Bosse-de-Nage:II


#5[Why Am I So Lovely? Because My Master Washes Me]試聴:http://vimeo.com/29699257
普通のロックバンドな見た目してるわりにMardukの前座とかも務めたらしいアメリカ産、ポストハードコア/ブラックメタル、2011年2nd。5曲42分半。
Flenser Recordsよりリリース。


【モダン鬱ブラックのネガティビティをバックグラウンドに、ポスト・ハードコア的エモーションとシューゲイザー・ブラック的儚く切ないノスタルジーを放出する、怒涛の新世代系轟音激情ブラックメタル!】


ジャラーンジャラーンと陰鬱なリフを重苦しく引きずりながらドゥーミーに進行するスロウパートを適度に挟み込みつつ、抜けが良く迫力もあるドラムによるドカドカバコバコ苛烈なブラスト、ジリジリジャージャーとソリッドに歪んだ粗いノイズ質が耳に心地よい轟音ギターが掻き鳴らす、怨念に喘ぐような陰鬱さを滲ませつつもポストハードコア染みた激情を滾らせるエモーショナルなトレモロ、シューゲ系に通ずる明るく爽やかとすら言える感傷的なノスタルジーを伴った涙腺刺激系トレモロ、言葉にならない悲痛な慟哭に満ちた咆哮で感情任せに泣き喚いているかの如く絶叫を張り上げっぱなしの悲痛なヴォーカルが、まさに轟音の暴風雨となって獰猛かつ叙情的に突っ走る。


悪魔だ髑髏だ白塗りお化けだといったブラックメタルらしいアレやコレとは一線を画す、「え?これブラックメタルなの?」と言いたくなるオサレなジャケからも想像がつくように、ブラックメタルとしてはモダンでスタイリッシュな新世代系。
今作も前作同様の、ただひたすら激情と慟哭のトレモロを掻き鳴らしながらヒリ付くような焦燥感を張りつかせて衝動的に爆走する、ポスト・ハードコア轟音ブラックメタルが展開されている。
静と動の対比をクッキリとつけつつ、一般的なポストブラック勢ほどドラマティックな展開で感情を揺さぶるようなことはせず、胸を打つ激エモーショナルなリフを反復しながら常に全力全開フルスロットルなテンションで駆け抜け、こちらの感情をメタクソに打ちのめすような楽曲構成は相変わらずだが、今作では幾分楽曲展開に起伏が設けられているように感じる。
アルバム全体にはやはりジメジメとした都会的陰鬱さが滲んではいるものの、今作では全作に比してその閉塞感を打ち破るようなメロディのエモさがよりハッキリと強調されており、シューゲブラック染みた淡い儚さ、切なくも幸福感が滲むようなノスタルジーに満ちたメランコリアを強烈に訴えかけてくる。
これぞまさに、胸を締め付け掻き毟る、という表現がしっくりくる激情メロディの殺傷力たるや、もうなんかエライことになっている。
Envyを感じさせる純朴な癒しに満ちた柔らかなアコギやリフが絡んだり、不意に現れる温かなベースラインに耳を奪われるようなシーン等もあり、前作も叙情的ではあったが、よりそちら側へ舵を切ってきた印象を受ける。
そうしたネガティビティとメランコリーのバランス感覚に呼応するようにヴォーカルスタイルにも変化が見られ、自殺系んも通ずるような泣きの色を惜しげもなく発散する発狂ヴォーカルはその悲愴さを一層強くしている。
また、ただならない切迫感を持ってやたらめったら猛烈に叩き込まれる手数足数の多いダイナミックなドラムも、こちらの感情の昂ぶりに拍車をかけてくる。


ポストブラック然りとした、分離が良く、硬く引き締まりつつも空間を埋め尽くす質量感のある轟音音質も申し分ない。
ザラザラジャージャーと金属質に軋んだギターのノイジーさはトレモロのノスタルジーさをより鋭利なものとしているし、硬く抜けの良い炸裂感と低音が腹に響くような骨太感を持ち合せたドラムも実に気持ちが良い。
この音楽性には完璧な音作りと言えるだろう。


というわけで、激情メロディが素晴らし過ぎるポストブラックメタルの好盤。
1stも良かったが、より儚さ切なさといった感傷的な色味が濃い今作の方が個人的には好み。
自分の軸を確固としながら、より叙情性に磨きをかけその音楽性を深化させることに成功しており、実に頼もしい。
是非この路線で突き進んでもらいたい。
一番音楽性が似たバンドはやはりDeafheavenWoeVestigesあたりだろう。
ブラックメタル的暗黒主義を脱した激情トレモロへの執着っぷりは、Kralliceにも通じている。
また節々でWolves In The Throne Roomのような雰囲気も垣間見える。
そう言ったバンドが好みであったり、あるいはアンビエント/ディプレ路線でない激烈シューゲイザー・ブラックが好きであれば、きっと楽しめるだろう。
もちろん前作が好きなら今作も必聴だし、その逆もまた然り。
いまや群雄割拠(そうでもないか?w)の新世代系ブラックの中でも非常にエネルギッシュな作品だと思うので、新しモノ好き、エモエモ好きの方は是非お試しあれ。


【お気に入り】
#5[Why Am I So Lovely? Because My Master Washes Me]:タイトルは電波だけど、出だしのトレモロで既に瀕死となる悶絶曲。
【オフィシャルサイト】
http://bdn.greymetal.com/:本作のサンプル他、2枚のデモ音源がDLできる。