Sigillum Diabolicum:Chroniques De L'infamie


フランス産、プリミティブ・ブラックメタル、2010年1st。7曲32分半。
Thor's Hammer Productionsより300枚限定でリリース。


【そこはかとない勇壮さとフランス的メランコリー、涙腺刺激の哀愁トレモロを伴ったRawな疾走感が癖になるフレンチ・メロディック・プリミティブ!】


軽くチープなポンコツドラムがドッタンドッタン・ミドルテンポからスコココと軽快なブラスト疾走まで絶妙に緩急を効かせてノリノリに疾駆し、チリチリジャージャーと薄っぺらく歪んだノイジーギターが、寒々しくメロウなトレモロ、フランス的哀愁を振りまくトレモロ、咽ぶような勇壮さも滲んだ明るく爽やかとすら言えそうな涙腺刺激のトレモロ、ダカダカとアグレッシブに刻まれるメタリックなリフを掻き鳴らし、トレモロの一音一音が聴き取れるモコモコしたベースがこれまたメロウなメロディラインを紡ぎ出し、ギエエギエエと邪悪なヴォーカルが熱くまくしたてるようにガナり散らしつつ、キシャアアアという爬虫類絶叫や、堰を切ったように泣きの入った人間臭く情けない高音絶叫を張り上げる。
柔らかく温かみのあるアコギのアルペジオが要所要所でしっとりとした叙情を紡いだりもする。


レトロで怪しげなジャケ、#1[Intro - ... sous le Feu Adent]冒頭の滑稽な戦争コメディーのようなフガフガしたSEからしPeste Noireのような独特の雰囲気を漂わせており、確かに熱に浮かされたようなヘロヘロヴォーカルの歌い回しや、ひねくれ気味の楽曲からはPeste Noire染みた悪趣味なおふざけ感も感じられるが、雰囲気としてはAorlhacのほんのりペイガン臭漂うフランス流メロブラをもっとプリミティブ寄りにした感じだろうか。#4[Conversation Troisième : La Danse des Morts]のリフはArkha Svaをも彷彿とさせ、#2[Conversation Première : Le Massacre des évangiles]中盤など所々ではJeっぽさも感じられる。
いかにもフレンチ・ブラックといったメロディセンスだが、ネチネチジメジメした陰湿さや腐敗したロマンティズムといったものはそれほど感じられず、いっそ爽やかなほどメランコリックを突き詰めたメロディに満ちている。
徹底的にメロディアスなリフ捌きやここぞと決めてくれる涙腺刺激トレモロも素晴らしいことこの上ないが、特にベースがリズム担当というよりもはやメロディ担当というほど強く自己主張しており、メロディアスなギターリフの間隙を縫うようにベースが絡む極上メロディは堪らないものがある。


また緩急のツボを抑えた楽曲は疾走感抜群で、特にタメの効かせ方が絶妙極まりない。
タメてタメて「これから走るよー」と期待感を煽りに煽った後、哀愁ダダ漏れリフを伴いながら疾走パートをへと雪崩れ込むカタルシスにはガッツポーズを禁じえない。
どの楽曲も山谷があり、泣きどころが用意されているため毎曲毎曲興奮しながら聴くことが出来る。
音質は薄っぺらくスカスカであるが分離・バランスは良く、むしろメロディの輪郭をくっきりはっきり感じることができ、いい塩梅のB級感と言える。


というわけで、非常に高品質なフレンチ・ブラックの会心作。
プリミティブらしい荒涼感を持ったままAorlhacに比肩する極上メロディを聴かせてくれるという素晴らし過ぎるバンド。
とにかくメロディ面でもリズム面でもキャッチーさが際立っており、楽曲の煽情力の高さには目を見張るものがある。
正直ストライク過ぎて、今年聴いたプリミティブの中でも特にお気に入りの一枚となっている。
フランス臭いメロディックブラックメタルが好きな人、ノリノリかつメロウなプリミティブが好きな人なら間違いなく楽しめるはず。
かなりオススメの一枚!


【お気に入り】
#7[Conversation Sixième : La Théorie des Rats]:クライマックスでのタメの妙技。
【レーベルサイト】
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MySpace
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