Lifelover:「Erotik」


命を愛するスウェーデン産、陰鬱アヴァンギャルド・ブラックメタル/ディプレッシブ・ロック、2007年2nd
ブラックメタルとロックサウンドの融合という今注目のテーゼの最前線にいるバンド。2005年結成以降着実に高品質な音源をリリースしている進化型ブラックメタル期待の超新星


ロック的ダイナミズムを感じさせるドラム、重くディストーションのかけられたジャギジャギギターによるグルーブ感のあるリフ、ハーシュ/クリーンギターその他による儚く幽玄でロマンチックなシューゲイズ的フレーズ・その優しいようで冷たい感触、ひたすら寂しく物憂げなピアノ。Shiningのような鬱ブラックをベースに、そうしたおよそ類型的なブラックメタルとはかけ離れた方法論を大胆に取り入れ陰惨な狂気を内包したメランコリズム溢れる頽廃的な絶望サウンドが展開されているノルウェーJoylessを鬱・自殺ブラックにした感じとでも言えばいいか。癒しと鬱がごった煮されたような独特の毒がある。
前作に比べ鬱っ気が増したと同時によりモダン/ロック色が強くなったように感じられるが、琴線に触れる切なすぎるメロディは今作でも健在。


また今作では気だるいクリーンボイスがさらに大幅導入されており、吠えるようなデスボイスはほとんど聴かれなくなった。溜め息交じりに孤独を吐露する呟き声はCorey TaylorSlipknot似の美声だ。そして何かを訴えかけるような叫び声や気が触れたかのように泣き叫ぶ絶叫の悲痛さは、鬱っ気たっぷりの音楽性にばっちりハマっている。


鬱に沈んだ心に鋭く切り込むピアノの美しく繊細な旋律や悲嘆にくれる叙情的なトレモロの切れ味は界隈随一。また前作同様、明るかったり暗かったりいろいろなSE(ょぅι゛ょの歌やセリフ、嘔吐にクラップ、ハーモニカetc...)がカオティックに交錯することもあり、均衡を失った精神というか、壊れたような感覚が強烈で、背筋がゾクリとする不気味なグロテスクさを醸し出している。このへんのセンスの良さにはホントに脱帽する。


音質は非常にクリアでしっかりとしたもの。
どの曲もいいが、キラーチューンは#3#4#6#9#11あたりだろうか。#5のリフも非常にかっこいい。ネガティブな雰囲気とポジティブな音が絶妙に混じり合ったシューゲイズっぽい#8#9#11Neige系に似た雰囲気で激しくツボ。SEはかなりカオスいけど(笑)


というわけで、現代社会の闇をえぐりだす問題作」なんて言葉がしっくりくるような、次世代型ブラックメタル「これを聴かずに現代ブラックメタルは語れない」
自分の貧相な語彙ではとても表現しつくせないが本当に個性豊かで、その徹底された唯一無二の世界観の完成度は極めて高い。孤独や寂しさを描き出す鋭すぎる感性は芸術的とすら言える、というのも大げさでなないだろう。ブックレットなんかを見ても、そうしたハイセンスぶりが伺える。
残念ながら、とびきりセンチメンタルだったM/S Salmonella級の名曲はなく、また今作は少し鬱に傾き過ぎな気もするので、まだ未聴の人には前作をお勧めする。もちろん前作を気に入った人なら今作もツボにハマること間違いなし。
褒めることが前提のこのブログにおいてなお大プッシュしたい、Neige関連と並んでいま最も熱いバンド。Great!!!


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