Wolves in the Throne Room:[Two Hunters]
アメリカ産、自然崇拝系アトモスフェリック/ポストブラックメタル、2007年2nd。
Daymare Recordsからの国内盤。ボーナスディスクとして2005年のデモが丸々ついてくるというお買い得仕様。
一昨年日本で巻き起こった(よね?)USブラックブームの主役はXasthurとこのバンドだったんじゃないかと記憶しています。
また海外ではブラックメタルシーンにとどまらず、アンダーグラウンドなへヴィロックシーンで幅広く支持されているようで、かのSunn O)))やJesuのツアーの前座なんかも務めたらしく、結成4年目と若いバンドながらその注目度は昨今のブラックシーンでもトップクラス。
北欧的な寒々しさを伴った荒々しいプリミティブブラックに、幻想的・神秘的なアンビエント/シューゲイザー的エッセンスを溶け込ませた、美しくも衝動的な暴虐アトモスフェリックブラックメタル。
耳障りに掻き鳴らされるブラック的リフ/儚げなトレモロ、破壊的に打ち鳴らされるシンバル類および地響きが如く轟く怒涛のドラム、全てに噛みつき切り裂かんとするNathan Weaverの凄絶な絶叫、そしてそれらを覆いつくすように響き渡る神々しいばかりのKeyが見事なまでの調和を見せ、そこに提示されている美しく壮大なサウンドスケープに得も言われぬ恍惚感を覚える。
陰湿さや邪悪さは微塵もなく、ときにアコースティックパートも交えつつ、悲壮感と郷愁の念に満ちた悲しく透き通るようなメロディがノイジーな音像で繰り出される様は、ホントもうたまんない。
6分、12分、10分、18分の全4曲46分超と長尺の曲が続くが、一つ一つのフレーズが鮮烈で、かつ展開もドラマチック・ダイナミックなため冗長さはまったく感じさせない。
なんでもかんでもやれDarkthroneだやれBurzumだと言うのはあまりにもあまりだと思うが、それでもこのバンドは根本に確かにBurzumが存在する様に感じる。#2後半のリフなどは顕著だと思う。
また#4などはOctober FallsやSacrificia Mortuorum2ndを彷彿とさせるヒーゼンな趣があり、聴いていて胸が締め付けられるような切ないメロディが炸裂している。
ヴォーカルはそれはそれは凄まじい絶叫。常人なら数秒と持たないであろう狂気に軋み、おぞましくささくれ立った絶叫を張り上げまくっている。
#3、#4では妖艶な女性ヴォーカルも顔を見せ、神秘的な雰囲気をより一層顕著にしている。
またボーナスである[2005 Demo]でも本編同様のスタイルのアトモスフェリックブラックがプレイされている。
デモということであり、アルバムと比べると多少籠りがちの音質で、メロディの殺傷力や完成度という点においてアルバムには及ばないが、しかしながらすでにWolves in the Throne Roomとしての個性が確立されつつある。
#3のようにもう少し印象的なリフが聴かれると良かったと思うが、デビューデモとしては素晴らしい出来。
というわけで、悪魔崇拝とは決別し、ブラックメタルの新天地を開拓しつつあるポストブラックメタルの超新星。
大自然を思わせる幻想的・神秘的で凍てついた空気感が実に素晴らしく、こう言ってはなんだが、鬱かブルータルかといったイメージのアメリカ出身とはとても思えない。
文明社会を批判し、完全なる自給自足を目指してワシントン州の農場で生活しているというインナーサークルもびっくりの気合の入り様(でもエレキギターは使う(笑))といい、まちがいなく今後のブラックメタルシーンで重要な存在となるであろう器のでかいバンド。
ブラックメタラー全員必聴クラスの名盤。
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