Fen:「Ancient Sorrow」


イギリスのAtomospheric/Experimental・ブラックメタル/ポストロック。2007年3曲入りEP。
エクスペリメンタルとかポストロックが気になる今日この頃、試しに買ってみた一枚。もう新人も新人、試しに買うにしてはマニアック過ぎるだろとw


さてその中身はというと、Agallochのようにミドルテンポ主体でゆったりした自然系美メロを響かすアコースティックなブラックメタル。ギターのフレーズやリズムパートなどAgallochよりモダンでプログレッシブな印象だけど、彼ら同様非っ常に叙情的。
また微妙にAlcest的な柔らかい癒しメロなんかも聴け、Alcestを春、Agallochを冬としたら、これは秋〜初冬って感じ。


キレイなんだけど翳りのある木目メロディと激情を吐露する慟哭のデスボイスが躍動感のあるドラムに乗っかり、寂しさ、儚さと共に力強さも感じさせる。基本は一つのフレーズを延々繰り返すたゆたうような曲調で、総じてインストアルバムのような印象。淡々としつつも決して無機質ではなく、厳しい冬に備え彩色を失いつつある森の情景、そしてそのうちに秘められた確かな生命力なんかを想起させる、視覚効果・イメージ喚起力の強い内容だ。聴いているうちに内側から冷えてくる。典型的なブラックの寒々しさとは違った、冬の朝の空気のような凛とした寒さ。
というか、#3に限っては比較的ブラックメタルっぽいけど、全体としてはブラックメタルっぽさは希薄。


また、新人とは思えないほど音作りがしっかりしており、曲のイメージを損なわないダイナミックな聴き応え。
そしてメロの良さもさることながらドラムがやり手で、このへんにエクスペリメンタルロックの影響らしきものが色濃く感じられる。この世界観を作る上で非常にいい仕事をしているといえる。


うん、なかなか味なことをしている森林ブラックメタル
EPなので3曲28分と全体としては抑えめのボリュームながら、実にいい具合にトリップできる。#3クライマックスの疾走パートなんか感涙ものだ。個人的にこのままの雰囲気で一時間前後のアルバム出してくれたら言うことないね。かな〜り陶酔してしまうこと必至だ。
Agallochが好きな人なら間違いなく気に入るはず。今後の動向に大注目の新人さんだ。


・Fen @ Myspace:背景が音楽性とピタリ一致。