Wildernessking:The Writing of Gods in the Sand


なんと完全不意打ちの南アフリカ産、新世代系メロディックブラックメタル、2012年1st。7曲47分。
アメリカのAntithetic Recordsよりデジパックでリリース。
以前はHeathensという名前でブラッケンロールみたいなことをやっていたようだ。


南アフリカという完全ノーマークの盲点から颯爽と登場した激情系ポストメロディックブラックメタルの大型新人による会心作!】


ダイナミックかつ炸裂感のあるドラムがオサレなミドル〜アップテンポから爆走ブラストまでノリ良くかつ激しく叩き込み、ジャキジャキジャージャーと鋭利に歪んだノイズ・ギターが琴線刺激の激情系トレモロ/シューゲブラック的ノスタルジック・トレモロ/ザクザクダカダカ切れ味鋭い切り刻みリフ/ブラックメタル的深淵リフ/ポストメタル風轟音リフ等をエモーショナルに掻き鳴らし、柔らかな音色や甘い残響を響かせるクリーン・ギターによるポストロックなフレーズ/涙腺直撃のノスタルジック・トレモロ、大人っぽいムード漂う哀愁ロックフレーズ、アトモスフェリックなシンセによる神秘的・空間的メロディ、美しくかつ寂しげに奏でられるピアノ等がメランコリックな装飾を絶妙に施し、ギャァギャァ獰猛な高音喚きヴォーカルが噛みつくようにブチキレ絶叫を張り上げる。


感触としては紛れもなく昨今流行りの新世代系であるが、シューゲ・ブラックなどに共通の儚げでナヨナヨした繊細さやジメジメと耽美に憂鬱を紡ぐ内向性は微塵も感じられず、あくまでブラックメタル然りとしたアグレッシブなスタイル。
ブラックメタルのメタル的な意味でのブルータルさ、伝統的ブラックメタル所縁の荘厳さ、残虐な絶叫ヴォーカルなどを残したまま、悪魔的宗教的冒涜的イメージをきれいさっぱり廃棄しつつ、メランコリックさや衝動的エモーションを突き詰めたといった感じだろうか。
ブラックメタル要素が露骨に幅を利かせていながらブラックメタルを逸脱していないという絶妙のさじ加減が素晴らしい。
またバンド名や個性的なアルバムジャケットに表されているようにバンドのテーマとして自然を掲げているらしく、確かにところどころで新世代自然崇拝系筆頭であるWolves In The Throne Roomに通ずる神秘的・幻想的な雰囲気を感じ取ることが出来る。


というわけで、21世紀型ブラックメタルとして非常にクオリティの高い、インパクトのある一枚。
古典的ブラックメタルからしたらかなりオサレでスタイリッシュ、かといって行き過ぎたシューゲ系に比べるとまっとうにブラックメタルといったバランス感覚が個人的には大変ツボにハマった次第。
とにかくエモーショナルかつブルータルで緩急を駆使した雰囲気作りも申し分なく、煽情力抜群。
激情ポストハードコア系ということで、DeafheavenWoeVestigesや、もっとブラックメタル寄りのWinterusあたりの新世代系バンドが好みであれば間違いなく興奮できるだろう。
あまりにメタル離れされるとどうしても受け付けないと言う人でも、これは楽しめるのではなかろうか。
新世代系を好む人は得てして新鮮な感動や独創性を求めているものと思われるが、このバンドはメロディックブラックメタルの範疇を離脱することをギリギリ踏みとどまりつつその期待に十分応えてくれているように思う。
粗製乱造されるぶっちゃけブラックメタルでも何でもない新世代系に食傷気味の方にこそ聴いていただきたい一押しの一枚。
Bandcampでデジタルアルバムを$5という破格の値段で買うことが出来るので興味をもたれた方は是非ご賞味あれ。


【お気に入り】
#1[Rubicon (The Fleeting Vessel)]:開始数秒で完膚なきまでにKO。
Facebook
http://www.facebook.com/Wildernessking
【Bandcamp】
http://wildernessking.bandcamp.com/
南アフリカのメタルシーンて寡聞にしてまったく知らないんですが、ここまで突き抜けたバンドが出てきたのは衝撃ですね。
言ったら南米系みたいな暑苦しいバンドかSinghasariみたいなエスニック極まりない怪しげな作風が出てきそう、というかそもそもメタル文化がどれほど浸透しているのかも分かりませんが、白人の多い国だし、最近流行りのスタイルのバンドが出てきてもおかしくないんですかね。
今後ウクライナみたいな、辺境ブラックメタルの大量輸出国になったりすると面白いですね。
ぜひ頑張ってもらいたいところです。