Morose：[Autumn Poetry]

レビュー M


UK産シューゲイザー・ブラックメタル、2010年コンピレーションアルバム。6曲(10曲)32分。500枚限定。
精力的に良盤を放出しまくっているにもかかわらずフューチャーリリースが雪だるま式に増えている(笑)中国Pest Productionsのサブレーベル、Autumn Floods Releaseよりリリース。


【キャッチコピー】
胸を掻き毟る郷愁と淡く切なく温かな癒しを、霞みがかった美しい幻想がじんわりと覆い尽くすハートウォーミング・ブラックメタゲイザー。
【一言】
ゆったりと穏やかな羊水リズムを紡ぎながら時にツタツタ2ビート／ドコドコブラストで感情を吐露するドラム、しっとりと憂いを帯びた寂寥感を募らせる美しくも物悲しげなアコギ／クリーントーンのアルペジオ／ポロンポロンと涙を滴らせるピアノ、ジュワジュワした粗い耳障りの霞ノイジーギターによる胸を掻き毟る儚く切ないトレモロ・リフ、幻想的に残響を響かせる美麗なクリーントーンの甘い旋律、ファ〜ファ〜と空間に広がるシンセ等が幽玄な虚無感漂う美しい音空間を構築し、悲痛な金切り絶叫／シューゲイジングな淡く消え入りそうなウィスパーなどがうっすらと被さる。
【二言】
Alcest：1stのアコースティックな癒しやノスタルジーといった感性にかなり特化しており、ブラックメタル成分は希薄。美しく清らかで、柔らかく包み込むような光に満ちているのに、物悲しく胸が詰まるような儚さ切なさに満ちている。心に響く淡く温かな癒しが涙腺をやたらめったら刺激する。
【三言】
遠く響く鬱ブラ的金切り声やウィスパーが用いられてはいるものの、その出番はアクセント程度。ほとんどインストゥルメンタルに近い楽曲群。
【蛇足】
Pest Pro.の比較的早い段階からリリース予定だったものの、リリース前にメンバーとの連絡が取れなくなったためにずっとリリースが延期されていた待望の音源。
雰囲気的には、結局メンバーとは連絡が取れなかったために、レーベル側が企画盤として出しちゃった、という感じかな？
なんにしてもAlcestショックの第一陣的タイミングから期待していたバンドであり、半ばリリースを諦めていた音源だっただけにこうしてCDにまとまって聴けるというのは嬉しい限り。
いわゆるNeige御大フォロワーのシューゲイジング・ブラックメタル勢に類するバンドだが、そういった括りをされる多くのバンド達とも異なる独特の質感。
最も近い雰囲気なのは同レーベルの名作コンピに参加していたEthereal Beautyかな。
目指す方向性としてはSvarti LoghinやOnryoとも同系統とも言える。
ブラックメタル成分は希薄であるものの、やはりシューゲイザーでもブラックメタルでもない、シューゲイザー・ブラックメタルとしか形容のしようがない音楽性であり、#5：[Death, to the dead for evermore]などではまるでSigur RosやSlowdiveのようなドリーミーポストロックが堪能できる。
そういう意味でAlcest：1stの瑞々しく耽美な世界観の再現性は高いが、しかしあちらが生命の歓喜を歌い上げていたのに対し、こちらはよりディプレッシブ気味で虚ろな虚無感に傾いている。
楽曲もAlcest以上にアコースティック寄りでメタルな骨格をベースとはしていない。
Neige御大フォロワーの溢れかえる昨今でもここまで「癒し」に的を絞ったバンドはなかなかいないように感じ、「そうそう、これが聴きたかったんだよ」と痒いところに手が届く絶妙なツボをついたスタイル。
思わずアルバム全編通して琴線がハウリングしまくってしまった次第。
聴き終わった後に心地よい余韻が残る。
Amesoeurs好きよりはAlcest好き向けの良質シューゲブラック。
シューゲイジングな儚げディプレが食傷気味な人でもこれはイケるんではなかろうか。
激オススメ！
【お気に入り】
#5[Death, to the dead for evermore]：3分からの展開が最高。
【レーベルサイト】
http://www.pest666.com/
【MySpace(レーベル)】
http://www.myspace.com/pest666pro


ちなみに、レーベルサイトでは6曲収録とクレジットされているが、実際には10曲収録されている。
増えた4曲は曲間に挿入されている小鳥のチュピリングや無音。
レビューでは一応無機質にSE含め一曲目から無機質にタイトル割り振った表記にしましたが、実質的な収録タイトルは下記のようになるのではないかと思う。
必ずしもこれが正解とは限りませんが、参考までに。


#1：[I]
#3：[II]
#4：[Embers in the Sky]
#5：[Gloria]
#6：[Death, to the dead for evermore]
#10：[The Scent of Your Dying Rose]