Lifelover:[Dekadens]


スウェーデン産、命を愛する自殺系ブラックメタル/ディプレッシブロック、2009年EP
7曲26分強。
3rd[Konkurs]はディプレッシブに寄り過ぎていてあまり好みではなかったが、今作は1st2ndのスタイルを踏襲したロック色の強い内容であり、数多の変態ブラックの中でも一際異彩を放つLifeloverワールドが堪能できる


圧迫されるような質量感のあるジャリジャリバキバキディストーションギターが奏でる、ジクジクとリストカッティングな陰湿ディプレリフ/トレモロ都会的孤独感・絶望観を感じさせる力強いロック調根暗リフ嘆き悲しむような高音で奏でられる涙腺刺激の儚げトレモロアルペジオ悲しく寂しげに奏でられる美しく綺麗なピアノ暗く物静かに沈んだ、しかし優しげなアコギ苦痛に悲痛に悲愴に悲惨に歪んだ感情剥き出しの生々しい泣き絶叫などなどが絡む相変わらずのアヴァンギャルドな作風。
前述したように前作3rdに比べアップテンポのオシャレ感漂う曲が増え、またリフのロック色も強くなり、総じて1st2nd(とくに2nd)を彷彿とさせる。
非常にLifeloverらしい不気味に陽気な明るさとジメっとした陰鬱感が倒錯的に入り混じった個性的な楽曲ばかりであり、ネチネチと陰鬱で感傷的な世界観にどっぷり飲み込まれてしまう
特にまんまポストロックな#4[Lethargy]envyの静寂パートっぽい#6[Visdomsord]、感情の浮き沈みの激しい#7[Destination: Ingenstans]など、昨今のポストロック/シューゲイズ系に通ずる淡い儚さや切ない癒しを備えた楽曲が実に美味しく、圧倒的な絶望と儚い希望がない混ぜになった明るくも暗いLifelover流現代ブラックメタルが楽しめる。
そしてやはり、泣き言を洩らしながらどうしようもない絶望感・倦怠感・その他諸々のネガティブな感情を溜め息交じりに吐き出す苦悶の泣き絶叫ヴォーカルが素晴らし過ぎる。音楽に載せる歌としてではなく、場末の酒場で飲んだくれた若者のウィスキー片手に潰れる間際の愚痴をそのまま収録しているような、凄まじく生々しい人間臭さがあり、感情の込もり方はブラックメタル界随一。さらに弱音ノーマルヴォイスや金切悲鳴、掠れた吐息など前作までに見られた多彩な声色に加えて、#4#5[Androider]ではポストロック系のウィスパーじみたマターリノーマルヴォイスも用いられており、表現力により一層の磨きがかかっている。


というわけで、これぞLifeloverと言ってしまいたい、Lifeloverでしか味わえない魅力に満ちた一枚。
EPということでボリュームこそ少ないが、中身はかなり濃い。全編心に痛烈に響くメロディで満ちている。捨て曲など一切無し。
ポストロック成分が増量した半面、ゴシカルな色気を挿していたピアノや魑魅魍魎のSEの類は減少しているが、しかしこの圧倒的な世界観は全く揺るぐことがない。むしろ雑多な要素のごちゃ混ぜ感を多彩なヴォーカルワークで補っている感があり、またピアノも要所要所で良いアクセントとなり、結果としてすっきりとまとまった非常に良いバランスの楽曲作りがなされていると言えるだろう。
前作までのLifeloverワールドが好きだった人、とくに1st2ndこそ真髄という人はマストバイ!
やはりとんでもねぇバンドだ、惚れ直したぜLifelover!!!


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