Addaura:Burning for the Ancient


アメリカはシアトル発、カスカディアン・ブラックメタル期待のホープ、満を持してリリースされた待望の2012年1st。4曲52分。
Aldaの元メンバー、ライブサポートメンバーが関わっている。
iTunesAmazonでのMP3先行リリース。
(2012.03.20追記)
Kreation Recordsから500枚限定でLPがリリースされた。
100枚は小さめポスター付きの紫スプラッター盤、400枚は黒盤。
自分は紫盤をゲット。


【ついにそのベールを脱いだカスカディアン・ブラックメタルの寵児による乾坤一擲の超会心作!!そのあまりの殺傷力に、腰が抜け度肝を抜かれ目玉が飛び出すこと請け合いのファンタスティックな一枚!】


Wolves In The Throne Roomからの流れをくむUS自然崇拝系ブラックメタル
荒々しいドラムが適度にミドルパート交えてダイナミックに緩急をつけながらもブラスト中心にドカドカ爆走し、ノイジーな刺々しさと共にじんわりとオーガニックな温かみを感じさせる空間的ギターが、大自然を湛えるような神々しくも芳醇な神秘的・叙情的メロディの中に儚く切ないシューゲイザー・ブラック的ノスタルジーを強烈に滲ませた琴線強襲トレモロを掻き鳴らし、ボーボーズンズン重く響くベースとうっすら被さるアトモスフェリックかつ玄妙なシンセが深淵で濃密な空間を構築し、迸る感情を抑えることが出来ずただただ魂の底から慟哭の激情を力の限りに絞り出し吐き出しているかのような凄絶極まりない発狂ヴォーカルがギャアアアアグウォオオオギエエエエエと凄まじい絶叫を張り上げまくる。
フォーキーなアコギやトライバルな原始的パーカッションなども用いられる。


圧倒的ギターサウンドの壁が空間を埋め尽くし、深淵で霞みがかったアトモスフェリックなフレーズのリフレインと大胆な緩急の対比によって全曲10分超の長尺かつドラマチックな楽曲が構築されてはいるものの、WITTRのようにアンビエント的な方法論も用いた幽玄な情景描写を重視した作風とは異なり、基本はブルータルな激烈メロディックブラックメタル・スタイル。


とにかくメロディの破壊力がズバ抜けて素晴らしく、WITTRの持つ神秘と幻想に満ちた叙情性を目一杯に、これでもかと強調したような鬼メロウっぷりがキツく胸を締め付けてやまない。
朴訥としたネイチャーなニュアンスのメロディにはシューゲイザー風味の郷愁哀愁とともに、慄然と、屹然とした、身を切るような凛々しさが感じられ、柔らかな優しさと張りつめたシリアスさとの絶妙な混在具合には舌を巻くばかり。
さらに#2[The Muses Thro' Their Bowers]#3[The Baring Admission of Weakness]に顕著だが、ブラックメタル古来の悪魔崇拝やら黒魔術といったおどろおどろしい邪悪さは微塵も感じさせないのに、そのフレーズ、というかメロディの造形にはそれこそ初期ノルウェーブラックから通ずるブラックメタルの様式を感じることが出来るのだから堪らない。
特筆すべきは#1[City Light (In Still Dark Forenoon Silence)]5分過ぎから聴かれるクサいとすら言える激メロ。もうどうしようもない悲壮感絶望感を抱えながら、それでも尚歯を食いしばって精一杯生きていく生命の強さや明日への希望が感じられる、儚さと切なさと力強さを誇らしく主張した、なんというか「涙の数だけ強くなれるよ」的トレモロといった様相であり感涙を禁じえない。


また全編にわたって超絶ハイテンションで凄まじく感情剥き出しの絶叫を張り上げ続けているヴォーカルも実に素晴らしい。
ディプレッシブ系に通ずる発狂交じりの高音ガナリだが、まさに腹の底から絞り出すという表現がしっくりくる、全身全霊をかけて叫ぶ様には心臓を鷲掴みにされてしまう。
このヴォーカルワークがバンドサウンドの持つどうしようもないエモーションを何倍にも効果的にしているのは間違いないだろう。
しかしこのパワフル極まりないヴォーカル、ライブ動画を見たところなんと女性!
ちょっと太ましいものの、声を聴く限りではとてもじゃないが想像つかないうら若き眼鏡っ子であり、いやはや、萌えますね(笑)
#4[Solace Beneath a Greying Sky]クライマックスではその強烈なデスヴォイスに重ねて妖艶なファルセットも披露しており、神秘的な世界観の良い演出になっている。


というわけで、カスカディアン・ブラックメタルは軒並み素晴らしいバンドがひしめいているように感じるが、とんでもない新人バンドが出てきちゃったなと感じさせる恐るべき一枚。
似たようなことをAlda2ndの紹介でも述べたような気がするが、あちらはよりカスカディアン・ブラックメタルの持つ自然的側面を強調した、フォーキーで純朴な路線を追求しているのに対し、こちらはその神秘性や激情性を追及しているイメージ。
どちらも悪魔崇拝を脱却したカスカディアン・ブラックメタルらしいカスカディアン・ブラックメタルをプレイしていることに違いはないが、やはりこのAddauraはよりブラックメタル色が強いように思う。
そういった意味ではあそこまで鬱屈とした雰囲気ではないもののAsh BorerFell Voicesにも通ずるかもしれず、より一般的な意味で広くブラックメタラーに勧めることが出来るだろう。
というわけで、WITTRAldaなどのカスカディア系が好きなら問答無用で必聴、そうでなくともSkagosPanopticonPetrychorといったカスカディア一派よりはメロディックブラック然りとしたスタイルなので是非聴いてみていただきたい。
なお、本作はKreation Recordsから3/8(木)にレコードがリリースされる予定であり、さらにアメリWall of Dogsからテープが、そして零次元スプにも参加していた厄鬼の中の人Vhanさん主宰の韓国Mithansropic Art ProductionsからCDがリリースされる予定である。
MAPからは現在Sold Outとなっている2010年デモのCD再発も検討されているようだ。
僕自身その全てを手中に収めようと画策している(笑)が、それはさておき、本当に素晴らしい内容だと思うので、興味をもたれた方はどれか一つでもお試しいただくことを強くオススメする次第。


(2012.03.20追記)
紫盤かっけぇ。


【お気に入り】
#1[City Light (In Still Dark Forenoon Silence)]:ドラマティックな#4も捨て難いけど、やっぱり瞬間最大風力がハンパないこっちがベストかな。終盤の美し過ぎるミドルパートに失禁。
【オフィシャルブログ】
http://addauranw.blogspot.com/
Facebook
http://www.facebook.com/pages/Addaura/117676111578266
MySpace
http://www.myspace.com/addaura
ちなみに、2010年デモがどこかに転がっているのを発見した方は、大和TROLLが言い値で買い取るので確保した上ご一報いただくようお願いしたい。


#4[Solace Beneath a Greying Sky]