり怪しげ。ギターのみのイントロなんかはつっかえながら練習しているようにしか聞こえない。少なくともバンドとしての一体感は全くと言っていいほどない(笑)
音質はSortsindStriborgあたりのチリチリ感に近い。


ヴォーカルは掠れ気味のBurzum系金切り絶叫。なりふり構わず発狂する様はなかなかイカレている。#2ではなぜかゴアグラインド系のウゴウゴデスボイスに。#6で聴ける中音ガナリはDarvuliaに似ている。


というわけで、虚無感と狂気漂うUGサタニック・ブラックメタル
あまりの演奏のメタメタさにメタラー経由のブラッカーさんは耐えられないかもしれないが、オールドスクーリッシュなギターは90年代初頭の香りが感じられなかなか。鬼気迫るボーカルもHail。
テク二の次でブラックメタルの根本動機たる冒涜的精神のみでプレイしているかのような楽曲は音楽としてはあまり褒められたものでもないかもしれないが、この初期衝動丸出しの本気っぷりが魅力にも成り得るあたりがブラックメタルの醍醐味と言えば聞こえはいいか(笑)少なくとも、このアルバムはそうした魅力が確かに感じられる。
やってることは、初期BurzumからStriborg、あるいはSortsindに向かうベクトル上に位置していると感じられ、そのへんのミサンスロピックさが好きなら楽しめるんじゃないだろうか。
しかし、こーいったバンドはUGシーンにはごろごろいるんだろーな。ぶっちゃけレアだからといって高額を出して買うほどのもんでもないと思うが、こーゆー音源を持っているとぶらっくめたらーとして箔が付くよなぁとも思う(笑)
ポンコツフェチの方は戯れにひとつ。


・Werewolf Records:ちなみに、既に解散している。