Palace of Worms:[The Forgotten]


アメリカ産、WeaklingフォロワーDead as DreamsBalanによる独りブラックメタル、2009年1st。7曲57分半。
Flenser Recordsよりリリース。


【禍々しくヘイトフルな伝統的北欧ブラックにシューゲイザー/ポスト系の叙情性を絶妙にブレンドした摩訶不思議メロディが楽し過ぎる温故知新ブラックメタル!!】


どんよりミドルテンポからノリノリ疾走・トップギアのドカドカブラストまで緩急つけながら突進する気持ち良くブルータルなドラム(打ち込み?)、北欧ブラックよろしく邪悪にメロディアスな荘厳リフ/トレモロ、ほんのりノルウェー・ペイガンな哀愁漂う単音リフ、明るく爽やかとすら言えるポストブラック的激情トレモロ、シューゲブラック的涙腺刺激のトレモロ・幻想的に残響を棚引かせる柔らかなクリーントーンアルペジオ、ゴリゴリザクザクとメタリックなリフ、陰性の叙情に濡れたソロといった、様々な音色と千変万化のリフワークでドス黒くもメランコリックに攻め立てる2本のギター、グイグイとうねり時に耳を惹くメロディックなラインを産み出すベース等が、エフェクトの強いEvilな喚きボーカルが強弱をつけながらもギャァギャァと絶叫する。
暗く怪しげなアコギ、アトモスフェリックなシンセ、調子っぱずれの不気味なメロディを奏でる魔性のマンドリンなども適宜絡んでくる。


「ポストロックの影響を血肉としたオーソドックスなブラックメタルとレーベルが謳うように、新世代系というにはあまりにもまっとうに邪悪なブラックメタル過ぎるが、かといって至って普通のありふれたブラックかと言われれば絶対にそんなことはない。
ほんのりペイガンかつオールドスクールノルウェイジャン、荘厳暗黒なスウェディッシュが入り混じったようなメロディックブラックメタルがベースであるが、Krallice系のエモいトレモロやポストロック/シューゲイザー的儚さを孕んだメロディが、ブラックメタルの本質から逸脱すること無く絶妙なサジ加減で入り乱れる万華鏡が如きメロディ捌きは、実に個性的かつ全く付け焼刃感の無い完成度の高さであり、もはや天晴れと言う他ない。
一番短い曲が5分、最長が13分という大作路線、収録時間は一時間近いものの、2本のギターとベースが絡み合う魅力的なメロディの応酬と、押し引きの効いた楽曲展開、その中で常に維持されるテンションの高さ故、ダレることなく楽しめる。
またジャージャーとノイジーなギターからは瘴気が滲み出る一方、低音まで骨太かつ分離の良い音質も素晴らしい。


というわけで、非常に面白いアプローチで魅了してくれる高品質な一枚。
ブラックメタルらしさをどんどん削ぎ落としていく新世代バンドが溢れかえる中、そうした新時代のブラックメタルをすら旧来のブラックメタルへと逆輸入して構築された音楽性は何気に唯一無二なんじゃなかろうか。
新世代系のアプローチが重要な役割を果たしているものの、むしろ感触は昔ながらのメロディックブラックメタル(のかなりキャッチーな部類)であり、そしてブラックメタルそのものとしてレベルが高いんだから凄い。
正直めちゃくちゃハマってしまった次第。
新世代系でブヒるヒップスターな紳士から新世代系はイマイチという硬派な人まで、いやむしろ硬派な人にこそオススメしたい。
既に2ndのテープも注文してあるので、そちらも非常に楽しみだ。


【お気に入り】
#2[The Antagonist]:これはやばい。13分あっという間やで。
【レーベルサイト】
http://theflenser.com/
MySpace
http://www.myspace.com/414927223


ベストチューンの動画が見つからなかったのでもう一曲別の曲をば。