Panopticon:[Collapse]


アメリカ産、自然崇拝ポスト・アトモスフェリック・ペイガン・ブラックメタル、2009年2nd。4曲46分半。


【キャッチコピー】
自然への畏怖を込めた神秘的な叙情と胸を掻き毟る切ない哀愁とを滲ませながら、激情の奔流が噴出する新世代系農耕民族ブラックメタル
【一言】
ダイナミックに緩急つけながら炸裂感と重厚感を持ってファストに苛烈に叩き込まれる存在感抜群なドラミング、メロウなラインをなぞるベースの上で、チリチリジャージャーと歪んだ薄っぺらく乾いたガス状のノイジーギターやキリキリした高音金切りギターが、激情を迸らせる慟哭トレモロ、郷愁を誘い琴線に触れる感傷的トレモロを、崇高さすら感じさせる神秘的アトモスフィアを纏いながら掻き鳴らす。
【二言】
各曲愁いを帯びつつも叙情味豊かな陽性のアコギや素朴なパーカッション、民族楽器等による土着的本格民謡パートがボリュームたっぷりに挿入されており、激烈に肝臓を発散するブラックメタルとは打って変わって賑やかなお祭り/ムーディなしっとりアコースティックサウンドが堪能できる。
【三言】
ヴォーカルはゆっくりと絞り出すように吐き捨てる低音デスヴォイスでなかなかかっこいいが、この手のバンドに顕著なように出番は少なくインストパート長め。。Deathspell OmegaのMikko社長を思わせる重々しい宣託ガナリ等も披露。たまに「ガピーーーーーー」と一瞬スピーカーが壊れたかを思わせる強烈な高音ガナリ絶叫が耳を劈く。
【蛇足】
同郷のWolves in the Throne Roomが提示した、神秘性と叙情性を研ぎ澄ました新生代アトモスフェリック・ブラックメタルスタイル。
ブラックメタルの音像でありながらオーセンティックなブラックメタルとは一味も二味も異なるモダンかつある種スタイリッシュな質感はまさに新世代系。
WITRよりもポストハードコア的激情成分が色濃く、楽曲展開もよりドラマチック。
その顕著な例が自然派志向の強さであり、Finntrollのアコースティックアルバム[Visor Om Slutet]をも彷彿とさせる真性フォークサウンドの大胆な導入が強烈な個性となっている。
激烈なブラックメタルと牧歌的な民謡パートとの断崖絶壁のギアチェンジは、インパクトこそあるがさして違和感を感じさせないほど独自の世界観の構築に成功している。
4曲45分越えと大作志向だが長い楽曲でもしっかりと展開を設け、テンションを維持しながら突き進む楽曲群は、結構色々な要素を含みながらも一切無駄が無く、2007年結成の新人とはとても思えない洗練された内容に思わず脱帽してしまう。
エネルギッシュに発散される感情の濁流としっとりした叙情性の絡み合う圧倒的なドラマに、思わず悶絶に次ぐ悶絶に酔いしれてしまった次第。
前述のようにWITRAltar of PlaguesSkagosあたりが好きな人に是非ともオススメしたい一枚。
このバンドはこれしかもっていないのだが、他作品もぜひ入手したいところだ。
【お気に入り】
#1[The Death of Baldr and the Coming War]:楽曲後半のお祭りパートに悶絶。
MySpace
http://www.myspace.com/panopticonation
こういうバンド、今は地下にゴロゴロいそう。いろいろ深堀りしてみたいね。