Vanvid / Sortsind


「狂気」はブラックメタルという音楽にとって非常に重要なファクターの一つである。と思う。
当然、「ブラックメタルで一番狂ってんのは?」みたいな話題があったりするわけだけど、そんな時必ず名前があがるのがこの SORTSIND
デンマークの三人組で、唯一のアルバム Sar は、ブラックメタル狂気の集大成なんて評判も良く聞く。なんだかとてつもなく狂ったボーカルがのっかるプリミティブ・ブラックらしい。
・・・んだが、これがなかなか手に入らない!!プレス数が少なかったのかなんなのか知らんけど、未だにオークション等では桁違い(ホントに桁が違う!!)な額で取引されてる。
まさにカルト・ブラックの鑑っつーバンドで、このバンドの音源をもってるかどーかがブラック・マニアの1つのステータスってーくらい日本では神格化されてたりする(まぁホントにマニアックな人にはそーでもないのかもしんないけど)。


そんな SORTSIND全音源を収録して2005年に1000枚限定でジャケ違い再発されたのがこの Vanvid 。
某匿名掲示板のブラックメタルスレにて DISK HELL に入荷してたよっつー書き込みを見付けるやいなや、講義サボって大急ぎで買いに走ってやっとこさ手にいれることが出来た一枚。


しょっぱなからヨレヨレのメロウギター、狂ったように叩きまくるドラムに言葉にならない悲痛な叫びを上げるボーカルと、凄まじいの一言。
ザァーー、とゆうか、ゴォーーとゆうか、耳をつんざく極悪の音質で暴風雨が如く音の塊が襲ってくる。判りやすくゆーと、メランコリックになった ILDJARN とゆーか。ノイズ一歩手前のミニマル・ブラック。
この音はヤバい。ノイジーの一言では方付けられない、精神に「クル」やばさのある音質だ。


噂通りとゆーか、ちょっとヴォーカルの狂い方が尋常じゃなくて、完全に精神異常者のそれ。エフェクトかけられて歪んだ泣き叫び系絶叫なんだけど、テンションの高さが異常。ギャーギャー喚き散らし、唐突に金切り声で「(ぅひゃぁ〜、に近い?)ぅ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!!」と曲を無視して叫びまくったり、かと思えば恨みつらみ吐き出すように呪租をつむいだり、泣き叫んだあげく「うっうっうっ、ぁあっ、ぁっ、あっ、ぅあ゛あ゛!ぅぅぅ、あ゛ぁ!!ぁっ・・・」と嗚咽を漏らしたりと、まさしく狂気の沙汰。とりわけ⑤なんかは猿山の猿みたいな狂いっぷり(どんなだ)ww


狂ったヴォーカルってだけならネタ程度にしかならないが、このバンドがここまで指示されてるのは曲自体に魅力があるからだ。
憂いに満ちたギタメロのメロウさがかなり際立ってる。
基本は同じメロディを繰り返すファストでミニマルなスタイルで、不協音階を絶えず放出するノイジーなギターがなんとも気持ちいい。
時たまドラムのテンポについていけてないモタリ気味のギターが壊れた感覚をさらに助長する。。。
走り出したら止まらない鬼ドラミングの突進力も素晴らしい。


全編走りっぱなしかとゆーとそーでもなくて、②⑥はインスト、⑦みたいなスローテンポの曲もあって案外メリハリ効いてる。


①ハナから常軌を逸した狂気のブラックメタル。メランコリックなギターがキラリと光る!!
②怪しいキーボードの後ろで悲鳴を上げうめく無数の人、囁くように「ヘイル、サタナ」と唱え続けたりと洗脳系インスト。
③⑤は典型的壊れブラック。すげぇかっこいい!!
⑧前半 DARKTHRONE 直系チープなプリブラ、後半アコギが入り絶叫したり。この絶叫ホントにヤバいよ・・・メロディが泣かせる。
⑨2曲を1曲にまとめたもの。前半は DARKTHRONE タイプのプリブラ。幾重にも重ねられたイカレボーカルがすごい。
⑩頽廃的なギターに不穏なピアノ、悲痛な叫びが背筋がムズ痒くなるような寒さを演出するインストのような曲。
⑪今までの曲調にうっすらとKeyがのっかる曲。Keyの神々しさが逆に怖い。
⑫とてつもなくかっこいい爆走チューン。
ヴァイキングっぽい哀愁のある物静かなギターインスト。ここまでくると感覚がぼけてしまってて暗い曲調なのに救いを感じてしまうww
⑭④の曲。ほとんど同じw
⑮出だしがクリアなドラムだから、おっ、やっとノイズから解放されたか?と思ってるとブーミーなギターが入って来て、やっぱりかとwwパワーを失った ILDJARN のような音質と曲調で、韓国ニュースのナレーション風ボーカルが淡々と怒気を吐き出すような曲。今までが今までなだけにひどくストレートに聞こえるな。


絶望、孤独、怨み、妬み、恐怖、そして腐った世界への激しい憎悪をいっしょくたくにまとめあげ、致命的なまでに研ぎ澄まされた自己嫌悪の刃をもって自らを傷つけ自我を崩壊させるかの如き音楽性。
徹底してダークかつネガティブで、闇度・病み度ともに限界突破、スカウターが壊れんばかりの狂いっぷりに寒気すらする。
込められた怨念とゆーか邪気が物凄い。一体何がそんなに不満なんだww
理屈抜きに精神や感性に直接訴えかける不快感や嫌悪感は見事の一言。鬼気迫る、とゆー表現がここまでしっくり来るバンドもそーはいないだろう。
これぞ地下ブラックの底力、この凄まじい世界観は唯一無二であり他の追随を許さない。
初心者御免どころか相当聞き込んでる人でもおいそれと手を出してはいけない音源。
拷問のような15曲74分、ヤバイ物好きだと自覚してる人は挑戦してみるといいだろう。口に合わなかったら売ってボロ儲けすりゃいーしねww