With the End in Mind:[Thresholder]


アメリカはワシントンのポスト・アトモスフェリック・ブラックメタル、2013年2作目EP。4曲40分半。
ロールシャッハテストみたいなジャケが印象的な前作EPとともにデジタルアルバムがBandcampにてNYP公開されていたが、2014年に自主制作100本限定手書きナンバリング入りテープとして再リリースされた。
自分はデジタル盤を既にDL済みだったが、内容が素晴らしいのとボートラ目当てということでテープも購入した。
テープ版は黒い厚紙に歌詞カードが張り付けられ、一面に金粉が塗りたくられた(ジャケの絵柄は金粉で描かれている)DIY感溢れるインサートが何とも豪奢でテンション上がる。
また本編3曲26分弱に加えてボーナストラックとしてライブ曲が収録されている。


アコギによるしっとりと落ち着いたパートも絡めつつ、バコバコと荒々しく叩き込まれるブラストから重々しくドゥーミーな展開も織り交ぜた、ド直球にカスカディアンな神秘的かつ幻想的で厳粛なリフ・トレモロを纏った情景描写型アトモスフェリック・ブラックメタル
時折顔を見せる仄かに琴線刺激な面持ちのトレモロにはシューゲイザー・ブラックの影響も垣間見え、また緩急静動を駆使した楽曲構成にはポストロック的なダイナミズムを見て取ることが出来るが、そういったクロスオーバー的アプローチは決してあざとくならない絶妙な塩梅での起用となっている。
素朴だが力強く厳かで、自然的な温かみも感じさせる作風はSkagos1stそっくりであり、まさしくトゥルー・カスカディアとでも呼びたい質実剛健サウンドで大変素晴らしい。
また#1[I. Thresholder]中盤のアコギパートでは幽玄で虚ろなFemaleヴォーカルを用いたり、#3[II. True Weight of the Things We Must Carry]ラストのアコギパートでは尺八染みたアダルティな笛がムードたっぷりに寂しげなメロディを奏でたりなど、寂寥感を煽る展開が楽曲をグッと引き締めているのもナイスだ。
なお本編は3曲だが#2[The Pantheon Arches in All Directions; Endless]はインストであり、ブラックメタル曲は実質2曲となっている。


テープ版について言及しておくと、ボーナストラック#4[Live recording of the solo performance at Yule Celebration MMXIII in Olympia, WA]はメタル曲のライブ音源だと思いきや、シンセサイザーとギターによる展開や起伏を極限まで削ぎ落とした16分弱にも及ぶアンビエント/ノイズ・チューンとなっており、正直自分にとっては退屈極まりなかった次第(笑)
またこれは自分がたまたま不運だったのかもしれないが、テープが伸びてしまっていて音質がヨレヨレであり、聴くに堪えない仕上がりとなっており非常に残念。


というわけで、テープ化はアレだったかもしれないが、内容自体は実に素晴らしいポストWolves in the Throne Roome世代の快作だ!
わかりやすくキャッチーなポスト・ブラック的方法論に頼ることなく、実直かつ真摯にポスト・アトモスフェリック系のサウンドを体現している点が好感触。
こういった表現は先日紹介したSun Worshipにも当てはまるが、あちらは旧き良き北欧ブラックメタルへの憧憬が感じられるのに対し、このWTEIMはよりUSカスカディア系に焦点を絞った、教科書通りの真性カスカディアって感じがして大変ツボだ。
打率というか、全体的にレベルの高いカスカディア系と比しても全然見劣りしないし、WITTR(特に1st2nd)やSkagos1stAldaEncircling SeaFauna3rdVelnias2ndあたりが好きなら問答無用でマストだ!
しかし前述のとおりボーナストラックはブラックメタルでも何でもない曲だし、音質に関しても(自分のテープだけって可能性もあるけど)ケチがつくので、コレクター的意図が無い限りBandcampでデジタル音源を購入すれば十分だろう。
ただ、このままフルレンス出したら絶対素晴らしい作品になると思うので、バンドを支援する意味でもテープ買ってあげて!と思わなくもない(笑)


【お気に入り】
#1[I. Thresholder]:ザ・カスカディア!
【Bandcamp】
http://withtheendinmind.bandcamp.com/



しかし、この手のバンドって「W」から始まる長名バンド多いよね。
略称並べると偉大なるマイロードWITTRに始まり、このWTEIMWBSSTWOAM、先日紹介したWITEとか、もうちょっと音楽性広げるとWWWWSSAMSとか、ちょっと前にはWOTWなんてのもいたよね。
あとは一単語二単語でもWakeWaldgeflüsterWędrujący WiatrWendessWhite OakWild's ReprisalWiloosとか。
今、頭文字Wが熱い!