Transylvania:「Ravage Total」


カナダ産ディプレッシブ/ポストブラックメタル、2008年デモ。200枚限定プロCDR。
儚く物悲しげなプリミティブ気味ディプレッシブブラックにデカダンな美と切ない嘆きを孕んだロックギターが絡む新世代系鬱ブラック。
非常に斬新なスタイルでありながら全く嘘臭くなっておらず、ブラックメタルとして非常に洗練されている。
個人的2008年ベスト・オブ・ブラックメタル第二位受賞作。


儚く物悲しげな憂鬱メロを奏でるトレモロ、ジャッジャジャッジャといった刻みリフを基本としたミドルテンポ主体のRawなディプレッシブブラックメタル。
なにより耳を惹くのはアルバム全編に配された爽やかかつ美しい哀メロを聴かせる臭い(クサいでなく臭い)ロック的リフ、及びソロ。退廃的な美を感じさせつつ、明るいとすら表現できそうなほどに爽やか、それでいて堪え切れない悲しみを強烈に訴えてくる切なすぎるメロディは素晴らしいの一言。
イントロの#1なんかは、満天の星空のもと、嗚咽をこらえずはらはらと涙を流しながらオーロラを見上げているような、そんなメロディ。
涙に濡れているかのような湿り気を帯びたアコギなども交え、アルバム全編にどうしようもない悲壮感と物悲しさが滲み出ている


ヴォーカルは腹の底から絶望を吐き出すような鬱系ガナリ咆哮。怨みがましく嘆き苦しむ地獄の絶叫が楽曲の悲壮感に拍車をかけている。


楽曲はゆったり〜軽快なミドルテンポ主体であるがところどころ疾走もかましており、最大風速はそれほどでもないもののメリハリが効いているため非常に心地よし。
どの曲も極めて素晴らしい仕上がりだが、とくに#3の4分過ぎからの鬱積した感情を爆発させるかのように畳みかける荘厳疾走パートは圧巻。


というわけで、ゴシックロックなメロディセンスが光るハイセンスブラックメタル
Amesoeursあたりのポストロック系ブラックなんかが好みであれば気に入るであろう。
2本のギターが紡ぎだす哀切メロがいちいち素晴らしく、またベースも絶妙の存在感。表情豊かに楽曲を盛り上げるドラムもお見事。
多少薄っぺらであるが適度にRawでチープな音質もあいまって、アルバム中に充満する儚く物悲しい湿った空気に胸が締め付けられる
切ない気分に浸れるお涙頂戴系の名盤。超絶オススメ。


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