Nebiros:「Guerreros De Lucifer」


「神を冒涜する背徳的精神なら北欧勢にだって負けないぜ!!」な、Ave MariaならぬAve Luciferを標榜する南米コロンビア産カルト・ブラックメタル、同タイトルの95年1stに94年EP「Sacrilegus」を追加して2005年にリリースされたコンピレーションアルバムの2007年デジパック再発盤(ややこしい!)。
90年から現在まで活動している大ベテランで、コロンビア最古のブラックメタルバンドの一つだそうです。南米の白塗りブラッカーは誰もかれも北欧の悪魔軍団も真っ青な気合いの入りようで、おそらくメインストリームに出ることはまずないだろうという点で真にUGであるが故、本気の凄味が感じられ好感が持てますね。


南米産らしく、スラッシュ色が強く暑苦しい突進型ベスティアルサウンドかと思いきや、ジリジリザラザラした粒の荒いスカスカ・ディストーション・ギターで切れ味鈍く攻める、ほんのりシケシケの哀愁漂う非常にシンプルかつ渋いオールドスクール/プリミティブ・ブラックメタル。音作りがかなり生っぽく、やる気の感じられないベースもちゃんと聞こえるがとにかく質素で薄っぺら、ドラムはわりとタイト。
ミドル〜スローテンポのダラダラした曲を中心にたまに鈍速疾走するスタイルで、ドッタンドッタンした牛歩ドラムといいダサめのリフといいヴォーカルの汚い濁声・歌メロといい、NSブラックの雄Absurdにそっくり。Absurdからパンクっぽい青臭さを取り払い、冗長にした挙句垢抜けなさを増したような雰囲気だ。
スローダウンしたスラッシュメタルのような味気ないリフを淡々と垂れ流すようでいて、そこはかとなくメロウさが感じられ、アコギなども交え時に大胆にメロウさを押し出してくるのがポイント。ペラペラの音質による寒さと#4#5#10などの哀愁漂うDarkthroneトレモロは何気にかっこよかったりする。
また怪しげな女声コーラスや気だるいノーマルボイスなども用いられており、原始宗教の呪術っぽい猥雑なオカルト感がいかにも辺境ブラックらしい胡散臭さ。


高音交じりの汚い濁声もいかにも南米産らしい暑苦しさ。さっきも述べたがAbsurd似のガナリ声だ。唾をまき散らしながら汚くガナリ散らすさまは悪魔崇拝団体の野心に燃える下級幹部みたいな邪悪さなんてイメージ。たまにものすごくひ弱そうなノーマルボイスも聞ける。#4などで聴ける泣き交じりのガナリ声はそこそこヒステリック。


EPの方は不安定なギターとベースによるイントロに始まり、若干メロウさとミサンスロピーの際立ったストレートな内容。疾走度も多少上がり、これはかっこいい。しかし曲はいいが演奏ボロボロ。もちろん褒め言葉ですよ?


というわけで、チープなカルト臭漂う小細工一切なしの原始的ブラックメタル
地味と言えばかなり地味だが、ジリジリした薄いギターによるミサンスロピックでうっすらメロウなリフはオールドスクール/プリミティブが好きな人ならわりとハマるんじゃないかと思う。
個人的には、このスタイルならもう少し楽曲をコンパクトにした方がいいんじゃないかとも最初は思ったが、お粗末なNargarothだと自分に言い聞かせればこれはこれで乙なもの(笑)
いわゆる典型的ブラックメタルの持つ攻撃性は皆目存在せず、また単調であるためゴリゴリバキバキのブラックが好きな人には退屈で仕方ない作品だと思うが、チリチリスカスカの音質含めポンコツ好きにはウケるだろう。
Absurdなんかのダサい哀愁漂うプリミティブが好きな人は一度聴いてみる価値はあると思う。


・Nebiros @ Myspace