Panopticon:[Panopticon]


アメリカ産、A. Lundrによる自称アトモスフェリック・アナーコ・ペイガン・ブラックメタル、2008年1st。全7曲67分半。
オリジナルはLundrからのリリースだが、2010年にPagan Flamesが再発したものをゲット。


【轟音アトモスフェリックブラックメタルに、胸を掻き毟る激情ポストハードコア、儚い叙情と神秘性を帯びたシューゲイザー、土着的なトラディショナル・フォークが融合された、激ドラマティックかつ鬼エモーショナルな自然崇拝系カスカディアン・ブラックメタル!】


バシバシドカドカと炸裂感・重厚感のある生々しいドラムがダイナミックに緩急をつけつつ苛烈なブラストを叩き込み、神秘的な響きを持って空間に広がるザラザラした轟音ギターが、激情を迸らせるエモーショナルなトレモロ、郷愁を煽り涙腺を刺激する感傷的トレモロハードコア・パンクな慟哭リフ、ドス黒い憤怒がうごめくような重苦しいリフ、ペイガンよろしく勇ましいリフなどを掻き鳴らし、そこに流麗なクリーンギターが奏でる淡く神秘的な旋律、高音ギターによる緊張感のある様式系ソロ、情念たっぷり泣きのソロ、しっとりした憂いと自然への憧憬が込められた柔らかくロマンティックなアコギ等が絡む。
重々しく搾り出すデスヴォイスやギャアギャアとブチ切れた絶叫を張り上げるガナリヴォーカルも壮絶・凄絶でいとかっこ良し。
時折「ガピーーーーーー」と、ギターノイズか、はたまたスピーカーが壊れたかと見紛うほど強烈な白目ひん剥き絶叫が耳を劈く。


今ワタクシ大和TROLLが最もハマっているブラックメタルバンド、ぱのぷちんこ
誉れ高きWolves in the Throne Room連盟に名を連ねるアンチ文明ヘイル自然な新世代系。
新世代系と言っても巷に溢れるなんちゃってブラックメタルではなく、あくまでブラックメタルとして新しい情景を描き出すスタイル。
WITRと比較するとよりハードコア色が強いように感じるが、荘厳な神秘主義的世界観やどこか人を寄せ付けない孤高感はまさにブラックメタルの目指すところであろう。
崇高さすら感じさせる神秘的アトモスフィアを纏いながらひたすら叙情的に突進し、時にシューゲイザーブラック的に儚く淡い残響を棚引かせながらノスタルジーを振りまき、時に明るいとすら言えるほどエモーショナルな激情メロを伴いながらハードコア・パンク的にノリノリ疾走したりする。
さらに轟音ブラックメタルをバックに叙情味豊かなアコギが楽曲の主旋律をムーディに奏でたり、トライバルな民族パートを絡めたりと、衝動的なアグレッションに身を任せてブッ飛ばしながらも美しい叙情性・神秘性の描写に徹している。
新世代系らしいモダンなスタイリッシュさも持ち合わせており、インダストリアル染みたセリフSEを楽曲の裏で延々流したりなど、エクスペリメンタルとも言える多彩かつ器用な表現力を見せつけてくれる。


最近の作品ではポストロック・シューゲイザー系への傾倒を強めているが、本作はハードコア成分が強く、またブラックメタル然りとした爆走パートが大半を占めている。
こまめに美味しいオカズを挟みながら前のめりに突っ走る手数足数の多いドラムがキマりにキマりまくっており、かなり爽快。
爆走メインでありながら起伏に富んだドラマティックかつ緊張感あふれる楽曲構成と、大自然雄大な美しさと厳しさ、無常さへの憧憬が滲んだ、琴線に触れまくる悲しげだが明るくもあるようなテンション高いメロディの秀逸さゆえ、基本10分越えの大作群でありながら、退屈なんて出来ようはずもない。


というわけで、WITRSkagosAltar of PlaguesPetrychorといった自然崇拝系、JeDeafheavenWoeVestigesといったポストハードコア/シューゲイザーテイストのある激情ブラックメタルが好みであるならば気に入ること間違いなし。
アトモスフェリック・ブラックメタルと激情ポストハードコアとシューゲイザーの三位一体、+トラディショナル・フォークという、個性的なPanopticonとしてのスタイルはこの1stにして既に完成されており、全曲非常にクオリティが高く、アルバム一枚通すとボリューミーだが密度もめっぽう濃い。
特に今作は多要素ブレンドのバランス感が絶妙で、サウンドのバラエティさでは他作品より頭一つ抜けている感があり、涙ちょちょぎれて狂おしく悶えに悶えてしまう感涙必至悶絶至極の一枚となっている。
アメリカ新世代系、シューゲイザー系、ポストブラックといったフレーズに目が無い諸兄はマストバイ!


【お気に入り】
#4[Speaking]:涙腺天元突破。
MySpace
http://www.myspace.com/panopticonation