Thronar:「Unleash The Fire」


オランダ産、我らがやり過ぎ系熱血骨太バトルメタラーThronarの2008年2nd
ジャケからしてなんか一気に垢ぬけたなーなんて感じますが、中身の方も前作の荒削りながらも圧倒的だったコテコテな熱気をメジャー路線にブラッシュアップしてきた、完全版Thronarとでも言うべき素晴らしい内容。


戦士の誇りと漢の哀愁と不屈の闘志とを滲ませた適度に明るく猛烈に逞しい勇壮ギタメロ大自然への畏怖と敬意が込められた大パノラマのサウンドスケープを思わせる壮大なKey力強いリズムに乗ってボンバスティックにバトルバトルするムサい漢臭さがムワッと充満したガチムチ系バトルメタル
壮大かつ厳かなオーケストレーション、コーラス、セリフ、そして雄たけびにキンキン剣と剣とがぶつかり合うSEなどでゾクゾクするほどの盛り上がりを見せるイントロ#1[Prelude to War]からしドカーンとスケールアップしていることを予感させる今作は、前作の路線を踏襲しつつ、Ensiferumあたりを彷彿とさせるような民謡アレンジの王道ヴァイキング系ヒロイックメロがかなり導入されている。もともとブラック由来の殺伐感を内包した熱血路線ということもあり、他のヴァイキングメタルバンドをさらに血圧高くしたような高コレステロール気味のコテコテ濃厚戦士メロがヴァイキングハートをしっかと鷲掴みむやみやたらに魂を鼓舞する熱き泣きメロは手ごたえ十分、涙ながらに最高の笑顔とガッツポーズが出ることはもはや不可避の領域
また相変わらずやりすぎ感満載なファンタジックKeyは、時にファ〜ファ〜とアトモスフェリックに、時に雄大大自然を讃えるように悠然と、時にパパパパーと戦場に響くファンファーレさながらに雄々しく殺傷力の高いメロディを奏でており、相変わらずいい仕事っぷり。またギターに合わせるように民謡を取り入れたりキラキラしていたりもしていて、さらに表情豊か、よりドラマチックに楽曲を盛り立てている。
ドッシリ腰を据えた横乗りミッドテンポから跳ねるようなツタツタ疾走、バタついたブラスト爆走までドラマチックに展開し、楽曲のバラエティ向上に成功している。無骨さと殺伐感を備えたバトル全開・前作路線の血生臭い曲あり、明るく軽快なヒロイックヴァイキング系の曲あり、王道ヴァイキングと筋力系バトルメタルが高次元で融合されたThronarサウンドはもはや向かうところ敵なし、最強の聞きごたえ


ヴォーカルは戦場の無情さを体現したような獣のごときディープなグロウルとブラッキーなガナリ、アッツいおっさん濁声、そして待ってましたなエエ声テノールボイスとバラエティ豊かな品揃え。前作同様ヴォーカル2人による掛け合いは絶妙。そして雄々しく戦に臨む鬨の声が如き雄叫び&雄叫びコーラスも熱いことこの上ない


どの曲も素晴らしいが、お気に入りは#3#4、および#8
#3[To Ride, Kill and Harvest]殺る気満々のイントロからして鼻血ブーなんですが、初期Ensiferumを彷彿とさせる民謡ギタメロといい無駄に雄々しいヴォーカル&コーラスといい大自然ヘイルなKeyといい、このアルバムの魅力をギュッと凝縮したような熱い曲。
爽快な疾走感と恥ずかしいくらいわかりやすいメロディが殺しにかかってくる#4[King of the Eburones]は、「さぁ皆さんご一緒に」系のサビがヤバい。メロディといい語るようなヴォーカルといいコーラスといい、熱過ぎ。
そしてバンド名が冠された#8[Thronar]は、牧歌、壮大、殺気、ヒロイックヴァイキング、老戦士の誇りと渋み、殺気とまさにThronarのすべてが詰まった上記2曲に比べるとキャッチーさには欠けるがドラマチックで良い曲。
他にも#6[The Old Condemned Immortal]Nathaliaの才能が炸裂する妖精Keyにしつこいほどの「ホイ!」#7[Eating the Enemy]中間の泣きヴァイキングギター、#9[Final War (Unleash the Fire)]の強烈にクライマックスを意識させるファンファーレ的Keyなど聴きどころは多い。


というわけで、相変わらずムサっ苦しい筋骨隆々系バトルメタルの真骨頂を見せつけてくれる名作
王道ヴァイキング路線を取り入れたことにより、一流のヴァイキングメタルとして一皮も二皮もむけたような印象。
ひとつ留意しておきたいのが、そうして大幅にスケールアップしてメジャーな方向へ進化を遂げた反面、前作で感じられた渋い哀愁とツボを突いた濃厚なマニアック感が薄まってしまったかなという点。決して個性がなくなったわけではなく、むしろギタメロやKeyのセンスは、Thronar節とでも言うべき独特のニュアンスを持っていてオリジナリティも十分なんだけど、なんというか、「昔好きだった女の子が上京して数年ぶりに地元に帰ってきたら、確かに綺麗になったし性格も昔の明るいままなんだけど、なんとなく垢ぬけてしまっていて・・・」みたいな。ある意味成長しないでほしかったみたいな寂寥感というか。違うか。果たしてこんな例えでうまく伝わるのか(笑)
とはいえ、僕個人としては今作も十分過ぎるほど楽しめました。ツボど真ん中を抉られる大ヒット。一打席目でサイクルヒットかますと伝説されるイチローくらいの打率。だって熱いんだもの。
あなた変わっちゃったのねと嘆いたところで、やはりこのバカバカしいまでネジがブッ飛んだ熱さには、おそらくヴァイキングメタラーなら狂喜乱舞のハッスルハッスルしてしまうこと必至でしょう
長々と語りましたが、つまるところやっぱりThronarは素晴らしいですよと。文句なしにかっこいいですよと。
前作が好きならもちろんのこと、ヴァイキング系が好きなら迷わず買えよ、買えばわかるさ、いくぞーっ、
1、2、3、バトオオオオオオオオオオオオッッッッル!!!(投げやりな締め)


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