V/A:[A Sixth Sense of Darkness]


カルトなUGブラックメタルバンド軍団による、2006年6-wayスプリット
1000枚限定、19曲74分強。
かの大帝Arkha Svaが参加しているということで割と有名なスプリット音源。
他にはBloodshed NihilVordrNoctiferWrathImpious Havocが楽曲を提供している。
ブラックメタルの真髄とも言えるカルト精神UG魂に満ち溢れ、同時に内容も充実した一枚となっている。

Bloodshed NihilMyspace):#1〜#4

スウェーデン産。4曲10分半。
ヴォーカルとベーシストは、今は亡きThy Primordialのメンバー。
ズゴゴゴとブルータルに響くベース/ドラムが破滅的な極悪音質の中で、割れまくり籠りまくりのノイジーギターがDark FuneralThy Primordialに通ずる冷徹さと邪悪さを備えたメロディアスな荘厳トレモロを掻き鳴らしながら、緩急つけつつ猛然と突っ走るスウェーデンらしいファスト/メロディックスタイル
ギャァギャアとガナりギエエエと絶叫する人間離れしたガリガリデスヴォイスが非常にかっこいい。
荒涼としつつ地下室じみたカルトな雰囲気、突進力のあるブルータリティ、荘厳なメロディと、楽曲の方も非常にストレートにブラックメタルブラックメタルした初期衝動丸出しの内容であり、頭真っ白にして楽しめる。

VordrMyspace(Fan Page)):#5〜#9

フィンランド産。5曲9分半。
Prevalent ResistanceCircle of Ouroborusのギタリスト、Hoathのメンバーなどが絡んでいる。
フィニッシュプリミティブとしてはそこそこ名の知られたバンドだと思うが、恥ずかしながら初聴。
Celtic FrostDarkthrone直系の暗黒性を孕んだスラッシー・ダーティなリフで、ブラスト/ツタツタ2ビート交えながらノリ良く疾走するいかにもフィンランドらしい、もしくはCarpathian Forestの系統に属するようなオールドスクールプリミティブ。やはりPrevalent Resistanceに近い感じ。
メロウさより邪悪な切れ味と緩急を巧みに用いたRawな疾走感が強調されており、このスピーディかつノリノリに駆け抜ける感じがたまらなくかっこいい。
と思いきや#8ではSargeistやHornaを思わせる寒々しくメロウなトレモロなども顔を出し、強烈にツボを抉られる。
ヴォーカルはSigh川島さんが泣きを強調しているような、線の細い情けない系高音泣き喚き。ヒステリックで気持ち悪いタイプ。いいね。
音質はラフで汚らしいが分離は良く、プリミティブとしては理想的な悪さ。

Arkha Sva#10〜#12

言わずと知れた国産トゥルー/プリミティブの皇帝。3曲11分半。
#10はいつものChantシリーズ。サーたん。サーたん。黒魔術度いと高し。
本編である#11、#12は相変わらずのArkha Sva節が炸裂した暗黒ロマンティックプリミティブ
緩急を巧みに用いながらドカドカボトボトと荒々しくブラストするドラムの上で、胸が掻き毟られるような切なさとドス黒い暗黒美学を孕んだ悲しくも美しい耽美トレモロがドラマティックに掻き鳴らされ怨念こもりまくりのドス系ガナリが邪悪に悪どく妬み怨みがましく呪詛を紡ぐ
#12後半のトレモロArkha Sva屈指の泣きっぷり。ヤバいくらい胸に響きます。
#13ではお馴染みのオペラヴォイスから始まり、#12を更に凌駕するメランコリック極まりない叙情ドラマが展開されている。ブラストの瞬間最大風速も過去最高。暴虐吹き荒れるメランコリーにもうメロメロ。ヴォーカルも嘆いているかのような泣きが微かに感じられ、ドラマティックな叙情性に拍車をかけている。
Arkha Svaがお腹いっぱい胸いっぱい堪能できる。

