Winter Funeral:[Bénis Les Ténèbres, Ô Mon Âme]


KristallnachtSacrificia Mortuorumなどに参加していた経歴を持つHylgaryssによる、フランス産メロディック/プリミティブブラックメタル
2001年、手作り感あふれる手書きナンバリング入り自主製作1st。6曲54分。
と見せかけて、どーやらe-bayに出回っているバッタモンのようだ。「やったぜオリジナル?超ラッキー!」とか思って買ってしまったわけだが・・・(←甘い)
今さらブートにとやかく言うつもりは更々ないものの、端的に言ってしまえば個人がコピって売ってるよーな代物でして・・・あまり褒められたもんじゃないですね。まぁ安かったし、曲が聴ければいーやという。
昨年Arkha Svaとスプリットを出したんで、知っている方も多いかと思います。
Arkha Svaのメンバーがリスペクトしていたという噂通り、あそこまでロマンティック・ドラマティックではないものの、Arkha Svaに非常に近いセンスの、実に悲しく哀しく美しく、メランコリックなメロディに満ちたフレンチプリミティブとなっている


細かなオカズを絡めながらドカドカ?と遅めブラストで淡々と走り倒す無機質なドラムの上で、叙情的に湿ったエモーショナルなノイジーさのじっとりジャリジャリギターが、フレンチブラックらしい憂鬱かつ陰鬱で耽美なクサトレモロを悲愴感いっぱいに掻き鳴らし高音泣き交じりのネチっこいガラガラ濁声+低音デスヴォイスがヒステリックにガナり、邪悪に唸る
ドラマチックだったスプリットとは多少作風が異なり、楽曲はリフレインを多用してファストに攻める曲が主体。鬱屈とした引きずるようなスローテンポの曲もある。速い曲と遅い曲を使い分けて緩急をつけているような感じで、楽曲中での展開は薄くやや単調気味。ラストナンバーは25分弱ひたすらダラダラする。
とはいえ前述したように優れたメロディセンスは健在で、フランスらしい湿った憂鬱感に満ちた、どこか爽やかで儚く美しいメロディが素晴らしく、[(Vlad Tepesの寒々しいメロウさ)+(初期Mutiilationの陰鬱なメランコリー)−(病的な雰囲気)]×耽美といった趣の泣きクサメロに胸が締め付けられる。
ヴォーカルは、Arkha SvaスプではArkha Svaの人でしたが、今作ではHylgaryssが担当している。アルバム通して、Bekhiraを水っぽくしたような生気の無い吐き捨て濁声ガナリブラックメタル系の低音デスヴォイスが重ねられており、殺伐とした狂気が感じられてかっこいい。色っぽい女性も登場するが、歌は無くアンニュイなセリフがメインとなっている。
音質は、メロディを際立たせる感傷的なノイジーさのギターや、カンカン乾いたスネアが気持良い抜けの良いドラム、しっかり聴こえるベースなど、適度にRawながら聴きやすい。


というわけで、Arkha Svaや上述したようなフレンチプリミティブが好きならきっと楽しめるであろう一枚。
Arkha Svaに比べると、そしてスプでのWinter Funeral名義の曲に比べても地味な内容だが、それでもやはりこのメロディは胸にクルものがあり、ドツボにハマった次第
というかヴォーカルの違いでこうも雰囲気が変わるものかと、改めてArkha Svaのヴォーカルのすごさを思い知ったり・・・
しかしながら、ブートだからなのかわかりませんが、曲の切れ目が常に数秒ズレている(曲がちょっと始まってからブチっと音が切れて次のトラックに入る)のが結構気になります。
以上のように中身は大変素晴らしいのですが、いかんせんこのような音源を大手を振るってrecommendするわけにもいかない(これ売ってくれた出品者が儲かっちゃいけないと思うし)ので、まぁ、その、なんだ、こーゆー音源もあるよということで一つ。
オリジナル盤見つけたら即買いするべき(そしてそれを僕に譲ってくれるべき)作品。
みなさまも、情報収集は徹底してくださるよう。


Myspace(Fan Site):この商品の出品者に対しては、対応は丁寧だったし、ことさら非難するつもりは毛頭ありません。取引自体にも感謝しています。念のため。