Nomans Land:[The Last Son of the Fjord]


ロシア産ペイガンメタル、2000年1st。8曲36分弱。
手元にあるのはボーナスとしてライブ映像をエンハンスト収録して2005年にEinheit Produktionenからリリースされた再発盤。


【始祖Mithotynの血を引き継ぐ熱くクサいメディーバル勇壮メロディをロシアン風味に仕立てて大海原を悠然と進んでいく、これぞ船乗りヴァイキング/ペイガンメタルの生き様!激クサ激シブ!!】


船に揺られているような悠然とした横乗りミッドテンポをゆったりどっしりと叩くドラム、年季の入ったヴァイキング戦士の屈強な肉体から渋み汁が滲みだすようなズンズン勇ましいリフ・ベースによる力強い武骨リズムの上で、Mithotynのヒロイックな哀愁とPagan Reign的辺境臭を足し合わせたようなバグパイプっぽいラインのクサクサメロディと、朗々としたマターリエエ声系おっさんテノールヴォーカルとが、神々の戦、部族の歴史、戦士の誇りを高らかに歌い上げる。


ひたすらミッドテンポで勇ましく邁進するヒロイック・ペイガンメタルであり、テンションの浮き沈みも控えめに、アルバム一枚通して淡々とすら言えるほど落ち着いた曲展開で進行していく。
しかしながらとにかく一つ一つのフレーズそれ自体の破壊力が凄まじい。
前述のようにMithotynの悲愴感を希薄にして胸を打つ哀愁と勇壮さを抽出して、Pagan Reignの辺境民謡メロディに取り込んだような、静かだが魂を揺さぶる熱、そこはかとない殺気と濃密な漢気を含んだメロディの煽情力たるや筆舌に尽くし難い。
ベラルーシKamaedzitcaとかにも近いだろうか。
言うなれば「クサッ!クサッツ!!」と瞬間的に激しく興奮するメロディというよりは「あ〜〜〜クサいわ〜〜〜」とじんわ〜り身に沁みて悦に入るようなクサさ。
どのメロディにも歌心があって、思わず肩を組んでヲ〜ヲ〜とコーラスしたくなる。


さらにそこに乗る燻し銀ノーマルヴォイスがやたらシブいのなんのって。
2nd以降ではギエ〜〜〜ギョエ〜〜〜とめちゃくちゃ強烈なブラッキーデスヴォイスも用いられているが、本作はデスヴォイス一切無し。
全編ヲ〜ヲ〜おっさん語り。
これがまた楽曲に映えること映えること。
どちらかというとインスト寄りでヴォーカルの出番自体が少なめだが、だからこそ、ここぞと言うところで朗々と歌い上げる存在感は抜群であり、あまりのかっこよさに思わずうっとりしてしまう。


というわけで、派手派手しいシンフォアレンジ無し、牧歌的な酔いどれ民謡無し、ただシンプルにギタメロで勝負する質実剛健ヴァイキングメタルの名作。
Turisasが戦にまつわるエトセトラを描いているとすれば、このNomans Landは海に生まれ、海に行き、海に散る誇り高きヴァイキング戦士の生き様を描いたヴァイキングメタルとでも表現できようか。
激しくはないが深みがある。
気分はどこまでも広がる青空と大海原の境界線を、帆に緩やかな風を受け悠然と航海するヴァイキング船の看板上。
次の戦ではヴァルハラへと招聘されるだろうかとまだ見ぬ戦場へ思いを馳せながら遠く広い海を眺めるヴァイキング戦士のそれだ。
続く2ndと同路線だが、2ndで聴かれたおバカなほど明るい青空シンセが入っていないことでよりストイックな印象で垢抜けておらず、一層B級感が強い。
しかしながら2ndで炸裂し、3rdで薄れてしまった「Nomans Landらしさ」が詰まっており、2ndが人生レベルのロングヒットとなっている自分としてはメロンメロンにされてしまった次第。
しんみりアコギチューン#5[Nomans Land]を除いて全て似たような楽曲であるが、これすなわち一瞬でも悶絶出来れば8曲37分間悶絶しっぱなしってことでして、僕のような横揺れミッドテンポ教信徒(ガッツポーズ学派)であれば涙と笑顔をだらしなく撒き散らしながら恍惚としてしまうこと請け合い。
違いのわかるヴァイキンガーにこそ堪能していただきたい一枚。
静かにおすすめ!


【お気に入り】
#7[In The Skin Of A Bear]:ヴォーカルが声も高らかに歌い上げるサビ部分は、思わず「せ、船長!」って感じにイメージプレイ悶絶。
【オフィシャルサイト】
http://nomansland.ru/
MySpace
http://www.myspace.com/nomanslandrus
短いインストだけど、この曲もかっこ良い。