NoctiferMyspace):#13〜#14

イタリア産。2曲12分半。
ドカドカと荒々しくブラストしながら荘厳で寒々しいトレモロを伴って爆走するスウェディッシュ/ノルウェイジャン系メロディック/ファストブラックメタル
#13冒頭、割と地味かと思いきや、寒々しい荘厳メロ爆走をかまし盛大に悶絶。うおっ、かっこいっ!基本に忠実な非常にオーセンティックなスタイルでありながら、ブラックメタルらしいリフ捌き、気持良くブルータルで整合感のあるドラム、サタニックでヒステリックなEvil喚きヴォーカルなどそれぞれ弩ストレートに質が高いので、素朴にブラックメタルな、単純なかっこ良さで勝負できるタイプ。楽曲が長めだが、退屈することは全くない。
Dark FuneralUrgehalといったそのまんまなブラックメタルが好きならきっと楽しめるだろう。

Wrath#15〜#17

スウェーデン産。3曲19分半。
95年結成、一本のデモテープをリリースして解散となった真性カルトなバンド。
#15〜#16はおそらくそのデモテープからの音源が収録されている。
初期ノルウェーのミスティックな雰囲気を持ったピュア・プリミティブブラックメタル良く聞こえないドラムがブラストし、ズモモモモとベースが圧迫的な空気感を作り出しチリチリジリジリと薄っぺらなギターが寒々しく荘厳で結構メロディアスなトレモロ/リフ、オールドスクールなリフを掻き鳴らし、悪魔じみたEvilなヴォーカルがギャァギャァとガナる。
いかにも初期然りといったプリミティブだが、意外とメロウでキャッチーなリフ捌きや#16のノリノリツタツタ2ビート疾走などなかなかかっこ良く聴かせてくれる。
スペインのNazgulを思わせるガリガリに割れたヴォーカルもグッド。
突出して良いというわけではないが、90年代ブラックのカルトな魅力に触れることができる。
なお、音質は劣悪。籠り気味でバランスも悪め。左右のバランスがふらふらしたり途中聴き取りづらくなったり多少ストレスを感じる。まぁ聴けないほどではないが。
一方#17は雰囲気がガラっと変わり、刻み中心のメジャーっぽいブラック、ミステリアスで陰鬱なアルペジオによるミドルパートなど、テンポチェンジを多用したプログレッシブなブラックメタルとなっている。ヒステリックな高音喚きガナリに朗々とした浮き気味ヘタウマテノールが被さったりと、変態度高め。
これおんなじバンドか?(笑)まずまずかっこいいけど、前半のUGぷりみてぃぶnスタイルのほうが好み。

Impious Havoc→Myspace):#18〜#19

フィンランド産。2曲11分弱。
何気に5枚もアルバムを出してたりするが、初聴。
ブラストからツタツタ疾走、ゆったりミドルまでドタドタバコバコとRawに叩きつけられるポンコツドラムの上で、ジリジリ薄っぺらに歪められたギターがメロウで寒々しいトレモロ/スラッシーなオールドスクールリフを奏で、生々しい絶叫がのっかる、いかにもフィンランドなプリミティブブラックメタル
あまり特徴らしい特徴はないが、やはりフィンランド産だけあって純粋にカッコいい。
ヴォーカルがブラックメタルになりきれないサタニックスラッシュと言った風情のヒステリックなガナリ声であり、ヤケクソな邪悪さがなかなかにカッコ良い。
またこういったRawなドラムはまさにUGプリミティブならではであり、結構ツボ。
Satanic WarmasterBaptismHornaなどのフィニッシュプリミティブが好きならば楽しめるだろう。



というわけで、お察しの通りArkha Sva目当てで買ったわけだが、他のどのバンドも実にかっこよく、なかなかに楽しめた次第。
が、この内容で75分聴き通すのはさすがにちょっと疲れる。
なので、気が向いたときにつまみ食いしながら聴いている。
とくにArkha Svaは短いながらもアルバムやデモのコンピ盤に勝るとも劣らない名曲(#13ヤバい!!)となっているので、Arkha Svaファンなら、中古などで見かけたら買っておいて損はないだろう。