Aorlhac:La Cité des Vents


フランス産、ペイガン・ブラックメタル、2010年3rd。9曲53分強。
我が国の誇りたるArkha Svaもお世話になっているThose Opposed Recordsよりリリース。


【ウルトラメロディック大吟醸!悶絶失禁ガッツポーズ式・激クサメランコリック&ハイテンション疾走・ゴキゲンヒロイック・ブラックメタル!!】


落ち着いたミドルテンポから早馬が駆けるような躍動感のあるツタツタ2ビート、込み上げる衝動に身を任せたかの如きブラスト爆走まで巧みに駆使する疾走感抜群のドラムがヤケクソに前へ前へと突進し、プリミティブな荒涼感を残しつつ叙情的な湿り気を帯びたギターが、フランス的叙情に濡れまくったロマンティックとすら言えるほど哀しくも美しい慟哭メロウ・リフ/トレモロ、魂を鼓舞する勇壮さと胸を掻き毟る悲壮感、そして咽び泣くような哀愁がジャジャ漏れの激クサ悶絶ガッツポーズ・ペイガン・リフ/トレモロ、母なる大自然への敬意と民族の誇り、戦士の決意を滲ませた明るいとすら言えるほどヒロイックなペイガン・リフ/トレモロを掻き毟り、要所要所でしっとりと英雄譚を紡ぐようなアコギや孤高感漂うヴァイオリンが叙事的な色味を射し込み、喉を引き千切らんばかりに超絶ハイテンションの悲鳴混じりブラッキー・ヴォーカルがなりふり構わず必死の形相でギャァギャァキョエエエエと捲し立てるように喚きガナリ絶叫しまくる。
ウォ〜ウォ〜漢コーラス等も適宜絡む。


クサい。とにもかくにもやたらめったらにクサい疾走ペイガン・ブラック。
基本的に1st2ndと同様のスタイルだが、今作ではサウンドの根幹をメロディック・ブラックに据えながらも、さらにペイガン/ヴァイキング路線へと舵を切って来たような印象を受ける。
男に生まれたなら黙って聴いてはいられない熱血感と血沸き肉躍る勇ましさに満ちた哀愁メロディの応酬が胸を掻き毟り涙腺を刺激しまくることこの上ない。
ヒロイックを突き詰めた揚句メロスピに通ずるほど明るくなってしまったような勇壮さに大自然への崇敬を滲ませた壮大かつ誉れ高いメロディは、同郷ペイガン・ブラックの伝説的大先輩Heathen Dawnを否が応でも彷彿とさせる。
#5[Sant Flor, la cité des vents]#6[Vers les honneurs]などはノルウェーが産んだ伝説Windirを思わせるほどの悲哀メロディに胸が詰まる思いだ。


またこのAorlhacは、悲哀に満ちたメロディセンスの卓越ぶりも凄まじいが、緩急、押し引きのリズム捌きが絶品であることも特筆すべきであろう。
身悶えるようなミドルパートやしっとりしたアコギパートでタメにタメたあげく、雪崩れ込むようにクサメロ爆走へと突っ込むカタルシスは筆舌に尽くしがたい。
衝動的な疾走爆走が発散するなりふり構わない前のめりなヤケッパチ感も爽快の一言に尽きる。
山谷のストーリーを設けてアルバム一枚で一つの物語を描くようなドラマティックさではないものの、一曲一曲の中で展開を設けながら全編クライマックスと感じられるほどの猛烈ハイテンションを徹頭徹尾貫いた結果生まれるドラマティックさがある。
アルバム全編通して一瞬たりとも緊張感がほどけない。
さらにこれはなかなか文章で伝えるのは難しいのだが、インパクト絶大なギターリフやドラムフレーズはしかし細やかな趣向が凝らされており、実に多彩なフックが盛り込まれているため、メロディ以外の点でも思わぬキャッチーさが発揮されている点も実に好感触。
#5#7[La comptine du drac]では非常にストレートにオールドスクール・ブラックなリフが炸裂してハッとされたりする。


2ndにはボーナスとしてUlverカバーが収録されていたが、本作には#9に彼のTaakeの名曲[Over Bjoergvin Graater Himmerik IV]のカバーが収録されている。
いやはや、さすがのAorlhacさん、わかってらっしゃる!
Taake2ndでカバーするならどう考えてもこの曲ですよね!
終盤のあの疾走パートへの繋ぎはやはり痺れます!
トゥルーなメロディック・ブラックにトラッドなニュアンスを練り込むメロディセンス、緩急のツボを抑えた疾走感抜群のリズム捌き、鬼気迫るヴォーカルと、Taakeとは共通する部分が多いだけに、実に的確なかっこ良いカバー曲となっている。


というわけで、非の打ちどころがない最高のメロディック・ペイガン・ブラックメタルの一大傑作。
身を切るほどの切なく苦しい哀愁と悲壮感に満ちた涙腺決壊も確実のメロディワーク、ヴォーカルであるにもかかわらず、聴いてるこっちは思わず涙目笑顔になってしまう、握り拳に涙ダクダクの笑顔が堪えきれない、そんな作品だ。
電車の中で聴いてても危うく笑顔でメロイックサイン掲げそうになる。
少なくともニヤリとしたり顔で頭フラフラさせてしまうことはもはや逃れようがない(笑)
前述のようにTaakeのカバーが収録されているが、フランスのTaakeと言ってしまえるぐらいにはレベルが高い。
ヴァイキング/ペイガン的なメロディック・ブラックとしては間違いなく特一級品だし、最近のフレンチ・ブラックとしても最高レベルと言ってしまって差し支えないだろう。
若手バンドらしいエネルギッシュさとブラックメタルへの造詣の深さが織りなすハイクオリティ・ブラックメタル
昨年聴いてなかったことが恥ずかしいほどの名作であり、未聴の方はなにがなんでもお聴きいただきたい!!


【お気に入り】
#3[Plérion]:クサメロ最高ランク、「クサッツ!!」襲名に値千金。
【レーベルサイト】
http://www.thoseopposedrecords.com/
MySpace
http://www.myspace.com/aorlhac


しかし、これほど力戦車さんにレビュー書いてもらいたい作品も無いな、ほんと。
力戦車さん的に言えば「クサッツ!!」Shadowlordさん的に言えば「ぶびっ、ぶびびびじょばあああああああああ」って感じか。