Dyrathor:[Memories in Frost]


ドイツ産、フォーキッシュヴァイキングメタル、2007年デモ
"Northern Storm Metal"を自称する2006年結成の若手バンド。
影響を受けたバンドがFinntrollEquilibriumMánegarmTaakeBlack MessiahSvartsot、etc.ということで、もうメンバー自身が完全に僕らと同じ趣味(笑)
すでにヴァイキングメタルとして必要なものはすべて兼ね備えていると感じさせる期待のホープの登場です。


MenhirXIV Dark Centuries2ndを彷彿とさせるような疾走メロディックヴァイキングに、Black Messiahのブラック要素とフォーキーなヴァイオリン、MenhirThrudvangarを思わせるうっすら系シンフォニックKeyを加えたような、まさしくジャーマンヴァイキングの総決算とでも言うべきスタイル
横ノリミッドテンポやブラストを交えつつ軽快に疾走する楽曲が中心。
とにかくジャーマンらしい哀愁とクサみを持ったヒロイックギター/刻みリフが熱いことこの上なく、ガッツンガッツンとヴァイキンガーの魂を鼓舞してやまない。どこまでも誇り高く勇ましく、かつ血のにじむような悲壮感荒涼感が感じられる勇猛メロディの数々は一流バンドにも全く引けを取らないヴァイキング界屈指のかっこよさ
また土着的・牧歌的な響きのあるヴァイオリンが奏でる舞踏曲のようなフレーズも素晴らしく、時に楽曲をリードし時にギターとユニゾンしとこれまた民謡メタルファンにはたまらない絶妙な絡み方をしてくる
シンフォニックなKeyによる荘厳な味付けも時折挟まれるアコギの牧歌感いい具合に楽曲を盛り立てている。


ヴォーカルはブラッキーな喚きと野卑たグロウルの二軸。Thiasos Dionysosに似てるかな。少々パワーに欠ける気もするが十分許容範囲内。朗々としたコーラスやセリフなどもありフックも効いている。


どの曲も個性的で、メリハリをつけながらもコンパクトにまとめられており、若手ながら作曲のセンスも良い。
とくに#4〜#6の流れは殺人的なほどにかっこよく終始悶絶しっぱなしの大失禁ヴァイキングワンダーランドが展開されている
#4[Schicksalsschlacht]モロジャーマンな勇壮ギターとヴァイオリンが熱くユニゾンする、抜群の疾走感を誇る曲。Aパートの三連刻みとシンフォニックKeyもグッド。終盤のシンフォニックヴァイオリン疾走〜爆走に悶絶。
#5[Midwinter]最初期Korpiklaaniっぽい木こり系ヴァイオリン殺伐とした闘魂バトルギタートゥテモスバラシイ(片言)。このギターフレーズはもうヴァイキング好きなら体をよじりもんどりうって悶絶してしまうこと必至の激アツっぷり。シンフォニックKeyに弾かせたりベースに弾かせたりとあの手この手で展開しながらしつこいほどにその激アツフレーズを繰り返しサドっ気全開に攻め立ててくる。
そして今作中もっとも熱い#6[Kampf auf Samsey]ヴァイオリンとおっさん船歌合唱という出だしからしてニヤリとせずにはいられない傑作。相変わらずヒロイックギターとヴァイオリンが絶妙に絡み合う。ブレイクしてからの熱すぎるギターとダン!ダン!というド派手なKey(としか説明できないw)の見せ場にガッツポーズ!!Pagan ReignのようなキラキラKeyを交えてのブラスト爆走あり。そして馬が駆けているような早回しアコギが入り、ドラムが前のめりに力強くリズムを叩きだす!!ここ!!ここ熱い!!熱血ギター&ヴァイオリン!!なんだこの盛り上がり!!そしてウッの掛け声とともに疾走スタート!!うおお、かっこええ!!ギターの哀愁爆発!!やばい涙出てきた!!
さらにその後シンフォ爆走したりやりたい放題の暴れっぷりにアドレナリンドバドバしたところでえらくあっさりと落ち着き(笑)、最後はクライマックスらしく荘厳に締め。いや〜、しかしこの曲ええわ〜。たまらん。


というわけで、新世代ヴァイキングの旗手へと成長する可能性を感じさせる、デビューデモとしてはえらくクオリティの高い一枚
偉大な先人達の影響を素直に吸収しながらも自分たちの音を作り上げることに見事に成功している。
聴いた瞬間一発KOクラスのキャッチーなメロディセンス、疾走が心地よい巧みなリズム感、ストップ&ゴーを絶妙に用いて押し引きを心得た曲展開と新人とは思えない内容の充実っぷりには目を見張るばかり。
とくに#6の曲構成は神がかっているというほど劇的な展開を見せ、ヴァイキングメタル広しといえども他に類を見ないクラスの名曲。
薄いギターに軽いドラムと自主制作故の弱さは否定できないが、それでもこの手のB級バンドにしては音質も悪くはなく、SlartibartfassThiasos Dionysosなんかよりはよっぽど骨格がしっかりとしている。
今年の7月からスタジオ入りしてアルバムを制作するということで、今からそのリリースが楽しみでならない。
果たして日本にどれだけ入ってくるか読めないくらいドマイナーなバンドではあるが、前述したようなドイツ産ヴァイキングが好きな人は勿論、民謡ヴァイキング好きの人は是非チェックしておいてほしい大型新人です!!


・オフィシャルサイト
・Muspace:もう少しストロングさが身に着いたらホント言うことなし。