Pergale:Horizontalios Maldos Palaima


リトアニア産、アヴァンギャルドブラックメタル、2011年1st。7曲41分。
Inferna Profundus Recordsよりリリース。
限定デジパックもあるようだがジュエルケース盤をゲット。


【欲望と孤独渦巻く現代都市も心安らぐ牧歌的農村もごった混ぜにして、儚く切ない叙情と汚れ無き純粋な情緒と小悪魔的遊び心が入り乱れる、陽性変態アヴァンギャルドブラックメタル!!】


ハキハキとタイトなドラムがたまにガシャシャシャとブラストも交えながらロックなノリで軽快なビートを刻み、ジリジリジャワジャワとノイジーさが耳に心地よいギターが、明るく爽やかでありながら都会的鬱ロックな湿り気とシューゲ系ノスタルジーが滲み出る儚くも切ない涙腺刺激のトレモロ/バッキング・リフ、寒々しくメロウな男臭くノリの良いロックンロールなリフ、悶えるような哀愁が発散される寒々しくもメロウなトレモロ、ロックな哀愁漂うソロ等を掻き鳴らし、ビコビコと良く聴こえるベースが、ズンタッズンタッ舞踏曲染みたダンサブルなフレーズや耳を惹く温かみとメロウさの感じられるメロディを随所に絶妙に絡めながらモダンなラインをグリグリとなぞり、凛と澄んだ音色のピアノ/甘く丸い音色のチープなキーボードが、明るくも切なく郷愁を誘う飛翔感・昂揚感のあるメロディ、のどかで牧歌的だが強烈に胸を掻き毟り熱い涙を誘うフォーキーな悶絶クサメロディなどをポロロンポロンと軽やかに跳ねまわるようにイキイキと奏でる。
ヴォーカルはブラックメタルらしいヒステリックな喚き高音ガナリ絶叫をベースに、ディプレ系の悲鳴絶叫や東欧っぽくリキんだ濁声ガナリ等を駆使して楽曲の異妖を盛り上げている。
荘厳なファ〜ファ〜シンセやアコギ、アコーディオンといった楽器も適宜絡む。


自称ディプレッシブ・ブラックンロールということだが、とにもかくにも一筋縄ではいかない個性的なサウンド
この作品を購入したユニオンでは似たバンドとしてLifeloverが挙げられていたが、確かに綺麗なピアノが絡む都会的ロック感の強い鬱ブラックメタルという基本は共通しているものの、Lifeloverのようにジメジメグチグチと根暗なわけではなく、どちらかというと不気味なほどに明るく陽気。
昨今のポストブラックで見られるモダンな鬱っ気をスパイスに儚さや切なさを強調して、かつ明るさや陽気さが生きているようなイメージ。
全く邪気や陰鬱さのかけらも感じられないピアノもLifeloverというよりは、むしろ躍動感や高揚感を喚起する美しく透き通ったメロディという点で夢中夢に近いように感じられる。
ほんのりとJoylessに通ずるサイケな酩酊感もあるか。


また楽曲展開に一癖も二癖もあり、儚げブラック/ロックに基本を据えつつも、アコーディオン交えたおちゃらけ二日酔いフォークパート、オサレにスイングするジャズパート、しっとりアコギ絡めたペイガンパートなど多様な顔色を使い分けている。
節操もなくチグハグにシーンをスイッチングする様はキチガイ染みているものの、その実きっちりと世界観を構築する計算高さも感じさせ、でもやっぱり頭おかしいよねといった雰囲気であり、その異妖は最近のPeste Noireを彷彿とさせる。
あそこまでネジぶっ飛んでないけど、ベクトルは近いと思う。
あるいは悪ふざけという意味ではTrollfestだろうか(焚き火を囲んで酒を飲みながらアコギ弾いてオ〜オ〜歌う#6[Horizontalios Maldos Palaima (The Felicity of Horizontal Praying)]終盤とか)。
#4[Viešnamio Harmonija (The Whorehouse Harmony)]「ボンソワール、マダム?コモンサワ〜ム?ア〜ン、トレトレビア〜ン」をはじめとした奇妙なセリフ回しや「ぶちゅ〜〜〜〜」というキスSE(ポマードたっぷりのオカマ♂)といった遊び心も満載。


しかしなんといってもこのバンドはメロディセンスが素晴し過ぎる。
やはり真っ先に耳を惹くのはピアノ/キーボ。
#3[Sado Mazo Vokietija (Sado Mazo Germany)]なんて史上最高牧歌ヴァイキングMenosgadaを彷彿とさせる、NHKみんなの歌かと見紛うほどの純朴メルヘンメロディの殺傷力たるや、もはや残酷なほどに痛烈で、「みんなで仲良く輪になって踊ろうよ、ヘイ!(しかし満面の笑みでガッツポーズ)」みたいな、幼少の頃を思い出して癒しと切なさにつつまれつつ魂が鼓舞されるような、なんとも言えない郷愁と熱い魂の鼓動に胸がいっぱいになってしまう。
#6ではフォーキーなメロディに沿って女性含むメンバー全員でオーオーオーオーオーオオ〜と合唱したり
そうした「ブラックメタルらしくなさ」がこのバンド最大の武器であるならば、反面ブラックメタルとしてのメロディセンスもピカイチなところがこのバンドの隠し刀といったところだろうか。
#4#6など、邪悪さや陰鬱さとは違うが昨今の儚げブラックの色濃いブラックメタル特有の寒々しくメロウなトレモロ等は鳥肌ものだ。
シューゲイザー・ブラック的ノスタルジーもきゅうっと胸を締め付けてくる。
またベースもリズム楽器半分メロディ楽器半分といった様相で、非常に歌心のあるラインを紡いでいる。
こうした様々なメロディの多重奏がこのバンドの肝であろう。


というわけで、これはなかなかどうして変態ブラックメタルの名作だ。
比較対象としてLifeloverJoylessPeste Noire夢中夢といったバンド名を挙げてきたが、その全容を見た場合同じようなスタイルのバンドとして最もふさわしいのはDekadent Aesthetixかもしれない。
落ち着きの無いごった煮感や、モダンな感性とブラックメタルらしさのバランス感はまさにDxAxのそれ。
さしずめ陰のDekadent Aesthetix、陽のPergaleといったところか。
そんな感じで、上述したような変わり種ブラックメタルが好きな人なら間違いなく楽しめるであろう、まさに変態紳士御用達的逸材
今年トップクラスにオススメの一枚!


【お気に入り】
#2[The Addiction Song]
MySpace
http://www.myspace.com/pergale


この曲も素晴らしいンド貼ってておく。#3[Sado Mazo Vokietija (Sado Mazo Germany)]>

なお、#7[Sado Mazo Vokietija (McKaras Remix)]#3[Sado Mazo Vokietija (Sado Mazo Germany)]のテクノリミックスであり、これがなかなか面白くて、バンドの懐の広さをうかがわせる。