Fauna:Rain


アメリカ産、自然崇拝系アトモスフェリック・ブラックメタル、2006年1st。1曲63分強。
元はセルフリリースらしいが、2008年にAurora Borealisが再発したものをゲット。
真っ黒な厚紙で折られた薄っぺらい箱にCDが入れられていた。
Skagosのベーシストが参加している。


大自然への畏怖と敬意、身を焦がす激情を迸らせながら、儀式めいた幽玄かつ厳かな神秘性に身を包んだ真性カスカディアン・ブラックメタル!】


スタスタ抜けの良いスネアとバコバコドガドガ生々しいドラムが荒々しく躍動するようなブラストを苛烈に叩き込み、轟々と輪郭のぼやけた音塊と化しシューゲイザー的な意匠も感じさせる幽玄な雰囲気を醸し出す轟音ノイズギターが、神秘的かつエモーショナルな激情トレモロ、儚く切ない叙情を孕みながら凛とした強い感情を訴えかけてくる涙腺刺激のトレモロBurzumishな灰色メランコリーを感じさせるトレモロ等を掻き鳴らし、泣き喚いているような人間臭さの残る絶叫ヴォーカルが、なりふり構わず悲痛な叫び声を張り上げる。
節々で叙情的なアコギを伴った、ズーンズーンと重苦しくドゥーミー、かつアポカリプティックな神秘性漂うスロウパートが挟みこまれる。
しかし緩急の効いたドラマティックな展開というより、爆速突進パートと圧迫感のあるスロウパートそれぞれにボリュームを割きながら極端に対比し、場面の転換を目一杯ダイナミックにキメながら力強く展開していくようなスタイル。
またヴォーカルの出番は少なめであり、全体としてインストゥルメンタルのような聴き心地。


1曲63分という大作だが楽曲自体は大体4パートに分かれている。
最初の5:40ほどは静かに降り注ぐ雨音が延々と収録されているアンビエント?パート。雨粒が木の葉や草を打つような音やカサカサした音を微かに聴きとることが出来る。
続く17分はAgallochのようなネイチャーな情緒が強く感じられるアコギのインスト。しっとりと物憂げに奏でられるアルペジオから始まり、まったりした深みのあるクリーンボイスも絡めつつ、ジャンジャカジャカジャンと昂ぶる感情を押し殺しつつ、どことなく切なげに掻き鳴らされる力強いパートへと続く。クライマックスでは生命の喜びを慎ましやかに謳歌するような甘いメロディが絡み、オーガニックな温かみがジワジワ心に沁み入るような純朴だが美しく芯のあるメロディに癒されまくる。
そうしたアコースティックパートでじっくりたっぷり叙情を紡いだ後、雪崩れ込むように本編たる轟音ブラックメタル(前半13分、後半28分くらい)へと突入する。


やはりカスカディアン・ブラックに特徴的な生々しいサウンドが大変心地よい。
荒々しい疾走感を炸裂させるドラムの叩き出す骨肉感のあるフィジカルなビートは非常に強烈・爽快でカッコ良い。
そして圧倒的なほど質量感のある轟音の濁流が氾濫するように空間を埋め尽くすギターサウンドは、ブラックメタル然りとした耳を劈くディストーションというよりも、茫洋としたシューゲイザー的サイケな浮遊感に近く、ドリーミーとすら表現できるような独特の幽玄さが漂っている。
大自然的スケール感を感じさせるダイナミックな楽曲は、鬼気迫るような切迫感・駆り立てられるような逼迫感が張り詰めており、スロウパートでも緩まない緊張感あふれるスリリングさは息つく暇も与えない。
とにかくノイズ空間のなかで響きわたる、自然的情緒感と激情ハードコア的エモーション、そしてちょっとばかしのシューゲイザー的ノスタルジーを主張するメロディが激しく胸を打つ。
ここぞと言うところで繰り出される胸を掻き毟るような涙腺刺激トレモロは、しかし多くのシューゲブラックのようなナヨい甘酸っぱさやメランコリーを強調するあざとさといった趣が全く感じられず、決意を秘めたような澄んだシリアスさとブラックメタル的荘厳さ、ポストハードコア的激情性を内包しており、激しく胸を打つ。
また所々で現れる、Burzumの面影を残すリフが全く違和感を感じさせず楽曲に融け込んでいることからも、ブラックメタルとしての練度の高さが伺える。


というわけで、2006年作ではあるが、これまた最近猛威を奮うカスカディアン・ブラックメタル会心作。
2007年にリリースされている2ndも素晴らしい出来だが、あちらはよりドゥームな色味が強く、メロディにインパクトのあるこの1stの方がお気に入り。
やたらめったらな勢いと轟音空間で鳴り響く神秘と幻想に満ちた幽玄なメロディが素晴らしいことこの上ない。
Wolves in the Throne RoomSkagosPanopticonAsh BorerAltar of PlaguesPetrychorAgallochといったバンドが好きならきっと楽しめるだろう。
最近この手のバンドにハマりまくりな自分であるが、このFaunaはその中でも非常にブラックメタルとしての矜持が込められた音を徹底的かつストイックに聴かせてくれる点が好感触であり、そういった意味で上述したバンドの中ではWITRAsh Borerに一番近い印象を受ける。
轟音ノイズで塗りつぶす感触はPetrychorのファストパートにも通ずるように感じる。
また轟音サウンドがどことなく醸し出すサイケな浮遊感が頭一つ抜けて強い点も個性と言えるだろう。
カスカディア一派の例に漏れず音源の流通はあまり良くないものの、質の高さには目を見張るものがあるので、実際の所かな〜りオススメの一枚。


【お気に入り】
#1[Rain]:ベストチューンもくそもあったもんじゃないが(笑)49:15あたりからの疾走展開が死ぬほどかっこいい。
【オフィシャルサイト】
http://f-consortium.com/oneiria/:掘り進むとちょっとだけ試聴可能。
【レーベルサイト】
http://www.aurora-b.com/fauna.php



しかし、動画でアルバム丸々張ってしまうのは、我ながらどうなんだろうと思う。