Darkspace:「Darkspace II」


永世中立国スイスから現れた黒黒黒づくめのスペース・ノイズ/アンビエント・ブラックメタラーDarkspace、2005年2nd。
これも1st同様オリジナルは500枚限定で、所有しているのは2006年にAvantgarde Musicから再発されたもの。翌年に再発とかどんだけ〜(゚Д、゚)


前作は右も左も上も下もない漆黒・暗黒の宇宙空間をノイズ一歩手前の轟音ギターと神秘的アンビエントKeyで表現した素晴らしく完成度の高いノイズ・ブラックメタルでしたが、今作は前作路線をさらにノイズ方向に推し進めた内容で、23分、10分、20分の全3曲ともはや曲の概念すらあやふや(笑)
それと比例するように黒さ暗さやカオスっぷりに磨きがかかっており、アルバム全編にわたって大質量のドス黒い音塊とノイズが満ち満ちている。もうこれ以上ないってくらい荘厳かつ暗黒美を感じさせるブラックメタル・アートが完成されている


確立された表現を適用するならばアンビエント・ブラックになると思うけど、このDarkspaceがそう形容される他のバンドと一線を画すのは、アンビエントミュージックとブラックメタルの融合型ではなく「アンビエント化したブラックメタル」であるという点。アンビエント要素とメタルの境界がものすごく曖昧になっており、輪郭の潰れた凄まじい音圧のギターとマシンドラムによる怒涛のブラスト、ミステリアスに深淵のメロディを奏でるアトモスフェリックなKey、凄絶な絶叫が渾然一体となって広大な奥行きを感じさせるノイズまみれの音空間を構築している。音密度が非常に高く、脳内を圧迫されるような感覚は前作以上だ。


しかし今作でも根底にはノルウェーブラックの魔族の血がしっかりと受け継がれており、籠ったようなノイズの向こう側から聞こえる真っ黒荘厳リフは意外にもわかりやすく邪悪で、ブラックメタラーへの間口は結構広いはず。


ブラックメタルの方法論を堅持したままその外側へ跳躍しようかという傑作だ
スペーシーと書いたが、間違っても星の瞬く幻想的な宇宙などではなく、光すら押しつぶされるブラックホール、その事象の地平線の内側を表現しているといったらケレン味が過ぎるだろうか。
初期ブラックメタルのカルト性とは異質の狂気を感じさせ、マニアからやたらと評価されているのも納得だ。
#2はメタルですらないし、ほぼ轟音づくしで起伏が感じられないためこの手のスタイルに慣れていないと退屈極まりないかもしれないが、一つ一つのフレーズそれ自体はかなりドラマチック。とくに#3など、一切光のさしこまない暗黒空間の深部にEmperorを感じることができれば、ブラックの比較的浅いところを好んで聴く人やミニマル系・アンビエント系が苦手な人でもわりと楽しめるんじゃないかと思う。
なんせ完成度は恐ろしく高い。
メタルとしてではなく一つの音の表現としてぜひ体験してもらいたい一枚。


・Official Darkspace:がんばれば1st以前のデモがダウソできる。
・Darkspace @ Myspace:太っ腹。
おそらく今月あたり新作が発売されるはず。非常に楽しみだ。