Bosse-de-Nage:[Bosse-de-Nage]


アメリカ産、ポスト・ハードコアアンビエントブラックメタル、2010年1st。7曲47分強。
Flenser Recordsよりリリース。


ポスト・ハードコア的激情エモーションとモダン鬱ブラックのネガティビティを腹の底から湧き立つ感情のフレアに任せてミニマルに猛り狂う怒涛の新世代系アトモスフェリック・ブラックメタル!】


ジャラーンジャラーンと陰鬱で重苦しいリフを引きずりながらドゥーミーに進行するスロウパートをじっくりのったりと挟み込みながら、硬く抜けの良いタイトなドラムによるドカドカバコバコと荒々しいブラスト、ジリジリジャージャーとソリッドに歪み粗くささくれ立ったノイズ質が耳に心地よい音響的な響きを持ったギターが掻き鳴らす、怨念に喘ぐような陰鬱さを滲ませつつもポストハードコア染みた激情を滾らせるエモーショナルなトレモロ、言葉にならない悲痛な慟哭に満ちた咆哮で感情任せに絶叫を張り上げっぱなしの壮絶なヴォーカルが、轟音の暴風雨と化したフルスロットルのアグレッションを延々淡々と維持したま轟々と突っ走る。


Wolves In The Throne Roomなどの新世代アトモスフェリック・ブラックメタルDeafheavenWoeといったポスト・ハードコアの影響を受けた新世代ブラックに通ずる衝動的な感性迸るトレモロでひたすらに爆走するスタイル。
高揚感のあるトレモロへの頑なな偏執ぶりはKralliceにも通ずるものがあるし、ブラックメタル的轟音で空間を埋め尽くす音像はDarkspace的でもある。
またあそこまで冷たくはないもののColdworldの切ない絶望感・荒涼感にも近いだろうか。
ただし前述のバンド群と大きく異なる点として、激的な展開の起伏でドラマティックな叙情描写を行わない点が挙げられる。
緩急の落差は急峻に付けながらも、ファストパートにしろスローパートにしろ展開も少なめに同じフレーズをミニマルに反復しており、ジワジワと精神を蝕むような方法論は原理主義型のプリミティブブラック的とも言える。
そのフレーズ一つ一つにはジメっとした感傷的な陰鬱さが感じられ、全体としてディプレッシブ・ブラックに通ずる厭世的な雰囲気が漂っている一方で、古典的な邪悪・儀式めいた雰囲気といったものはほとんど感じられず、モダンというかある種のスタイリッシュさが匂い立つあたりはまさに新世代系と言える。


また#3[Untitled]#5[Van Gogh Cooks His Hand]#6[Excerpt from Paris Spleen]など、要所要所で炸裂する、絶妙にネガティブさの残滓を残しつつ明るく爽やかとすら言えるノスタルジーを伴った幸福感を噛み締めるような、シューゲイザー系にも通ずる涙腺刺激系トレモロが琴線に触れまくることこの上なく、聴いていて胸が詰まるほど切なくなってしまう。
そんなパートでもヴォーカルが相変わらず喉よ引き千切れろと言わんばかりに悲愴な絶叫を張り上げまくっているのがまたどうしようもないメランコリーに拍車をかけており、もうたまらない。


というわけで、シンプルでありながら、だからこそ圧倒的なほど煽情性に抜きんでたメロディの奔流に溺れる新世代系の良作。
端的に言ってしまえば、自然崇拝感はこれっぽっちもないがWITRPanopticonSkagosといったカスカディア系や、DeafheavenWoeといったハードコア系の激情パートをディプレ寄りにして延々リフレインしたようなスタイルなので、それ系が好きな人ならば悶絶できるだろう。
新世代系の例に漏れず、音質が非常にクリアかつパワフルであり、また実に耳に心地よいノイジー差も兼ね備えている点も見逃せない。
ぶっちゃけかな〜りメロメロにされてしまっている作品なので、ぜひ多くの方にこのエモさを堪能していただきたい!!


【お気に入り】
#6[Excerpt from Paris Spleen]:圧倒的・・・!圧倒的なまでの・・・!メロディの・・・!洪水・・・!!(ちなみに、youtubeに上がっている動画は同名異曲の#7であり、別の曲であるから注意)
【オフィシャルサイト】
http://bdn.greymetal.com/:本作のサンプル他、2枚のデモ音源がDLできる。