Ensiferum:[From Afar]


フィンランドが誇るヴァイキングメタルの一番星新生Ensiferumの2009年4th
3rdと同じ仕様の限定DIGIブック。ボーナストラック一曲追加しての10曲60分半。
惜しまれながらバンドを去った天才Jari Mäenpääに替わって元NortherPetri Lindroosが正式メンバーとなって二作目となる今作は、かつて最高傑作と謳われることも多かった前作3rdをさらに上回る叙情性とドラマ性を持ってして勇壮なるヴァイキング叙事詩を描き出すまごう事なき最高傑作。
ひどくしっとりしたおとなし目のジャケがウケ狙いとしか思えないようなスーパーハイテンションで畳みかける、悶絶に次ぐ悶絶に涙と笑顔の絶えないド級クサクサシンフォニック&ファンタジック天元突破ヴァイキングメタルの大傑作となっている。


民謡アレンジのケルティックかつクラシカルな勇壮フレーズやズンズンザクザク力強い三連刻みで熱く魂を鼓舞する鬼ヒロイッククサギター大仰極まる派手派手ファンタジックシンフォ/牧歌的フォークロアアレンジ大爆発のやり過ぎ系オーケストレーション雄々しく勇ましいヴァイキングコーラスを伴って、ブラスト交じりにメロスピ的爽快感を炸裂させまくって軽快に豪快に疾走する。もちろんヴァイキング船の上で波に揺られているかのようなゆったり横ノリでどっしり、あるいはアコギも交えしんみりする楽曲もあり。
基本的に前作路線を踏襲したスタイルだが、前作で大フィーチャーされたシンフォアレンジのスケール感が飛躍的に増しており、もうなんだかえらいことになっている。アコギインスト明けの#2[From Afar]しょっぱなからそのあまりの天元突破っぷりに度肝を抜かれる。そんなキラキラ派手派手クサクサと三拍子そろったやり過ぎシンセが壮大にドラマチックにファンタジックに大スケールではしゃぎまわる一方で、Trollhorn的/初期Ensiferum的な匂いがする民謡Keyがプカプカこじんまりと牧歌的にフォークロアメロを奏でたりするのがまたたまらずに悶絶を誘う
しかしなにより心揺さぶられるのは、ギターの奏でるメロディに、3rdのころには薄まったように感じられた、偉大なる始祖Mithotynから受け継いだジャーマンな哀愁溢れるヴァイキング魂が見事に取り戻されているMithotyn独特の悲愴感を薄めてメロパワ/クサメタル的明るさを基調にネオクラっぽくブラッシュアップしたような、ガッツポーズ必至のヒロイシズムに富んだ叙情メロディの数々に思わず胸や目頭が熱くなる
Petriのヴォーカルも堂に入ったもので、「ディヤアアアアアアアアア!!!!!!」とデス声の中ではいわゆるイケメン的な部類に入るだろうメロブラ/デスメタル系のハイテンション高音デススクリームで獰猛に、かつ漢らしく喚き散らしており実にかっこいい。またシンフォアレンジ同様前作から大幅にパワーアップしたコーラスワークも健在であり、随所で勇ましいヴァイキング合唱が堪能できる。このコーラスはもはやEnsiferumの強力な武器の一つですね。思わず一緒に歌ってしまいます。キーボード奏者であるEmmi Silvennoinenタンのしっとりとした儚げな歌声も萌え萌え。


というわけで、ヴァイキングメタラー必聴!必涙!最敬礼!!悶絶し過ぎの失神失禁止む方なし!な恐るべき一枚。
前述の通り音楽のスタイルとしては前作同様だが、メロディの質や楽曲から滲み出る雰囲気はむしろ2ndに近い印象を受けた。
個人的には、シンフォアレンジのガツンとくるインパクトよりも、熱き血潮滾るヴァイキングギターの大復活にこそ称賛の拍手を送りたい
こう言ってはなんですが、もはやJariの穴は完全に埋められてしまったといっても過言ではないかも。
まさにEnsiferumの集大成とも言うべき魅力に満ちている。
キラーチューンは笑ってしまうくらいスケールのでかい(クワイアKeyがヤバい)タイトルトラック#2Ensiferumらしすぎる民謡クサギター大乱舞な#3[Twilight Tavern]、イントロやサビの熱血闘魂ギターとヴァイキング合唱にガッツポーズ、民謡Keyに心臓を打ち抜かれる#5[Elusive Reaches]、戦闘前の高揚感漂う陽気なファンタジック民謡メロ(!!)が鳥肌モノの#6[Stone Cold Metal]。ゆったり横ノリこそヴァイキングの真髄と感じさせてくれる#4[Heathen Throne]、#7[Smoking Ruins]#8[Tumman Virran Taa]の哀愁漂う舟歌を挟んで壮大かつ重厚に、それでいて胸が苦しくなる程の郷愁を掻き立てながらドラマを締めくくる#9[The Longest Journey (Heathen Throne Part II)]も素晴らしい。全曲じゃないか(笑)
つまり捨て曲など一切無く、早い曲から遅い曲まで、最初から最後まで全編クライマックス。それぐらいテンションとクオリティが高い。
一瞬で心をわしづかみにするパワーと、しんみりずしりと味わえる深みを兼ね備えている。
素人から玄人までヴァイキングメタラーなら楽しめないわけが無い、さすがの貫録を見せつけてくれた素晴らしい神盤。
超絶推薦!!


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ちなみにボーナストラックはNordmanというアーティストのカバーらしい。野暮ったくて暑苦しいヴォーカルとケルティックなギターがツボをくすぐる良い曲。